本シリーズは「ひぐらしのなく頃に」および「ひぐらしのなく頃に解」の解説です。
その後の続編については取り上げておりませんので悪しからず。
「ひぐらしのなく頃に」出題編の二作目
綿流し編
鬼隠し編で示唆された村の暗部がより深く描かれる本編は、対応する解答編である目明し編同様に血なまぐささが大幅にアップしています。
本記事では、綿流し編について、その他の解答編で明かされる情報を交えながらネタバレ解説をしていきます。
恋する少女が、ふとしたきっかけで大量殺人者になってしまう悲しいお話です。
物語の流れ
鬼隠し編同様に「前原圭一」を主人公として進行します。
舞台は鬼隠し編と同じ「昭和58年6月」の雛見沢です。
物語の始まり
圭一たち部活メンバーは日曜日に隣町の興宮にある玩具屋に集まっていました。
この日、玩具屋では客寄せイベントとしてゲーム大会を開催しています。
部長の園崎魅音と玩具屋の店主は親戚関係であり、イベントの手伝いをする代わりに、部活に利用させてもらっているのです。
そのため、部活メンバーのほかにも雛見沢分校の生徒たちも多く参加していました。
この時点の圭一は鬼隠し編同様に転校してきたばかりですので「部活の戦い方」に慣れたメンバーに翻弄され、魅音には落胆までされてしまいます。
しかし圭一は持ち前の頭脳と話術を用いて劣勢を跳ね返します。
いよいよ決戦というタイミングで、魅音の次のバイトの時間になってしまいました。
部活はお流れになり圭一は憤懣緩やかならぬ様子でしたが、そこに店主が参加賞としてメンバーたちに包みを渡します。
ちなみに魅音は親戚だから無しという哀れな待遇でした。
包みの中身は可愛らしい人形で、圭一が受け取ったのは所謂「フランス人形」でした。
圭一にとっては欲しくもなんともない人形だったため、女の子ばかりの部活メンバーにあげてしまおうと考えます。
仮に欲しくないにしても参加賞をくれた店主の目の前で他人に譲渡するのもどうかとは思いますが。
普通に考えれば、唯一何も貰っていない魅音に挙げるべきだと圭一も考えますが、彼はレナにあげてしまいます。
圭一と魅音の関係性は「ほぼ男友達」であり、魅音を女の子扱いするのが照れ臭かったのです。
新しい登場人物
後日取るために、興宮のファミレス「エンジェルモート」に立ち寄った圭一。
その際に注文を取りに来たウェイトレスが、まさかの魅音だったのです。
なかなか露出の激しい過激な衣装に身を包んだ魅音を見た圭一は、普段部活でコテンパンにされ恥ずかしい罰ゲームを食らっている意趣返しをしようと考えます。
そんなからかいに対して、魅音は恥ずかしさから咄嗟に
「双子の妹の詩音です」
と口走るのです。
圭一はそれを苦し紛れの出鱈目だと判断しますが、普段の仕返しは十分できたと思い、それ以上追及するのをやめて「詩音」に対して謝罪しました。
しかし、実際に詩音という魅音の双子の妹は存在しており、髪形や服装を除けば顔も体形も瓜二つという姉妹だったのです。
ちなみにエンジェルモートで遭遇した「詩音」と、後日圭一に弁当の差し入れを行った「詩音」は変装した魅音だったのですが。
後日、詩音と圭一が連れ合って歩いている際に、魅音と鉢合わせをし、詩音が存在することを圭一は初めて知ることになるのです。
綿流しのお祭り
その後いろいろなドタバタがあるのですが、物語のターニングポイントである「綿流しのお祭り」の日がやってきました。
この日、祭り終盤の奉納演武を見ようとする中で圭一だけがはぐれてしまいます。
そこに現れたのが詩音でした。
人ごみに揉まれて演武を見ることができない圭一を引っ張って、藪の中へ進んでいきます。
圭一は演武を見られるスポットに向かっていると思い込んでいましたが、たどり着いたのは古手神社の秘宝が保管されているとされる「祭具殿」でした。
奉納演武を見るために人気のなくなった祭具殿の前に、富竹ジロウと鷹野三四がいました。
恋人同士と噂されている彼らですが、どうやら逢引ではなく祭具殿のカギを解錠しようとしているようなのです。
詩音は圭一を引き連れて二人のもとに行きます。
そして、面白そうだと自分たちも中に入れるよう依頼するのでした。
圭一は明らかな不法行為に狼狽えますが、なし崩し的に一緒に祭具殿に入っていきます。
祭具殿の中には様々な拷問器具が並んでいました。
そのあまりのおぞましさに絶句する圭一と詩音の前で、鷹野は村の暗部を解説し始めます。
古くから雛見沢にはオヤシロ様信仰が根付いており、独自の戒律をもって村人たちは生活をしていました。
しかし中には戒律を破ろうとする人もいました。
オヤシロ様信仰の最も重要な戒律は「村から出ないこと」でした。
この戒律の理由については、以下の記事をご覧ください。
閉鎖的な村での生活に嫌気がさして、村の外に移住しようとする人が一定数いました。
そこで登場するのがこれらの拷問器具です。
違反者を惨たらしく血祭りにあげることで、見せしめとしたのです。
要するに恐怖をもってして村人の信仰心を維持しようとしたわけですね。
そして綿流しのお祭りの由来にも触れられます。
現代においては「一年の穢れを吸ってくれた布団の供養」として「綿」を川に流す行事となっています。
しかし、もともとは「腸流し」とされ、拷問にかけられた犠牲者のハラワタを流すという宗教行事だったというのです。
そして鷹野は続けます。
今でこそこれらの拷問器具の出番はなくなり、戒律も緩くなっています。
しかし、村の中には今でも一部の過激な宗教観を持った人々がおり、村に不都合な人間を秘密裏に始末しているのだと。
それが所謂「オヤシロ様の祟り」と呼ばれる
祭りの日に一人が死に、一人が行方不明になる怪事件の真相だというのです。
さらに畳みかけるように、それをしているのは「御三家」つまり「園崎家」「公由家」「古手家」であるとの推測まで披露します。
戦慄する圭一と詩音ですが、詩音がハッとして聞き耳を立てます。
誰かが近くで騒いでいるような音が聞こえると。
圭一と鷹野には聞こえませんでしたが、祭具殿の外で見張りをしていた富竹も同じような音を聞いたということで、その日はお開きとなりました。
オヤシロ様の祟り
祭りの翌日、富竹の死体が見つかったことと、鷹野が行方不明になったことを知ります。
圭一と詩音は、祭具殿に入ったことが原因ではないかと疑い、つまり自分たちの身も危ないことを悟るのです。
興宮に居住している詩音とは学校で会えないため、電話で定期的な情報交換をしつつ身の回りに気をつけようという話になりました。
しかし、後ほど鷹野の死体が見つかったことを知ると、今年のオヤシロ様の祟りは二人が死んで二人が消えるのではないかと思い至るのです。
つまり圭一と詩音が消されてしまうのではないかと。
以降は村を牛耳る「園崎家の次期頭首」という立場も持つ魅音から奉納演武の時にどこに行っていたのかと問われたりして、圭一の精神はどんどん追い詰められていきます。
もはやのどかな村だった雛見沢は危険な場所になってしまいました。
なにせ圭一は詩音に半ば無理やり連れていかれただけであり、こんなことに巻き込まれるなんて理不尽なことです。
そんなことを詩音に怒鳴ったりして二人の関係も悪化します。
結局、精神的な負荷に耐えられなくなった圭一は、心配してきた梨花にすべてを打ち明けます。
祭りの日に詩音と一緒に祭具殿に入ったこと。
一緒に入った富竹と鷹野が死に、自分と詩音が消されるのではないかという恐怖。
祭具殿に入ったことの後悔と贖罪の気持ち。
これらを打ち明けると、梨花ちゃんは圭一の頭を撫で
「オヤシロ様は怒っていない。圭一も詩音も危険な目に遭わせない」と言い残して去っていきました。
そして、それが圭一が最後に見た梨花の姿なのです。
その晩、詩音と電話でやり取りをしたところ、村長の公由が行方不明になったと知ります。
詩音は祭具殿に入ったことを村長に打ち明けており、そのせいで消えたのだといいました。
それを聞いた圭一は、梨花の安否を確かめるために家に向かいますが、一緒に住んでいた沙都子ともども行方が分からなくなっていました。
警察の介入
公由村長、梨花と沙都子の失踪により、大石を始めとした警察の捜査が始まりました。
関係者の足取りが追われた結果、詩音までもが綿流しのお祭りの日に失踪していることが分かりました。
しかし圭一は祭りの日以降も、ほぼ毎日詩音と電話をしています。
さらに詩音は公由村長に祭具殿に入ったことを打ち明けたと言っていましたが、当日の村長のスケジュール的に不可能であることに気付いてしまいました。
結論、電話で話している詩音の言っていることは出鱈目で、そもそも相手は詩音ではないということが分かります。
その晩、詩音との電話でそのことを突きつけると、詩音は不気味な笑い声を残して電話を切ったのでした。
名探偵レナ
翌日、レナが学校へ行こうと迎えに来ました。
しかしあまりの出来事に体調が優れない圭一は休むと伝えます。
その際の会話の中で祭具殿に入ったことをレナ達が知っていることが分かります。
レナは誰も圭一を叱らなかったからと、皆を代表して叱責します。
入ってはいけない場所に入るのは悪いこと。
そしてもっと悪いのは、悪いことをしたのを認めず隠すこと。
梨花と沙都子が消えたのは圭一が祭具殿に入ったことを隠したせいだと自覚させ、今からでも謝るべきだと思い至らせます。
圭一が心から反省したことを読み取ると、回覧板を渡して一人学校へ向かおうとしました。
圭一がふと見た回覧板の中には、園崎家が醤油のおすそ分けをしている旨のお知らせが挟まっていました。
ここで圭一の動きが止まり、レナに全部わかっていたのかと問います。
実は先日、レナは梨花と沙都子の失踪について独自の推理を圭一に披露していました。
二人の失踪が分かった日、レナと圭一は二人の家に上がって手がかりを探していました。
圭一は何も見つけられなかったのですが、レナはその驚異的な洞察力をもってして冷蔵庫の中身と調味料の在庫を見ただけで殆ど真相までたどり着いたのです。
夕食を沙都子が作っている中で、醤油がなくなったことに気付きます。
梨花は醤油の大瓶を持ってご近所におすそ分けを貰いに向かいます。
そこで梨花は消されました。
さらに、いつまでたっても帰ってこない梨花を心配した沙都子が、ご近所に電話をかけたところ「梨花ちゃんはウチでご飯を食べてるよ。沙都子もおいで」と誘われたのです。
そして沙都子も消されました。
この流れを、二人の家を軽く見ただけでレナは言い当てていたのです。
そして、その時には言わなかったのですが、園崎家が醤油のおすそ分けしていることもレナは知っていました。
つまり、圭一が気付くよりも早く魅音のことを疑っていたのです。
決定的な証拠がないだけでした。
園崎家へ
圭一も同じ考えに至り、魅音に会いに行くとレナに告げます。
祭具殿に入ったことへの謝罪と、三人を消したことに対する自首を促すためです。
レナも一緒に行こうとしたところで、大石が現れました。
大石は知っての通り、連続怪死事件の犯人は園崎家であると睨んでおり、捜査のためにはアウトローな手法も取ります。
園崎家が黒幕であると信じて疑わない彼は捜査令状を請求するのですが、様々な方面から圧力がかかって思うとおりに捜査できずにいました。
そのため、圭一が園崎家に乗り込み「なにかあってから」現行犯という体裁で園崎家へ突入しようと考えていました。
それをレナに言い当てられ卑劣漢と罵られますが、いざという時に迅速に助けられるよう増援を要請しています。
手法は汚いですが、圭一とレナに何もないことが一番であるとは考えているようです。
そして園崎家へ向かう二人。
出迎えた魅音と共に、ほんのひと時だけ、まるで学校で楽しくおしゃべりをしているような弛緩した心地よい時間がありましたが、彼らは楽しくおしゃべりに集まったわけではありません。
レナの推理を突きつけられ、まるで録音したかのように全てあっていると白状する魅音。
雛見沢連続怪死事件に自身が関わっていると伝え、村の成り立ちと園崎家当主としての使命について語ります。
しかし、それでも梨花と沙都子を殺したのだとレナに突きつけられ、自首を促されます。
それに対して逃げるでもなく、最後に30分だけ圭一と二人きりにしてほしいと魅音は言いました。
圭一はそれを受けます。
自分の罪を見てほしいと案内したのは、園崎家の敷地内にある防空壕を利用した広大な空間で、地下祭具殿とされていました。
古手神社の祭具殿は拷問器具が保管されるのみでしたが、地下祭具殿は実際に拷問に使用できる設備が整っていました。
魅音の父親が組長を務める暴力団組織「園崎組」も都合の悪い人間を消すために使用していたりと、現役の拷問装備です。
そこの牢屋の一つに、失踪した詩音がいました。
圭一の姿に安堵した様子を見せますが、魅音の姿を認めるや否や狂乱しながら圭一を殺さず自分を殺せと叫びます。
魅音も魅音で、たっぷりじっくりと痛めつけて殺してやると答えます。
今更怖がらせてどうすると振り返った圭一が見たのは、残虐な笑みを浮かべた魅音の姿でした。
警察の突入
改造スタンガンで朦朧とした状態にさせられた圭一は、大の字に拘束台に縛り付けられ、手のひらを開かされて指も一本一本固定されます。
圭一は今の魅音は鬼に支配されてしまっていると考えて自分を取り戻すよう叫びますが、魅音は笑うばかりで拷問の準備を着々と進めます。
どうしてこんなことに、と嘆く圭一に、冥土の土産として魅音中の鬼が目覚めたきっかけを伝えます。
本当に些細なことで、玩具屋でのゲーム大会の日に、魅音に人形を渡していれば鬼が起きることも無かったというのです。
後悔に苛まれ嗚咽が止まらない圭一ですが、魅音はこれから行う拷問について説明します。
数十本の五寸釘と金槌、開かれて固定された手の指。
全ての指の関節に合計30本もの五寸釘を打ち込む拷問。
その先は意識を保っていられれば教えてあげるとのこと。
圭一は自分の命を凄惨に奪うであろう魅音を前にしながらも、魅音に二つ約束をしろと迫ります。
詩音の命を奪うな、そして満足したら魅音に身体を返して鬼は消えろと言います。
命乞いをしないのかと問われれば「じゃあ俺を殺すなも付け加えてくれ」と半ばふざけたように返します。
それに対して、魅音は答えます。
最後の約束だけは叶えてもいいと。
詩音を殺すのは止められない。魅音に身体を返すこともできない。
そういって、圭一に音が聞こえるかと問います。
地鳴りのように定期的に大きな音が遠くで鳴っています。
圭一の帰りが遅いためにレナが大石たちを呼んだのでした。
地下への入り口を見つけ、扉を破ろうとしているのです。
魅音は、今日以降に自分を見ても近づいてはいけないとささやくと、圭一の首にスタンガンを押し付けて昏倒させました。
その後
圭一と詩音は警察に救助されました。
その後は自宅で療養していたのですが、前原家は翌月に引っ越しをすることになります。
部活メンバーで雛見沢に残るのはレナだけになってしまいました。
ある日の深夜、圭一の自室の窓に誰かが小石をぶつけていました。
外を見ると、魅音が道路の砂利を投げつけているようです。
もし魅音に会えたら渡そうと思っていた人形を手に、急いで家の外にまで出ます。
魅音はもう時間がないから最期に会いに来たと言います。
彼女の残り時間が少ないことを察し、圭一は人形を差し出します。
それと入れ違いのように魅音の腕が伸び、圭一の腹に激痛が走りました。
包丁が深々と圭一の腹に刺さっており、魅音はそれをグリグリと回転させていたのです。
痛みと出血で倒れる圭一が目にしたのは、大笑いしながら「殺したい奴は全部殺せた!」と叫んでいる魅音の姿でした。
終焉
しかし圭一は生き延びました。
重傷を負ったものの、騒ぎを聞きつけて出てきた両親に発見され、診療所に担ぎ込まれて一命を取り留めたのです。
とはいえ、雛見沢の診療所はおろか興宮の病院でも対処が難しいほどの傷であったため、雛見沢や興宮が属する鹿骨市の総合病院に入院することになりました。
そこに大石が訪ねてきます。
前原家は既に雛見沢から引っ越しており、両親は新居で生活していました。
大石が圭一に接触するにはこの病院が最後といったところでしょう。
大石に悪い印象を持っている圭一はつっけんどんな対応をしますが、地下祭具殿の井戸の底から失踪者の遺体が見つかったことを知らされます。
それによって、沙都子や梨花の死を現実のものとして受け止めざるを得なくなりました。
また、圭一が魅音に刺された日に詩音も滞在先のマンションで転落死していました。
部屋での騒ぎを聞いた隣人の証言から、どうやら魅音と取っ組み合いの末に突き落とされたようです。
しかし、そこから不可解な話が続きます。
まず、梨花が糖尿病だったかと尋ねてきます。
曰く、遺体のスカートのポケットから、割れて内容物の無くなった注射器が出てきたとのこと。
そして魅音も見つかったと告げられます。
同じく井戸の底から。
検視の結果、圭一と詩音が救助されたあの日に転落死していたようなのです。
つまり、圭一を刺したり詩音を突き落とした魅音は、魅音ではないということになってしまいます。
その時には魅音はとっくに死んでいたのです。
結局謎の多くは未解決で、警察上層部の意向で、この事件は早期の幕引きを図ろうとしているようです。
最後に大石は、何か話したくなったら電話してくださいと言い残して病室を去っていきました。
その直後、
圭一のベッドの下から血で汚れた手が伸びてきました。
その腕は圭一を探るようにベッドの上をのたうち回ります。
その光景を見ても圭一は特に驚きません。
これは自分が見ている幻覚なんだと無意識のうちに理解しているようです。
気付けば圭一は地下祭具殿の拘束台に縛り付けられていました。
そしてあの時と同じように指に釘をあてがわれます。
この事件を誰か終わらせてください。それだけが俺の望みです。
圭一のその独白の後、金槌は大きく振り上げられ…。
綿流し編 完
ネタバレ
魅音と詩音
彼女たちは一卵性の双生児であり、瓜二つの容姿をしています。
どれくらいそっくりかと言えば、髪形服装を合わせると、両親ですら見分けることができないレベルです。
実は今の魅音と詩音は本来逆であり、園崎家当主の証である刺青を入れる催しの時、彼女たちが入れ替わっていたのです。
普段から互いに入れ替わってイタズラなどをしていたのですが、その日を境に彼女たちの人生は固定されてしまいました。
本来の魅音は忌み子の詩音として、本来の詩音は重責に縛られた魅音として生きていくことになります。
生来、長女の魅音(今の詩音)のほうが思い切りがよく積極的で、妹の詩音(今の魅音)はやや穏やかな性格をしていたそうです。
それが今や、互いの性格を役割によって演じ続けている状況になっています。
そのため、いざとなると、詩音の方が積極的かつ攻撃的で、魅音の方が引っ込み思案で精神的な弱さを持ってしまっています。
入れ替わりさえなければ、今の詩音のほうが頭首にふさわしい器を持っていたというわけです。
なぜ魅音と詩音は同居していないのか。
まず園崎家の掟として、跡取りとなる子が双子の場合は片方を間引くべしという慣習が存在しています。
本来であれば妹の詩音の方が掟に従い生を受けられないはずだったのですが、現在の頭首「お魎」の慈悲により、追放処分で例外的な対応をされていました。
幼いころは園崎本家で一緒に暮らしていたのですが、次期頭首を決める儀式の日以降、詩音は全寮制の聖ルチーア学園に転入させられます。
生かしはしたが、掟に対するけじめとしての事実上の幽閉です。
その後、学園を脱走し、それ以降はお目付け役の「葛西」が用意したマンションで隠れ住んでいる状況です。
そのため、ほとんどの世界では雛見沢分校にも通っていません。
惨劇のきっかけ
鬼隠し編同様に、圭一たちが体験することになる惨劇の主たる原因は「雛見沢症候群」によるものです。
綿流し編で発症したのは詩音でした。
そのきっかけとなったのが、玩具屋でのゲーム後に「圭一が人形を魅音にあげなかった」ことです。
魅音は圭一に対して恋心を抱いていますが、普段の関係から今一歩前進することができませんでした。
それが、人形をレナに挙げる際に「魅音は女の子って感じじゃないしな」と圭一に言われてしまったことが大きなショックだったようです。
そのことを詩音に泣きながら相談した際に、詩音の中の眠っていた鬼が目覚めてしまいました。
2年前にオヤシロ様の祟りで失踪した北条悟史という少年がいます。
当時詩音は彼に対して恋心を抱いていました。
しかし、悟史の両親が「村をダムに沈める国の計画に賛成派」だったため、村中から迫害を受けていたのです。
その筆頭だったのが自分の実家である「園崎家」でした。
さらにオヤシロ様の祟りで悟史が失踪すると、園崎家がそれに関与していると思いこみ魅音に詰め寄りました。
魅音も同じことを考えていたようで、お魎に詰め寄り問いただしたところ「園崎家は関与していない」という答えを得ていました。
ちなみに園崎家は自身に都合が良いことが起きた際に「さも自らの差し金によって起こった」かのようなハッタリをかける戦略を取っていました。
そのため、明確な関与の否定を頭首がとったということは、本当に何も知らないということなのです。
当時、学園を抜け出して悟史や沙都子と密会していたことを咎められ、ケジメとして手の爪を3枚剥がされていた詩音は、次期頭首である魅音の言うことも信じませんでした。
しかし、魅音も詩音と同じく爪を剥がした形跡を見ると、その場では園崎家が関与していない事を納得しました。
一旦は魅音の主張を信じることにして悟史のことを諦めたものの、魅音が叶わぬ恋をしていることを知ると自分の恋心も思い出してしまいます。
そして、改めて悟史の失踪は村の御三家により実行されたと考えるようになるのです。
魅音と詩音はいつから入れ替わっていたのか。
綿流しのお祭りが終わった夜、魅音と詩音は悟史の行方について口論となってしまいます。
その際に詩音が隠し持っていたスタンガンで魅音を昏倒させ、魅音として成り替わりました。
その目的は、次期頭首としての立場を利用してオヤシロ様の祟りの情報を集めることと、撒き餌である圭一と詩音に迫るであろう村人を見極めるためでした。
魅音は園崎本家の地下祭具殿の牢屋に監禁し、自身は魅音と詩音として一人二役を演じるのです。
作中後半のほぼすべてで登場する魅音と詩音はどちらも「詩音」であり、圭一に探りを入れる魅音も、毎晩電話をしていた詩音も同じ人物だったということです。
祭具殿で聞こえた騒音
祭りの日に祭具殿に忍び込んでいた詩音と、外で見張りをしていた富竹が聞いた騒音は、羽入が立てた音です。
羽入はオヤシロ様そのものと言える神格存在であり、通常は梨花以外に存在を認識されることはありません。
しかし例外として、雛見沢症候群の発症レベルが上がると不鮮明ながら羽入の存在を認知できるようになります。
その代表例が音です。
祭具殿で鷹野が雛見沢の過去とオヤシロ様は恐怖で人を縛っていたことを熱弁しているとき、「そんな出鱈目を言うな」と羽入が怒り地団太を踏んでいたのです。
つまり、その音が聞こえた詩音と富竹は、鷹野や圭一たちよりも高いレベルで発症しつつあるということなのです。
詩音は村に対する疑心暗鬼から、富竹は鷹野の謀略により発症促進剤を打たれていたことにより発症レベルが上がっていました。
御三家はオヤシロ様の祟りに関与していなかったのか。
オヤシロ様の祟りは不幸な事故と、とある機関の陰謀によって引き起こされており、御三家は全く関与していませんでした。
詳細は下記記事をご参考ください。
現在の御三家の方針は、雛見沢村を今後も発展させていくために、外部との関わりを良好にするというものでした。
それが血生臭い怪死事件が立て続けに起こり、かなりの情報収集力をもつ園崎家ですら事件の詳細を知ることができていませんでした。
むしろ御三家は連続怪死事件を恐れていたのです。
終盤に魅音(詩音)が圭一とレナに「全ての事件に自分が関与している」と伝えたのは、園崎家が黒幕だと信じていた詩音の妄想に過ぎません。
梨花失踪の真相
レナの推理では醤油をもらうために園崎家へ行った際に魅音(詩音)に殺害されたとしています。
これは第三者から見ると殆ど正解なのですが、醤油をもらいたいというのは口実に過ぎず、梨花は醤油のおすそ分け以外の目的で園崎家へ向かっていたのです。
梨花はひぐらしのなく頃にシリーズのキーマンであり、数多の世界を渡り歩いてきた超常的な力を持つ存在です。
それぞれの世界は独自の歩みを見せますが、構成している要素(人々や思惑)が同じなため、いくつかのパターンに分かれることが殆どです。
つまり、綿流し編の梨花は、かつてよく似た展開をした世界を経験しているのです。
彼女には魅音(詩音)が雛見沢症候群を発症し、暴走の結果多数の人々を殺める流れなのが分かっていました。
そのため、魅音(詩音)に雛見沢症候群の治療薬を注射しようと考えたのです。
本来であれば入江機関に連絡し、山狗により処理をすべきなのでしょうが、発症者は貴重な検体として研究材料になることが梨花には分かっていました。
山狗についてはこちらの記事をご覧ください。
山狗が動けば魅音(詩音)は十中八九、戻ってきません。
そのため、身体能力的に不利なのを承知で治療を試みたのです。
ちなみにこの治療薬は沙都子が使用しているものです。
結果的に魅音(詩音)には振り払われてしまい、逆に注射を打たれてしまいます。
その後、梨花は錯乱したかのように包丁で自殺をしますが、注射の作用ではなく魅音(詩音)に囚われて拷問死する未来を回避するためでした。
つまり、かつて拷問の限りを受けて死亡したことがあるということですね。
この時のうめき声「はにゅううう、はにゅうううう」は羽入を呼んでいるのだということが後の読者には分かります。
ちなみに井戸に捨てられた梨花の遺体と共に発見された注射器はこの時の物です。
圭一を刺した魅音の謎について。
極めてシンプルなトリックであり、警察に保護されたのは圭一と詩音(魅音)ではなく、圭一と魅音(詩音)だったのです。
圭一を昏倒させた後、魅音と詩音は服を取り替え、再度入れ替わっていました。
魅音(詩音)は被害者になり替わることで、悠々と現場を後にしたのです。
そのうえ、圭一もレナも「そもそも入れ替わっている」ことに気付いていませんので、指紋や歯形などの個人を特定する方法をもってしても、あくまで詩音として認識されます。
なので、詩音として保護された後、魅音の格好をして圭一を刺し、帰宅後に幻覚の魅音と格闘をした末にベランダから転落死したということです。
この時点で詩音は高いレベルで雛見沢症候群を発症していますので、極度の被害妄想や幻覚が見える状態です。
隣人が姉妹の喧嘩を聞いたというのも、二人の声が全く同じだったため、一人で二人分のセリフを交互にしゃべっていただけに過ぎません。
魅音と詩音が二人同時に現れない限りは、どっちがどっちなのが分からないのが、この入れ替わりのタネになります。
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