本シリーズは「ひぐらしのなく頃に」および「ひぐらしのなく頃に解」の解説です。
その後の続編については取り上げておりませんので悪しからず。
しかし、この無印と解が現在まで続く「ひぐらしのなく頃にシリーズ」の原点であり、ここを理解することが物語と作中世界についての理解につながります。
ひぐらしのなく頃には、大きく分けて「出題編」と「解答編」に分かれています。
鬼隠し編から暇潰し編までが出題編で、雛見沢と部活メンバーを取り巻く異常な状況を各編で割り当てられた主人公の目線で体験します。
目明し編から祭囃し編までが解答編で、出題編で起きた惨劇について別の視点での体験、もしくは明確な種明かしがされます。
それでは、まずはシリーズ第一話を飾る「鬼隠し編」についてネタバレ全開で解説します。
もう一度 昭和58年の雛見沢に飛び込みませんか?
U-NEXTなら31日間無料でアニメ映画が見放題です。
ご意見ご感想は Twitter:@tanshilog まで頂けますとうれしいです。
物語の流れ
ひぐらしワールドの記念すべき第一話が「鬼隠し編」です。
多くの世界で重要人物となる前原圭一を主人公として、彼の「主観」で物語は進行していきます。
物語の始まり
とある理由で東京から人口2,000人程度の寒村「雛見沢」に引っ越してきた「前原圭一」は、一か月も経たないうちに素晴らしい仲間に迎え入れられ、順風満帆な生活を送っていました。
親戚の法事で3日間だけ東京に行っていた彼が雛見沢へ帰ってきた日から物語は始まります。
彼は雛見沢分校の中でも4人の少女と仲良くなります。
- 一学年上で姉御気質な園崎魅音
- 同学年でポヤッとした女の子らしい竜宮レナ
- 年下のミステリアスな雰囲気を持つ古手梨花
- 年下ですが生意気盛りなわんぱく少女の北条沙都子
特にレナは毎朝圭一よりも早く集合場所で待っていたり、圭一の母親と料理の交換をしあったりするほどに前原家と仲良くしています。
疑心暗鬼の種
4人の仲間に囲まれて楽しい日常を送る圭一君ですが、読者から「時報」と揶揄されるフリーのカメラマン「富竹ジロウ」との出会いから、日常の中に一筋の亀裂が入ってしまいます。
富竹からもたらされたのは、5年前に雛見沢で発生した「バラバラ殺人」の情報でした。
作中の5年前に、雛見沢がダムに沈むという国の計画があり、その現場監督が複数の作業者と口論の末に殺害されたのです。
犯人たちは遺体を切断しそれぞれが逃走したのですが、右手を担当した犯人以外は逮捕されています。
圭一が部活メンバーである園崎魅音と竜宮レナにその話を聞くと、「そんな事件はなかった」と口をそろえて回答します。
しかし、のちに圭一は不法投棄現場に捨てられていた週刊誌から実際に殺人事件があったことを知り、なぜ彼女たちがウソを言ったのかという猜疑心に囚われていきます。
圭一は殺人事件があったことを隠す魅音とレナに些細な疑いの目を向けるようになりました。
しかし、そんなことは忘れたかのように楽しい日常は続いていき、「綿流しのお祭り」の日がやってきました。
圭一たち部活メンバーは露店で勝負を繰り広げ、居合わせた富竹も巻き込んで大騒ぎの楽しい時間を過ごすのです。
最終的には富竹がゲームに負けてしまい、罰ゲームとしてシャツに落書きという名の寄せ書きをしてお開きになりました。
惨劇の始まり
しかし、その夜に時報の本領を発揮した富竹と診療所看護婦である鷹野が死亡。
富竹は雛見沢内の道で自分の爪で首を搔き破って死亡、鷹野は遠方の山中で焼死体として発見されます。
特に富竹の異常な死は薬物の使用が疑われましたが、体内からは何も検出されませんでした。
この事件がきっかけで「オヤシロ様の使い」と揶揄される警察官の大石蔵人が圭一に接触を図ります。
大石はダム現場のバラバラ殺人以降に毎年発生している「雛見沢連続怪死事件」通称「オヤシロ様の祟り」の解決を目指すアウトローなオジサン刑事です。
連続怪死事件と呼称されてはいますが、実際には毎年綿流しのお祭りの日に一人が死に、一人が行方不明になるという怪事件のことを言います。
大石は連続怪死事件を村ぐるみの犯行であると疑っており、村に引っ越してきたばかりの圭一に協力要請しようとしたのです。
早い話が情報源として利用しようとしているのですが。
心労が祟ってか風邪のような症状で体調を崩した圭一は学校を休み診療所へ向かいます。
風邪薬を処方され帰路につく圭一の前に、再び大石が現れました。
彼を誘い隣町のファミレスで食事がてら情報交換を行います。
彼は圭一が村人を疑うように仕向けるためか、村の暗部、レナの引っ越し前の奇行、部活メンバーの大半が怪死事件に何かしらの関わりがあることを教えます。
それに対して仲間を信じたい圭一は「偶然に決まってる」と怒鳴ってしまいます。
崩れる日常
その夜、圭一の欠席を心配した魅音とレナがお見舞いに訪れ、手作りのおはぎを差し入れてくれました。
部活を欠席した圭一に宿題だと、どのおはぎがレナの手作りか当てるよう魅音は言い放ちます。
それに対して圭一も、「お見舞いか部活かどっちかにしろ!」といつもの調子で返します。
どう見ても自分を心配しているだけであり、特に何をするでもなくおはぎを渡して帰ろうとする二人に安堵した圭一ですが、その安心はすぐに打ち砕かれることになります。
魅音とレナは、圭一が昼食をどうしたのかと問いかけてきたのです。
「外で食べたよ」としどろもどろに答える圭一に、「渋いオジサンと一緒でずいぶん熱くなっていたいようだけど何の話をしていたの」と続けます。
まるですべてを見ていたかのような姿でした。
そして最後に「明日、学校休んじゃ、い や だ よ」
と圭一に言って去っていくのでした。
身の危険
家に戻った圭一がおはぎを一口食べた瞬間、口内に違和感がありました。
チクッとした刺激となんだか細長い金属のような異物感。
口から吐き出すと、おはぎの中に裁縫針が仕込まれていました。
そこでパニックになった圭一はおはぎを壁に叩きつけます。
明らかに自分に対する脅迫のような言動を続ける魅音とレナを完全に怪しみ、怪死事件は村人が犯人であり、自分も狙われていると思うようになりました。
翌日から不審なワゴン車に轢かれそうになったり、魅音とレナの様子も明らかにおかしくなっていきます。
完全に周囲を敵とみなした圭一はひとりで行動するようになり、護身用にバッドを持ち歩くようになります。
ちなみにこのバッドは学校のロッカーに入っていた持ち主不明の物を勝手に借用していたのですが、実は昨年のオヤシロ様の祟りで失踪した少年の物でした。
さらに、自分の身に何かあった時に備えて、得られた情報や体験を紙に書き残し、壁掛け時計の裏に隠します。
以降圭一は過激な言動と態度で仲間たちから距離を置きます。あんなに楽しかった部活に参加しないほどに圭一は追い詰められているのです。
その日、帰宅した圭一に母親から一本の電話がかかってきます。
父親の仕事の都合で両親はそろって東京へ行っており、翌日の夜まで帰れないとのことでした。
村ぐるみで命を狙われている状況で、頼りになる家族がいません。
急いで戸締りをして自室に閉じこもる圭一ですが、また電話がかかってきます。
相手は大石でした。
ちなみに携帯電話が普及していない時代(昭和58年)ですが、圭一の自室には電話機があります。お金持ちの坊ちゃんですね。
圭一は大石に、自分が狙われていると思われること、その根拠として、おはぎに針が入っていたこと、不審な車に狙われていること、明らかに魅音やレナの様子がおかしいことを伝えます。
そんな話をしている中で、来客を告げるチャイムが鳴りました。
電話を保留にし、扉のチェーンを外さずに出てみるとレナがお重を持って玄関前に立っていました。
「今日お母さんいないんでしょ?料理を持ってきたから台所を貸して?」
両親が不在なことを圭一は誰にも伝えていません。
1人でいることを悟られたくない圭一は、咄嗟に母親が今まさに夕食を作っているところだからと、レナの申入れを辞退しようとします。
それに対して、「なんで嘘をつくのかな」「う、嘘なんか」「嘘だよ!!」
と有名なやり取りをすることになります。
さらに、圭一が夕飯にしようとしていたカップラーメンの銘柄も当ててきました。
何故知っているのかという圭一のパニックをよそに、レナは不可解な行動を続けます。
扉の隙間に手を差し入れ
「ねえ、開けて、開けて、開けて、開けて」
と扉を守っているチェーンをガシャガシャと引っ張ります。
それに恐怖した圭一は、レナの指ごと扉を力任せに閉めようとします。
痛い痛い、ごめんなさい、悪ふざけが過ぎたなら謝るよ、本当に痛いの、ごめんなさい
とレナの声がしますが、パニックになった圭一は「帰れ帰れ帰れ」とつぶやきながら必死に扉を閉めようとします。
レナは何とか指を引き抜き、圭一は扉を閉めることができました。
カギを締めると急いで大石との電話に戻ります。
圭一はレナが茨城で起こした事件の詳細を大石に尋ねます。
曰く学校中の窓ガラスを割った挙句に、仲良くしていた男子生徒数名をバットで殴打したというのです。
1人は片目に後遺症を残しましたが何故か被害届を出していないため、警察の介入はありませんでした。
その後神経内科に通院することになるのですが、そのカルテに「オヤシロ様」という単語が出てくることも伝えます。
電話の途中で大雨が降ってきたので自室の窓を閉めようとした際に圭一は気付いてしまいました。
大雨の中、傘もささずに家の前に立ち尽くし「ごめんなさい」とつぶやき続けているレナの姿に。
決別
翌日も一人で登校しバットを持ち歩く口実として素振りをしていると魅音とレナが登校してきます。
レナの指は絆創膏だらけで、圭一と目を合わせることも無く校内に入っていきます。
魅音は圭一に、素振りをやめるようお願いをしてきました。
曰く、昨年失踪した少年(沙都子の兄の悟史)も、失踪する直前に似たような行動を取っていたので、周りの子たちもおびえているとのこと。
それに対して圭一は「俺は悟史のことを何も知らない。みんな隠してたからな」と言い捨てます。
隠してたわけじゃないと狼狽える魅音に対して、連続怪死事件のことを隠していたことを突きつけます。
「仲間ってのは隠し事なんて無しだろ!そうだろ!?だったらお前らは仲間じゃない!!」
ショックを受ける魅音に対して、おはぎの件も問うと自分がやったとあっさり認めます。
単なるイタズラを告白するような魅音に対してさらに怒った圭一は、
最初のバラバラ殺人が起こる直前に被害者の現場監督と魅音が取っ組み合いのけんかをしていたことも知っていると告げます。
あまりのショックに泣き出してしまう魅音ですが、直後に大石が情報の出所だと察すると「あの時殺しておけばよかった」と鬼の形相でつぶやきます。
襲撃
放課後、一人で帰路につく圭一の背後をレナが追ってきました。
何故か大振りの鉈を持って。
明らかに異常な表情で「助けてあげる」「オヤシロ様はいる」などの訳の分からないことを圭一につぶやきます。
恐怖からレナを突き飛ばした圭一はその場を逃げ出し雑木林を走ります。
すると、彼の行く手をふさぐように男が二人立ちはだかるのでした。
明らかに圭一を狙って襲い掛かってくる二人に圭一は果敢にバットで応戦しますが、腹を殴られ首を絞められます。
そして意識を失うのでした。
終焉
気付くと自室の見慣れた天井が見えてきました。
どうやら布団に寝かされているようです。
男たちに襲われたことを思い出し飛び起きると、傍らにはレナがいました。
どうやら雑木林で圭一が倒れていることを見つけたレナが圭一に肩を貸して自宅まで運んでくれたようです。
医者を呼んだので横になったほうがいいと言います。
そのすぐ後に、魅音もお見舞いに駆け付けます。
そしてレナに「監督はよんだ?」と不可解なことを言い出しました。
監督ってなんだよ、と圭一が尋ねると、「監督は監督だよ」とはぐらかされます。
連続怪死事件に関係のある魅音とレナがいう「監督」とはバラバラ殺人の被害者である現場監督しかいません。
そして監督が来る前に済ませるかと魅音がつぶやくと、レナが圭一を羽交い絞めにします。
身動きの取れない圭一の前で魅音が取り出したのは 注射器 でした。
「富竹さんと同じ目に遭ってもらう」
そう呟き圭一に迫る魅音。どれだけ暴れてもレナの拘束は外せません。
ふと我に返った圭一。
部屋の中は静まり返っており、外からヒグラシの鳴き声が聞こえてきます。
何だ幻覚だったのか、でもなぜこんなに胸が苦しい?
自問自答する圭一が周りに目をやると、血だらけで転がっている魅音とレナの姿がありました。
部屋は血だらけで圭一の手には血だらけのバットが握られています。
そんな状況で、来客を告げるチャイムが鳴りました。
窓から外を伺うと、白衣を着た人物が玄関先に立っていました。
おそらくレナが呼んだという医者でしょう。
しかし、家の周囲には複数の作業着姿の男たちが展開しており、さらに圭一を轢こうとしたワゴン車も止まっています。
明らかに自分を害そうとしていると判断した圭一は家から抜け出すことを決めます。
時計裏のメモに情報を追加します。
- 魅音とレナが犯人の一味
- 犯人は男が4-5名、白いワゴン車を所有
- 富竹死亡の原因は未知の薬物で、証拠の注射器を添付
家を抜け出した際に包囲していた男たちに見つかってしまいますが、全力疾走で逃げ切ります。
そして逃げた先で公衆電話を見つけた圭一は大石に電話をかけました。
犯人は人間じゃない、オヤシロ様はいるのだと思う。
今も後ろにいる。どんなに走ってもずっとついてくる。
そう言う圭一は喉を掻きむしっていました。
血の混じる咳とうめき声を残し、電話は切れるのでした。
その後警察が圭一の死体を発見、死因は喉を引き裂いたことによる失血死。
圭一の自宅では魅音とレナの撲殺死体が発見され、圭一による犯行と断定されます。
現場現象の結果、時計裏のメモを警察が発見しましたが、数行が破り取られ、また張り付けられていた注射器もなくなっていました。
そして鬼隠し編は幕を閉じるのです。
ネタバレ解説
もう一度 昭和58年の雛見沢に飛び込みませんか?
U-NEXTなら31日間無料でアニメ映画が見放題です。
この世界の圭一
鬼隠し編が惨劇へと進んでいく根本的なターニングポイントは、実は圭一が東京へ行っていたという要素なのです。
雛見沢では寄生虫由来の風土病である「雛見沢症候群」という病気が存在しています。
雛見沢に一定期間滞在した人物のほぼ全てが空気感染により潜在患者となっていますが、特定の条件でしか発症しないため基本的には無害な病気とされています。
発症のきっかけは大きく分けて以下の三つとなります。
- 雛見沢を離れること。
- 強いストレスを受けること。
- 発症誘発剤を投与されること。
発症した際の症状は身体的なものと精神的なものがあります。
- 肉体的には初期は風邪のような倦怠感、末期は喉を中心としたリンパ節の異常な痒み。
- 精神的には強い疑心暗鬼と被害妄想、幻覚幻聴の発生。
鬼隠し編の圭一は、3日間という極めて短い期間を東京で過ごしたために発症しました。
基本的にこの程度の期間で発症することは稀であり、非常に運が悪かったと言わざるを得ません。
さらに、発症後に雛見沢連続怪死事件を知り、さらに仲間たちがそれを隠したがために強い疑心暗鬼と被害妄想につながることになります。
鬼隠し編は圭一の主観で展開されるために、疑心暗鬼と被害妄想、それに伴う幻覚や幻聴により正しい現実を描写してはいないのです。
いわゆる「信頼できない語り手」というやつです。
何故レナ達は雛見沢連続怪死事件を隠したのか
富竹から話を聞いた圭一は、魅音とレナに事件の有無を尋ねますが、何もなかったと回答が返ってきます。
これは、文字通り彼女たちの「思いやり」がさせた結果です。
引っ越してきたばかりの圭一に嫌な印象を与えたくないがために出た優しいウソと言えます。
通常の圭一であれば、その思いを察することができますし、他の世界では彼女たちが隠していたことを気にせず許す描写もあります。
しかし、発症初期段階にあった圭一は悪い方へと想像を膨らませてしまったのです。
富竹の死
彼はフリーのカメラマンであると自称していますが、実際はとある政府機関の構成員です。
所属は陸上自衛隊ですが、雛見沢症候群の研究を行っている「入江機関」の監査を任務としています。
彼の死は、鬼隠し編の惨劇とは一切関係のない思惑により引き起こされており、雛見沢症候群の発症を誘発される薬を投与されています。
祭囃し編以外のすべての世界で彼は殺害されており、それをきっかけに大石が主人公たちに接触するため、彼の死は事態が悪い方向へ進んでいくきっかけとなっています。
そのため「時報」と読者視聴者(さらには公式)から親しみを込めて呼ばれています。
犯人は鷹野と配下の特殊部隊「山狗」ですが、鬼隠し編においては関係ないので割愛します。
山狗については以下の記事をご覧ください。
大石という人物
雛見沢を管轄範囲に収める興宮署の刑事です。
連続怪死事件の最初の犠牲者であるダム建設の現場監督とは友人であり、彼の右手と共に行方不明となっている犯人の逮捕と、連続怪死事件の解決を最大の目標に据えて捜査をしています。
作中の翌年に定年を迎える焦りから、かなり強硬な捜査を行う刑事です。
鬼隠し編では圭一を情報源として利用しようとしますが、おおむね味方でした。
半面、祟殺し編では圭一を北条鉄平殺害の容疑者と睨み暴力も駆使した尋問を行うなど敵対することもあります。
しかし、基本的には市民の安全を守ることに全力を尽くす人物であり、業務外での彼は面倒見のいいナイスミドルと言えます。
しかし、「オヤシロ様の使い」と村民に噂されるように、彼に関わられた人物は不幸に見舞われることが多いそうです。
実際、鬼隠し編の圭一の疑心暗鬼と被害妄想を加速する役割を担い、他の世界でも多くのキャラクターに悪い影響を与えます。
連続怪死事件は村ぐるみ、ひいては村を牛耳る園崎家の犯行だと決めつけた固定観念により、事態をややこしくしてしまう人物です。
なぜ興宮で圭一と大石が一緒だったのを魅音が知っているのか。
実は彼らが訪れたファミレス「エンジェルモート」は魅音の叔父が経営しているのです。
さらに魅音も臨時のバイトとして働くこともあり、従業員とは面識がありました。
従業員の中に圭一と魅音の交友を知っている人もいるでしょう。
さらにウエイトレスの衣装が過激な人気店であることから、雛見沢の人が来店していてもおかしくありません。
そのうえ、圭一は仲間たちが連続怪死事件に関わっているなどの話を聞かされヒートアップしてしまい、店内の注目を集めています。
尚更まわりの人たちの印象に残ったことでしょう。
大石も粘着質な捜査手法から多くの人々に知られていました。
「魅音ちゃんの友達の男の子が大石さんと一緒に店に来てたよ」という話が魅音の耳に入っても何もおかしくないのです。
おはぎに裁縫針が入っていた?
ご存じの通り魅音は自分の好意をちゃかして表現する照れ屋な性格をしています。
おはぎは心の底からのお見舞いの気持ちが込められていましたが、そのままシンプルに渡すのは照れ臭い。
そうだ、ゲームということにしてしまおう。
というわけでおはぎの一つに「タバスコ」が入れられたのです。
運悪く雛見沢症候群を発症していた圭一が一つ目に食べたのが、そのタバスコ入りでした。
何故針が入っていると思い込んだのか、それは解答編の一つ、罪滅し編で明かされます。
圭一は以前、食べ物に針や剃刀の刃をいれるというホラー作品を見たことがあったようです。
舌からタバスコが与える刺激(辛み≒痛み)を受け取った脳は、それを痛みだと誤認します。
そして、極度の疑心暗鬼と被害妄想に憑りつかれていた圭一は、存在しないはずの針を見てしまったのです。
つまり、完全な思い込みによる幻覚というわけですね。
レナが圭一の両親が不在なのを知っていたのは何故か?
作中で、圭一の母親とレナの親交が多かったことを示すシーンが多く描かれています。
例えば、作中冒頭の前原家の朝食シーンではレナに貰った漬物が献立に含まれています。
つまり、圭一の母は食事に無頓着な息子を案じて、圭一と仲良しの友達であるレナに食事の面倒を見てくれないかとお願いしていたのです。
カップラーメンの銘柄を当てたのもなんて事はありません。圭一が母親に買ってもらっていたのをレナがスーパーで見かけていたからというだけのことです。
レナの家は父子家庭であり、食事の準備はレナが行っているのでスーパーで出くわすのも全く不自然ではありません。
しかし、疑心暗鬼に陥っている圭一にはそんな当たり前のことが理解できなくなっていました。
「ごめんなさい」とつぶやき続けていたのはレナか?
雛見沢症候群を発症した患者には上記の症状のほかに非科学的な症状が発生します。
オヤシロ様である「羽入」の存在を不完全ながら知覚できるようになるのです。
羽入は神様と同類の存在であり、普通の人間には存在を認識することができません。
しかし、発症者はある程度羽入の存在を知覚することができるようになります。
足音が多く聞こえたり、誰かの気配を感じたりするのは、発症してしまった人物に対して羽入が付きまとい謝り続けているためです。
そして、圭一は家の外に佇んでいた羽入の姿をレナだと誤認したと考えられます。
ただ、レナの病的ともいえる献身性からレナであったとしても違和感がないのですが…。
圭一と悟史の行動が似ている?
二人の行動は極めてよく似ていました。
何故なら悟史も雛見沢症候群を高いレベルで発症していたからです。
彼の場合は、叔父叔母夫婦に虐待され、さらに沙都子が叔父叔母に反抗するために余計に火に油を注いでいました。
その間に入って沙都子を守っていた悟史ですが、ついに叔母をバットで殺害してしまいます。
それがきっかけになり末期症状を発症。
圭一と同じ末路をたどるところでしたが、山狗に確保され入江機関で治療を受けることになったのです。
圭一を襲ったのは誰か
この正体については2パターン考えられます。
ほとんど末期まで症状が進行していた圭一が見た幻覚という説。
明らかにおかしいレナから逃げだした圭一はきっとこう考えたでしょう。
「逃げなきゃ、でももし他にも敵がいたら?」
そう考えてしまったら圭一には「存在しない他の敵」が見えてもおかしくない精神状態にありました。
ただ、二人に遭遇した際に、圭一は最初ほっとしていたため、こちらの説は違うのでしょう。
山狗の隊員に襲撃されたという説
原作では私服の成人男性2名ですが、アニメ版では作業着の男性にビジュアルが変更されています。
ここで登場した襲撃者の正体は山狗の隊員です。
古手梨花にとって、圭一が発症するというのは珍しくない状況です。
さらに入江機関、山狗とも密に接している彼女が、圭一の発症が疑われることを入江や鷹野に伝えても不思議はありません。
山狗の任務の一つは発症者の確保と隠滅です。
陸上自衛隊の特殊部隊である彼らは、バットで武装した圭一程度なら軽くいなせるだけの訓練を積んでいます。
実際、圭一を難なく制圧しますが、その直後にレナが圭一を追ってやってきました。
一般人に見られることを嫌った隊員はやむなく圭一を放置して去っていったのです。
監督とは?
終盤に魅音とレナが話に出した「監督」という言葉。
倒れた圭一を介抱した後に呼んだとされる人物です。
圭一がこの状況で思い浮かべる監督とは、バラバラ殺人の被害者である「現場監督」ですが、彼女たちは全く別の人物のことを言っていました。
それはズバリ、圭一も受診した入江診療所の医師である「入江京介」のことです。
入江は雛見沢の少年野球チーム「雛見沢ファイターズ」の監督を努めており、子どもたちからは親しみを込めて「監督」と呼ばれているのです。
単なる渾名なのですが、それを知らない圭一の勘違いを加速させるだけの要素となっているだけなのでした。
「富竹さんと同じ目に遭ってもらう」の意味
レナに羽交締めにされた圭一に対して、魅音はこう呟き「注射器」を取り出すのですが、この時の圭一は前述の通り正しく周囲を認識できていません。
魅音とレナは何も変わっておらず、おかしくなっていたのは圭一だけなのです。
魅音、レナ、圭一が共通で知っている「富竹が遭った目」とは何か。
綿流しの祭りで富竹が受けたシャツに寄せ書きをされる罰ゲームです。
圭一は魅音とレナが事件に絡んでいて富竹がどう死んだのかを知っているものとばかり思っていました。
そのため、圭一自身も喉を掻きむしって死んでしまう薬を投与されると思い込んでしまいました。
しかし、富竹が喉を掻きむしり死んだことは、警察が秘匿捜査をしていたために魅音とレナが知っているはずがないのです。
(魅音は独自のルートから知っていたかもですが…)
この時の正しい風景は罪滅し編で描写されます。
監督、つまり医者が来たら圭一のシャツを捲って聴診器を当てることを見越して、富竹にやったようにシャツに落書きをしてしまおうとしていたのです。
圭一には注射器に見えていましたが、実際にはサインペンを取り出していたのです。
キャップを取り外す動作が注射器の針を出す動作に見えていました。
魅音が何を書こうとしていたのか、圭一にはしっかり聴こえていました。脳がそれを無視してしまったのです。
それは「早く元気になあれ☆」でした。
白衣の人物と作業着の男たち
ここまで読んでくださった方に言うまでもありませんが、
白衣の人物は入江で、作業着の男たちは山狗です。
入江は診療所の医師でもありますが、雛見沢症候群の研究をする入江機関の所長でもあります。
高いレベルでの発症が疑われる圭一宅への訪問に山狗を同行させるのは当然です。
診療所を受診した後からワゴン車に付け狙われ、ひき逃げ未遂まで経験した圭一ですが、おそらく受診んの際には発症が疑われており、山狗の監視下にあったものと思われます。
ひき逃げ未遂については圭一の思い込みです。
狭い道で圭一を追い越していったのですから、多少近くを走ることになるのは当然です。
その後、停車したワゴン車に乗っていた男が舌打ちをしたと圭一は思っていますが、ぶつかりそうにもないのに派手に飛びのいて避けた圭一を驚いてみていただけでしょう。
あるいは発症が疑われる挙動をしていることに対して「やっかいなことになった」と思ったのかもしれません。
何にしろ、山狗が圭一を確保することはあっても車で轢く理由がありません。
彼らは目立つことを嫌い、確保するにしても白昼堂々行うことはありませんから。
注射器の行方
警察が圭一の家を捜索した際に、時計裏に隠してあったメモを発見しています。
しかし、メモは完全な状態ではなく、注射器について記載されていた部分は破り取られており、添付していた注射器(本当はサインペン)は持ち去られていました。
これは圭一が逃走した際に、証拠隠滅のために山狗が圭一宅を物色したためでしょう。
基本的には圭一の思い込みによる犯行であり、魅音とレナの殺害について情報操作をする必要はありません。
しかし、メモに書かれた薬物の記載と張り付けられたサインペンは入江機関の活動に支障をきたす恐れがあります。
そのため、山狗が持ち去ったと考えるのが妥当です。
山狗は母体こそ陸上自衛隊ではありますが、様々な分野のスペシャリストが集まって構成されています。
警察が発見できる証拠は山狗も発見可能でしょう。
まとめ
真相を知ってしまえばなんてこともないのですが、圭一の主観で構成された物語というのが読者に対してミスリードを誘っています。
圭一は周りがおかしくなったと思い込んでいましたが、実際には圭一だけがおかしくなっていたのです。
さらに、疑心暗鬼に囚われた圭一が起こした惨劇とは別に、入江機関や雛見沢症候群を巡る国家規模の陰謀も並行して進行しています。
それらがうまく合わさり、信頼できない語り手によって読者に多くの謎を残して鬼隠し編は終了します。
後の世界でも多くの誤解や勘違いを繰り返しながら、主人公たちは仲間を信じることの大切さを学んでいきます。
その失敗例が鬼隠し編をはじめとしたひぐらしワールドなのです。
もう一度 昭和58年の雛見沢に飛び込みませんか?
U-NEXTなら31日間無料でアニメ映画が見放題です。
ご意見ご感想は Twitter:@tanshilog まで頂けますとうれしいです。
コメント