関わりのない人からすると何をしているのか分からない組織である自衛隊。
それどころか、何が出来るのかも詳しくは知らない方も多いと思います。
今回は、陸上自衛隊の職種をふんわり簡単に解説します。
思いの外いろんな仕事があるんですよ。
普通科 (Infantry)
いわゆる歩兵に相当する職種です。
小銃や拳銃、個人携行式対戦車誘導弾などの携帯火器のほか、軽迫撃砲等で武装して作戦行動を行います。
陸自の中で最大規模の人員を誇り、戦闘を直接的に終結させる基幹となります。
多くの隊員が新隊員教育後に配属され、戦闘のエキスパートとなるべくしごかれます。
「一に駆け足、二に駆け足、三四が無くて、五に駆け足」と揶揄されるほどに身体が資本の職種です。
機甲科 (Armor)
戦車や装甲車のような戦闘車両を主な武装としています。
他にもオートバイを活用した偵察任務にも従事します。
「戦車に乗ったら目の色変えよ」とよく言われるのですが、戦車乗りは誇りをもち、強力な火力と防御力を備える戦車の性能を最大限に引き出して任務に当たることが求められます。
特科 (Artillery)
いわゆる砲兵に相当する職種です。
野戦特科と高射特科に分かれます。
野戦特科 (Field Artillery)
重迫撃砲や自走りゅう弾砲、多連装ロケットシステムや地対艦誘導弾などを用いて砲撃支援を行います。
長射程・大火力の火器を用いた間接照準射撃を行い、適宜陣地返還を繰り返して自身の位置を秘匿しながら攻撃を行います。
高射特科 (Anti–aircraft Artillery)
自走高射機関砲や短距離地対空誘導弾を用いて防空任務に当たります。
基本的には航空自衛隊が防空全般を担うため、高射特科は味方部隊や防衛施設等の限定的な範囲の防空を担います。
情報科 (Military Intelligence)
情報の収集、分析、保全等を担います。
無人機による偵察や国内外の通信ネットワークの傍受から、昔ながらの情報保全まで幅広い情報処理を専門としています。
任務の性質上、詳細は不明です。
航空科 (Aviation)
航空機を用いた任務を担当します。
輸送や偵察、攻撃など各種航空機を用いて地上任務の支援を行います。
主力は回転翼機(ヘリコプター)ですが、偵察用の小型固定翼機(飛行機)も装備しています。
パイロット以外にも多くの整備士が配置されており、確実に飛んで帰って来られるように日々業務に当たっています。
施設科 (Engineer)
いわゆる工兵に相当します。
自衛隊内における土建屋さんで、様々な重機を活用し兵站線を整備します。
前線でも活動し、戦闘と並行して陣地の構築や地雷原等の障害の敷設、除去、渡河支援などを行います。
通信科 (Signal)
通信網の構築や電子戦、サイバーテロ対策を任務としています。
前線での通信局の開設も行うため、戦闘訓練も頻繁に行われます。
重たい通信線を背負いながら地べたを這いずり回ったり、建物の掃討(CQB)訓練等も行います。
現在では無線通信が主流ですが、彼らがいなければ部隊間の協調活動も不可能になります。
電気的な知識も必要で、頭も身体も酷使する職種の一つです。
武器科 (Ordnance)
自衛隊が保有している各種火器・車両等の整備を行います。
部隊単位で修理ができない状態の装備を復帰させる
他にも不発弾処理も担当しています。
需品科 (Quartermaster)
武器や装備を除く、燃料や糧食、生活用品などの管理を行う職種です。
他にも入浴や洗濯も担当し、災害派遣時は給水支援や入浴支援を行います。
需品科がいないと部隊行動の殆どが行えなくなります。
輸送科 (Transportation)
自衛隊の運送屋さんです。
大型車両を駆使し、必要な物資や人員を迅速に輸送します。
兵站は軍事作戦の生命線であり、輸送科の協力無しには効果的な作戦行動がとれません。
ちなみに自衛隊の自動車教習所の管理運営も担っています。
かつては大型免許を無料で取得できることから任期制隊員に人気の職種でしたが、現在では簡単には入ることができない職種になっています。
化学科 (Chemical)
NBC兵器(核・生物・化学兵器)に対応する職種です。
汚染地帯を活動可能で、装備や人員の除染を行ったり、被害拡大を阻止する任務を担っています。
放射線などの有害物質を検知・除去を行える装備を持ちます。
地下鉄サリン事件や福島第一原子力発電所の臨界事故で活躍しました。
誤解されることもありますが、NBC兵器に対抗する部隊であり、使用する部隊ではありません。
警務科 (Military Police)
いわゆる憲兵に相当する職種です。
自衛隊内の警察組織で、自衛隊内部での犯罪行為に対する捜査権を持ちます。
ただし一般人に対する捜査権はありません。
また、軍法会議もないため取り調べた自衛官は一般の警察官と同様に検察に送検します。
大抵はどこかの馬鹿が同僚の財布から金を抜いたとかで出てくるイメージです。
ちなみに捜査中は関係者は一切の外出が禁止されるため、それはそれで恐れられる存在です。
会計科 (Finance)
自衛隊における経理業務を担当する職種です。
金銭の出納関係や給与計算を担います。
ほぼデスクワークですが、自衛官である以上は基本的な訓練を受けます。
そのため、たまに演習があると体中が痛くなるという話を聞いたことがあります。
衛生科 (Medical)
いわゆる衛生兵に相当する職種です。
傷病者の治療を担当し、有事の際には衛生要員として部隊に随行することもあります。
ジュネーブ条約における保護対象である「衛生要員」であり、隊員は赤十字の描かれた衛生腕章を身に着け、装備類にも赤十字マークが施されます。
各種医療機器や救急車(アンビ)等を装備しています。
衛生部隊、駐屯地医務室、自衛隊病院に配備されます。
平時は、真夏の駆け足で誰かが倒れると、衛生科の隊員が自転車で駆け付けてくれます。
音楽科 (Band)
いわゆる軍楽隊に相当する職種です。
国内外の要人の迎賓や部隊の士気高揚、各種イベントでの演奏を任務としています。
日常的業務として演奏訓練を行いますが、自衛官としての基本的な訓練も同様に受けています。
ほとんどの隊員が音楽系の大学出身者で、かなりレベルの高い演奏技術を要求されるそうです。
まとめ
「自衛隊に無いのは「床屋」と「葬儀屋」だけだ」と昔から言われている通り、大半のことは自衛隊だけで対応することが可能な高い自己完結能力を持ちます。
精強な戦闘員だけでは戦闘行動を続けることができず、後方支援職種と呼ばれる裏方がいなければ自衛隊は組織的な行動をすることができません。
民間の目に留まりやすいのはメディア露出の多い戦闘職種ですが、実際には多くの隊員たちがそれぞれの適性をもってして、縁の下の力持ちとして活躍しているのです。
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