携帯電話の普及に伴い腕時計を身に着ける人が減っているようです。
今ではスマートフォンの普及率が9割に迫る勢いとのことでますます腕時計の需要は減っていくかと思います。
そんな中でも、腕時計の需要が減らない職業が幾つかあります。
その中の一つである
自衛隊
での腕時計事情をお話しします。
身体員の入隊時の持ち物で最も大切なものの一つです。
自衛隊では腕時計は必需品です。
みなさんご存知、日本が誇る陸海空自衛隊。
この組織は様々な事情こそありますが、
実質的に軍隊に他なりません。
そして、自衛隊が想定している状況は戦場や災害現場と過酷を極めるものとなります。そんな状況で活躍することを求められている自衛官の職務内容は時間が非常に大切な要素であり、離れた場所にいる仲間と時間を合わせて(時刻規正)行動します。
そして、一分一秒の遅れが人の命に直結する状況なのも珍しくありません。
しかし、そういった現場では時計が無いこともしばしばですし、いちいち携帯を取り出して時間を確認する余裕はありません。
そこで重宝されるのが昔ながらの腕時計なのです。
おすすめ・人気の腕時計
自衛隊に入ると、まずは時間に対する意識を徹底的に叩き込まれます。
上述したように、有事においては統一された時間を基に全隊員が行動します。よって、分単位で指定された時間内に与えられた業務を遂行する必要があり、行動中に逐次時間を確認するために腕時計が必須となります。
その上、訓練環境はいわゆる3K(キツイ・汚い・危険)であるため、メタルバンドで重厚な腕時計はあまりお勧めできません。
あくまで私の周囲でのイメージですが、以下の腕時計が人気でした。
G-Shock スピードモデル
想像しやすいかと思いますが、自衛官はG-Shockの使用率が高いです。
その中でも、いわゆるスピードモデルと呼ばれる5600シリーズが人気でした。
この製品は私も使っていましたが、G-Shockの中では小型かつ薄型で、機能がシンプルな為か、比較的安価(10,000円前後)なのも魅力的でした。
左からApple WatchSE、GW-M5610、MTG-1200です。
分かりにくいですがMTG-1200に比べてM5610は本体が小型ですね。
ベルトや外装が樹脂製で汗や泥で汚れても綺麗にしやすいのも高評価です。
毎日風呂にも着けていき、ついでに時計も洗っていました。
腕時計の着け方について個人的なこだわりがあるのですが、腕立てをするときに手の甲に当たらないのと、小銃を構えているときに文字盤が見やすいため腕の内側に文字盤を向けて着用していました。
また、腕を傾けると文字盤が自動で発光する機能もあったのですが、被発見率が上がるのでオフにしていました。
あと、これは私の感想にすぎませんが、スーツなどフォーマルな服装から、それこそ戦闘服まである程度何にでも似合うデザインなのもとても気に入っていました。
転職してApple Watchに変えるまで、この時計をずっと使用し続けていました。
ソーラー電波で、時計機能としては半永久的に動くのも便利ですね。
自衛官に限らずおすすめの腕時計です。
チープカシオ
チープカシオは俗称で、カシオのスタンダードシリーズと呼ばれる製品になります。
ホームセンター等で2,000円程度で売っていながら十分な性能を持っていることで私のいた部隊内でも使用者は多かったです。
頻繁に目にしたのは「F-91W-1JH」です。
外見は上述のスピードモデルに似ていますがコストを極限まで削り、安価に提供されている製品です。
しかし、さすがはカシオ。
安かろう悪かろうではないのです。
確かに高価格帯の製品に比べれば機能が少なかったりソーラーや電波機能を搭載していません。
しかし、こと時計機能に限って言えば非常に信頼性の高い製品になっています。
自衛隊でチープカシオを使っている人の特徴は、あくまで勤務時に使用するものと割り切っている人でした。
安価ながらも最低限の機能を持ち、小型軽量で長時間装着していても気になりません。また、傷ついたり壊れたりしても、買い替えにそれほど金銭的負担がかからないのも魅力とのことです。
職種によりますが、自衛隊の訓練では野山を駆け回り、腕時計を地面や木に擦ってしまったり、最悪壊してしまうこともあります。
G-Shockは壊れない方向に特化していますが、チープカシオは壊れても買い換えることが容易です。
もちろん、基本的に腕時計を壊してしまうような動きをすることは少ないのですが、こだわりのない人にとっては、このいい意味でのチープさにメリットを感じてるそうです。
自衛隊モデルと言いつつも…
PX(駐屯地内の売店)に行ったことがある人や、自衛官向け腕時計を調べたことのある人はご存知かもしれませんが、このような自衛隊モデルの腕時計もあります。
見た目は格好良く、私もPXで初めて見た時は買おうかなと思ったのですが、自衛隊モデルなのに自衛官で使っている人を見たことがありません。おそらく、コレクターアイテムとしての価値はあるのでしょうが、自衛官という職業から見た時に、特別魅力を感じないことが一因かと思います。
ベルトの素材や視認性はこだわって作られているようですが、個人的には訓練で使用する時に使いやすいようには思えません。
信頼のおけるG-Shockに比べて若干値が張りますしね。
しかし、物としてはいい物でしょうから、デザインが気に入れば十分実用に耐えると思います。
スマートウォッチは?
私が自衛隊にいたころにはスマートウォッチは普及しておらず、部隊内でも見たことはありません。
今考えてみても大半のスマートウォッチは自衛隊での業務には堪えないだろうなと思います。
中には軍用規格に適合したガーミンなど(値も張りますが)発売されています。とはいえ大半の自衛官には無用の長物でしょうし、ましてや新隊員には不要です。
しかし今回、自衛官が使うスマートウォッチならコレ!と言いたくなるほど是非お勧めしたいという製品を購入したので紹介します。
上述した当時私が愛用していたスピードモデルを踏襲したデザインのスマートウォッチです。
心拍計測やアクティビティ測定、スマホの通知表示など、スマートウォッチとして十分な機能を備えつつも、他のG-Shock製品と同等の強度を誇ります。つまり訓練で使用しても何ら問題ありません。
課業外での駆け足などのログが取れるのは便利だと思います。
お勧めできる最大の理由は、スマートウォッチの弱点であるバッテリー問題に対するアドバンテージを持つことです。
たいていのスマートウォッチは数日でバッテリーを消費します。この製品も例に漏れず体感4-5日(公称1週間)でスマートウォッチの機能を維持できなくなります。
しかし驚くべきことに時計機能だけはソーラー発電で維持され続けるのです。
つまり演習などで長期間野外にいるときなども腕時計としての最低限の機能を提供し続けてくれるということです。
さらに、一般的なスマートウォッチと異なり、操作はタッチパネル式ではなく、昔ながらのサイドボタンです。これは不便に思われがちですが、屋外活動で不意の誤操作や故障防止に強いということです。
自衛官は基本的に傘を差しませんし、状況によってはずぶ濡れになることも珍しくありません。アップルウォッチに代表されるタッチパネル式のディスプレイは防水といえども濡れると正常に動作しませんしね。
また、本製品は単独ではネットワーク通信ができないというのも機密保持的には良いかもしれません。
自衛官にとって理想的ともいえるスマートウォッチが「DW-H5600MB-1JR」だと思っています。
まとめ
自衛隊では腕時計が必須なのは初めにお伝えしましたが、だからと言って「この時計を使え」という決まりはありません。
上述の通り、私はG-Shockのスピードモデルを愛用していましたが、同じG-Shockでも、高度や気圧の分かるもっとゴツくて高価なものを使っている人や、メタルバンドのビジネス仕様を使っている人ももちろんいました。(演習等では別のにしていたと思いますが)
これだけベラベラと話したのですが、結論を言えば
自分の気に入ったものを使えばいい
ということで間違いはありません。
身も蓋もないことを言えば、時計なんて時間が分かれば何でもいいのです。
そうであれば、デザインや装着性で気に入ったものを使うのが正解なのです。
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