マジンガーZやデビルマンなどの傑作を次々に執筆された漫画家
「永井豪」
彼の名を冠した、一見ギャグとパロディに満ち溢れたOVA作品があります。
それが本記事で取り上げる
CBキャラ 永井豪ワールド
です。
可愛らしい二頭身のキャラクターが織りなす、笑いありシリアスありの傑作OVAです。
ご意見ご感想は Twitter:@tanshilog まで頂けますとうれしいです。
CBキャラ 永井豪ワールドとは?
もともとは、永井豪さんと共に働いていた、故・飯田 馬之介さんが仕事の息抜きに描いた2頭身キャラクターの落書きです。
それを見た永井豪はいたく気に入り、そこから製作がスタートした作品と言われています。
頭でっかちで文字通り二頭身の可愛らしくデフォルメされた不動明や飛鳥了、兜甲児らが、原作の雰囲気をぶち壊す勢いで面白おかしく作品内を動き回ります。
しかし、上述の通り、ストーリーとしては非常にシリアスなものであることを忘れてはいけません。
世界観
本作における登場人物たちは、自身がおかしな世界に紛れ込んでいることを自覚しています。
飛鳥了や兜甲児らは、折に触れてリアル等身の自身に思いを馳せます。なにせカッコいいと思っていますからね。
また、この世界には主要キャラクター以外のモブキャラが出現しません。
さらに、各世界が物理的につながっており、「デビルワールド」や「マジンガーワールド」など移動することで難なく侵入することができます。
つまり、本作においては不動明ら「デビルマン」の登場人物やデーモンが、「マジンガーZ」の登場キャラクターと互いに触れ合うことが可能なのです。
作中終盤に明かされますが、本作が構成している世界は、各作品の著者である永井豪の脳内にあるイメージを表しています。
こんな話はどうだろう、こんな展開なら面白いかな、といった試行錯誤を行うための世界です。
思索を巡らせるための世界のため、主要人物以外は存在せず、世界そのものも必要最低限の広さしかありません。
そして最大の特徴は、作者の永井豪が新しい話を思いつくたびに、世界が新しく生まれることにあります。
作中では、各キャラクターが各々の意思で自由に動いていく過程で、物語の展開は大きく変わっていきます。
実際に、デビルマンやバイオレンスジャックは当初想定していた話とは異なり、執筆の中でキャラクターが自由に動き出し物語が作られていったと永井豪はインタビューで語っていたそうです。
その現象を物語化したものが本作と言えます。
それを示す描写として、本作終盤では、飽きもせず飛鳥了(サタン)と不動明が戦闘になり、了の放った光の刃が明の胴体を両断して死亡させてしまいました。
明を殺すのは2度目だ! と嘆く了ですが、近くにいた神(永井豪)は、その光景を見たことで新しい物語を思いつきます。
赤ん坊の泣き声と共に少しずつ広がって生み出された世界は、バイオレンスジャックの世界でした。
ご存じの方も多いとはおもいますが、バイオレンスジャックはデビルマンの続編です。
もともとは独立した作品だったようですが、永井豪の頭の中でキャラクターが自由に動き回った結果、デビルマンとつながる構成になったのです。
感想
ギャグとパロディ、メタ要素が満載の本作ではありますが、各キャラクターがどのような動きをするのかというのをよく考えて作られていると思います。
例えば、ドクター・ヘルは原作内でも具体的な指針なしに世界征服を企んでおり、本作においては一目ぼれしたシレーヌを攫ったり、振られた腹いせに殺そうとしたりと、短絡的な行動が目立ちます。結果として中盤以降の出番はありません。
例えば、サタンは神に反逆した堕天使ということで、本作においても神(永井豪)の作り出した作中世界に対して反旗を翻しています。そのためサタンの行動が大きなターニングポイントとなっていきます。
デビルマンに始まりバイオレンスジャックに終わるというのも、永井豪の中でデビルマンという作品に大きな思い入れがあることも分かります。
ダブルヒーローの片割れの兜甲児は生還こそしますが、物語においては巻き込まれ型というか若干受動的な立ち位置にあります。
クリエイターの脳内を分かりやすく、かつ面白く物語化されており、世界の成り立ちやキャラクターの人生について理解しやすい構成になっています。
1990年代の古いアニメ作品ではありますが、DVD化もされていますので、ご興味のある方は是非ご視聴されることをお勧めします。
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