一躍人気となった「ウォーキングシミュレーションゲーム」である
8 番 出 口
条件を満たさない限り延々とループする「8番出口」に続く道から脱出するのが唯一の目的のホラー?ゲームです。
本作は非常にシンプルな構成をしており、主人公の素性はおろか、なぜ無限ループに閉じ込められたのか、なぜ8番出口にたどり着けないのか、などの根本的な謎については一切触れられていません。
ゲームのスタート時点でも一切の説明はなく、無事に脱出し明転したあとにモノローグがあるわけでもありません。
今回の記事では、この謎に包まれた「8番出口」の世界について考察=妄想していこうと思います。
はじめに
本作の作者である「KOTAKE CREATE」氏曰く、The BackRoomsやリミナルスペースの概念にインスパイアを受けていることが明言されています。
The BackRoomsに関しては現在では様々なヘッドカノンが展開されています。
今では興味が薄れて私は動きを追ってはいませんが、日本で流行り始めた当初、日本語Wikiすらなかった時代には私もハマっていました。
SCP財団をはじめとしたこの手のシェアワールドの特徴として、いわゆる「公式設定」という概念は存在しません。
読者の各々が自分が信じる設定(ヘッドカノン)を採用し、自分の妄想に基づいて物語を考えることができるのです。
(もちろんコミュニティの中では「ヘッドカノンだから」という理由で何でもかんでも正当化できるわけではありませんが…)
とはいえ発想や妄想は自由であり、それらをコミュニティ外でも独自の形にできるのは素敵なことだと思います。
つまり、The BackRoomsにインスパイアを受けた「8番出口」というゲームが存在してもいいですし、それを考察するのも自由というわけです。
SCP財団やThe BackRoomsに代表されるシェアワールドという概念は素晴らしいですよね。
考察(妄想)
実はこのゲームを初めて知った時に思ったのが、伝説的なゲームである「P.T.」に似ているなという感想です。
詳しくは以前書いた下記の記事をご参照いただきたいのですが、
「8番出口」と同様に限定的な空間のループに巻き込まれ、そこからの脱出のために異変を発見していくという内容のゲームになります。
つまり、似たような考察をしてしまうことになることをご了承ください。
考察:ゲームのデバッグ作業
本作は言うまでもなくゲーム作品ですが、そういう意味ではなく、作品のテーマ自体が「ゲームのデバッグ作業」を表現しているのでは?ということです。
このゲームの始まりは前触れなく地下鉄の8番出口に続く道を進むことから始まり、終わりは8番出口の階段を通って地上に出ることです。
.そして異変を見つけるまでは延々と同じ場所をループし続けます。
つまり、条件を満たさない限りは前に進めないということになります。
そして異変を見つけると「引き返す」ことが求められます。
正しく引き返すことで、引き返した道が出口につながるようになります。
壁看板の数字が増えていき、8になると出口の階段につながるという演出ですね。
つまり不具合を発見し対処をして完成に近づいていることを表現していると考えられます。
逆に異変に気付かずに進んでしまったり、異変がないのに引き返すというハズレの行動をすると看板の数字は「0」に戻ってしまいます。
作中で演出される「異変」は明らかに異常なものもありますが、中には軽微で注意深く観察しないと気付かないものもあります。
例えば壁中に禁煙のポスターが張られるといった「明らかなバグ」はもちろん、天井の防犯カメラが小さく赤く光る「判明しにくいバグ」をデバッガーたちは根気よく探すのです。
すべてのバグが修正されないと彼らの仕事は終わりません。つまり振出しに戻るような演出で表現されるのです。
そしてすべてのバグを発見した結果、以下の文章が掲載され「8番出口」からの脱出が許されるのです。
主人公が特になんの反応も見せずにループに挑むのも、デバッガーが仕事に取り組むだけだからと言う理由づけ(こじつけ)が可能です。
過去のRPGゲームのデバッグで全ての壁にぶつかっていく際にプレイアブルキャラが何の疑問も抱かないのと同じです。
彼らはバグを見つけるために行動し、バグがあることに何の疑問も抱きません。
まとめ
こんな具合に考察とは名ばかりの妄想をさせていただいたのですが、ここで懸念事項というか引っ掛かることを一つ。
私の考えだとデバッグ作業の終了=バグの根絶によって脱出ができるようになるのですが、このゲームは30種類以上の異変が用意されています。
しかし、最短で8個の異変に気付き引き返す(対処する)ことで脱出が可能です。
では残った異変(バグ)はどうなるのでしょうか。
多分そのままゲームはリリースされるのでしょうね。
かつてゲームボーイなどの世代のころは、発売後のバグ修正はほぼ不可能でした。
そのためバグの根絶というのはゲームの売り上げに大きく響く重要な要素でした。
しかし今ではオンライン環境の充実によってリリース後のバグ修正が可能になり、中にはそれを前提としたバグのひどい状態で発売されるゲームもあります。
いうなればプレイヤー(客)を無料のデバッガーとして考えているということです。
このゲームの仕様(すべてを発見せずともクリア可能)も、もしかしたら完璧を求めずに作られていることを表現していたら面白いなー、とか思ったりして。
しかしデバッガーたちの仕事に終わりはありません。
「8番出口」の世界のデバッグ作業が終わっても彼らの仕事は次から次に押し寄せてきます。
それを脱出した後の極端な明転で表しているのかもしれません。
なーんて、これも単なる妄想なんですけどね。
妄想ができるゲームは総じて面白い傑作ということです。
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