自衛隊が身近にいない地域で過ごしている方にとっても、自衛官が行う「敬礼」については大まかにご存知の方も多いと思います。
右手をおでこのあたりに上げて、手で日除けをするような形にする。
いわゆる「挙手の敬礼」というやつです。
実は自衛隊の敬礼には民間であまり知られていない作法があります。
この記事では自衛官の行う「敬礼」について解説していきます。
敬礼にはいくつかの種類がある。
一般的にイメージされやすいのは挙手の敬礼と呼ばれるものでしょう。
右手をオデコあたりまで上げつやつです。
自衛隊ではそれを「挙手の敬礼」と呼んでおり、着帽時(作業帽や鉄帽などを被っている時)のみ行う敬礼動作になります。
つまり、脱帽(何も被っていない)時は別の方法になるわけです。
他にも執銃時の敬礼などもありますので、いくつかの代表的な敬礼をご紹介します。
挙手の敬礼
右手をオデコの前に上げる、いわゆる「敬礼」です。
上述の通り、着帽時のみ行う敬礼です。
よくバラエティ番組などで元自衛官のタレントや芸人が何も被っていないのに挙手の敬礼をしていますが、あれは詳しくない民間向けのポーズみたいなものでしょう。
バラエティに細かく口出しするのもナンセンスですしね。
それはさておき、全自衛官が淀みなく行える敬礼ですが、細かな動作要領が決まっています。
まず、基本となる「気をつけの姿勢」から行います。
(歩行時に行うこともありますが割愛します)
体側につけた右手を最短距離かつ最速で顔の前まで上げます。
右手の指先は右目の眉の位置でビシッと止め、掌は若干内向きにすることで相手から見えないようにします。
胸を張り、肘は体側と同じ場所まであげ、脇は90度の角度で固定します。
その間、他の部位は気をつけの姿勢から動かすことはありません。
受礼者が答礼するまで、あるいは指揮者から「直れ」の指示があるまで続けます。
直る際も、右手は同じ最短ルートをたどり、最速で体側につけます。
10°の敬礼
脱帽時に行う敬礼です。
通常、作業中の自衛官は戦闘帽や鉄帽を被っていますが、座学の時や課業時間外で室内で過ごす際は脱帽しています。
そう言った場合に使用されるのが「10°の敬礼」です。
こちらは非常に簡単で、「気をつけ」の状態でから、10°の角度でお辞儀をする形になります。
ただし、頭だけを下げるのではなく、きちんと腰から曲げる必要がることと、最速でキレのある動作が求められます。
この敬礼も、答礼されるか指揮者から直れの指示があるまで行います。
執銃時の敬礼
小銃を携行している際にも敬礼の作法は決められています。
立て銃の際には、右手で保持している重心の位置に左手を添える形になります。
左手の掌を綺麗に伸ばし、右手の位置で挙手の敬礼をするようなイメージです。
担え銃の際には、これまた左手を小銃の切替軸(セレクター)のあたりに当てる形になります。
こちらも掌を綺麗に伸ばし、挙手の敬礼をするイメージになります。
天皇および隊員の棺に対する敬礼
天皇および隊員の棺(遺体)に対して実施する敬礼もあります。
国家の象徴たる天皇陛下および、同僚である隊員の遺体が入った棺に対しては、以下のように敬礼が変動します。
- 小銃携行時:捧げ銃
- 着帽時:挙手の敬礼
- 脱帽時:45°の敬礼
挙手の敬礼は通常のものと全く変わりありません。
脱帽時の45°の敬礼は、10°の敬礼と基本的のは同じ動きになります。
腰から下げる角度が45°と深くなり、より深い敬意を表します。
「捧げ銃」とは小銃を身体の前で垂直に保持する姿勢を言います。
立て銃の状態から保持している右手だけで銃を身体の正面に持ち上げます。
左手で被筒(ハンドガード)の最下端を握り、右手を離して銃床(ストック)の位置まで移動させます。
この際の注意事項として、右手は銃床に添えるだけであり、銃を保持するのは左手のみになります。
銃の位置はおよそ拳一つ分だけ身体から離します。
まとめ
他にもいくつか敬礼の様式はあるのですが、代表的なところだけご紹介しました。
さらに詳細を知りたい方がいましたら、確か防衛省が敬礼についての訓令を公表していたはずです。
私が教育時に教えてもらった話として、自衛隊は「手の内を見せない」というものがあります。
例えば挙手の敬礼の時、右手の掌は若干内向きにし、手の甲が前面を向くようにします。
国によっては敬礼の際に掌を相手側に向ける軍もあります。
他にも全ての姿勢の基本となる「気をつけ」の際は拳を握り込む形になりますし、行進時も拳を握ります。
単なる駄洒落、ゲン担ぎですが、そう言った意味合いもあるんだなと感心した思い出があります。
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