新世紀エヴァンゲリオンの作中世界において、日本国が保有している独自の実力組織。
戦略自衛隊(Japan Strategy Self Defense Force:JSSDF)
作中の使徒戦では殆ど活躍の機会を与えられなかった彼らですが、旧劇場版「Air」にてネルフに対して完全に敵対します。
ネルフ本部の物理的占拠のために攻め込んできたのです。
その徹底した 虐殺 戦いぶりから「みんなのトラウマ」として恐ろしい印象を持っている方も多いことでしょう。
本記事では、戦略自衛隊の概要、および、何故ネルフに攻め込んできたのかについて解説します。
なお、解説内容は旧劇およびTVアニメシリーズの設定に準拠します。
戦略自衛隊とは。
概要
一言で表現するならば、日本政府が保有する独自の軍事組織です。
作中世界においては、アメリカやロシアなどの主要各国の軍隊は国連軍に編入され、指揮権も国連が保有しています。
日本の三自衛隊も同様に国連の指揮下に入り、日本政府直轄の実力組織は失われてしまいました。
しかし、それでは自国を能動的に守れないと判断した日本政府が新たに設立したのが「戦略自衛隊」です。
戦略自衛隊の運用は新たに設置した「国防省」が行い、従来の陸海空自衛隊(国連軍所属)は「防衛庁」が管轄しています。
全く別の指揮系統を持つ組織ということですね。
作中世界においては「世界最強」と目される実力を持ち、様々な戦闘に対応できる装備・人員で構成されています。
設立の経緯
作中の西暦2000年にセカンドインパクトが発生しました。
南極大陸の氷が解けることによって海面水位は上昇し、世界中の沿岸部の都市は水没。加えてインパクトの衝撃によって地球の地軸は歪み異常気象が多発します。
世界中は混乱の極みにあり、世界中で紛争が多発するようになります。
日本も戦禍から逃れることは出来ず、東京に新型爆弾が投下され50万人以上の死者を出し壊滅状態に陥る有様でした。
国連は事態を収拾するために2001年2月14日に「バレンタイン休戦臨時条約」を締結させ、各国の紛争は一応のおさまりを見せることになります。
この条約により主要各国の陸海空軍は「国連軍」に編入され、世界の情勢維持のために指揮権は国連が保有するようになります。
当然日本の陸海空自衛隊も国連直轄の軍として取り上げられてしまいます。
しかし、その後に南沙諸島にてベトナムと中国の軍事衝突が発生し、日本政府は自国防衛のための独自の軍事力を求めます。
そして設立された日本政府直轄の軍隊が「戦略自衛隊」となったわけです。
ネルフとの関係
ご存じの通り、ネルフは国連直轄の特務機関です。
上述の通り作中世界では多くの軍隊が国連に編入されており、国連直轄であるネルフは実質的に諸外国からの干渉から保護されている状態でした。
しかし、戦略自衛隊だけは別で「国連の指揮下に無い軍隊」であり、日本国内に存在するネルフに対して直接介入することが可能な戦力ともいえるのです。
ネルフと共闘関係にあるわけでもなく、使徒戦においては国連軍(陸海空自衛隊)が対応しており、使徒と直接戦闘を行っている描写はありません。
せいぜいがラミエル戦で自走陽電子砲を徴発されポジトロンスナイパーライフルの礎となった程度です。
ネルフにとっての戦自は勝手に干渉してきかねない面倒な相手。
戦自にとってのネルフは日本国内で勝手に軍事的な活動をする得体のしれない組織。
互いに仲がいいとは言えませんでした。
戦力
戦車や多連装ミサイルシステム、爆撃機等の航空戦力など、一般的な先進国軍が保有する装備は一通り備えています。
ライセンス生産なのか輸入なのかは不明ですが外国の優秀な兵器類も積極的に採用しており、質も量も備えた軍隊と言えます。
他にもN2兵器を運用しているほか、BC兵器(生物・化学兵器)の保有も示唆されています。
隊員たちの練度も非常に高く、準軍事組織とはいえ高度なセキュリティシステムで守られたネルフ本部を碌な反撃も許さずに制圧していきました。
「Air」においてはネルフ本部の制圧という任務のため、隊員の装備もCQBやMOUTのような近接戦闘に特化しています。
こういった装備の充実や隊員の練度の高さから、任務に応じて様々な装備を使いこなせる一流の軍隊ということが分かります。
とはいえどうしても引っかかるところが、ネルフ侵攻に参加した突入部隊の主力小銃がH&KのG11という点ですね。
ケースレス弾を使用する先進的な発想で開発されたアサルトライフルですが、出来上がったのはデカくて重くて作動不良が頻発する困ったちゃんだったのです。
拳銃はブローニングのハイパワーなので言うことないのに、なぜ小銃が…という印象です。
まあ、エヴァ世界のH&K社は良いものを作ったのかもしれませんが。
なぜネルフに攻めてきたのか。
作中には世界を裏で牛耳る「ゼーレ」という秘密結社が存在しています。
ネルフや関係機関のパトロンでもあり、使徒の殲滅をはじめとしたネルフの活動はゼーレのシナリオに基づいて行われているのです。
彼らはある種の宗教組織でもあり、過去に発見された「裏死海文書」という経典を中心に活動しています。
裏死海文書は、地球の生命の成り立ちから、セカンドインパクト、使徒の襲来、そして後に起こるサードインパクトまでが記された預言書です。
ゼーレはその予言書に基づき、群体として進化に行き詰った人類をLCLに還元して、個として完成された存在に補完しようとしているのです。
これが所謂「人類補完計画」ですね。
しかし、ネルフの総司令官である「碇ゲンドウ」は、そのシナリオを自分の目的のために利用するようになりました。
ゼーレのための実行機関であったはずのネルフは、もはやゲンドウの私的な目的のために利用されていたのです。
セーレはネルフとエヴァ初号機の奪還のために日本政府を動かすことにしました。
「ネルフが意図的にサードインパクトを起こして人類を滅ぼそうとしている」
という情報を与えたのです。
そこで投入されたのが「戦略自衛隊」です。
国連の決議に寄らずに動かせる都合の良い軍隊がそこにあったわけですね。
ネルフ侵攻においては非戦闘員への無条件発泡が許可され、隊員たちは無表情に、無感動に、投降しようとした無抵抗な職員さえも惨殺していきました。
とくに、室内に立てこもったネルフ職員に対して戦自隊員が火炎放射器を使用したシーンはトラウマになった方も多いのではないでしょうか。
内部で焼き殺される女性の悲鳴は凄惨極まるものでした。
ちなみに台本には、二度目の火炎放射の時はより激しく悲鳴を上げるようにという嫌な指示がされていたそうです。
圧倒的な戦力差を以てしてネルフ本部の制圧を進める彼らの非情さに目が行きがちですが、彼らもまた、自分の大切な人、仲間の大切な人、皆の大切な人を守るために、心を殺して任務に当たっていた自衛官たちなのです。
しかし、ネルフの制圧に成功しようが失敗しようが、結局はセーレかネルフのどちらかの陣営によってサードインパクトは起こされるのは決まっていました。
彼らの守りたかった世界は消えてしまうのは避けられない状況だったというのがやるせなさを強くします。
まとめ
日本政府および戦略自衛隊は、エヴァの作中では常に蚊帳の外にいました。
というよりも、ネルフの一般職員にも多くの情報が秘匿されていたほどです。
作中世界は、神と同等になりたかった宗教家と、亡くなった奥さんに会いたい甘えんぼオジサンのせいで滅びました。
それでも、そこに生きる人々は自分自身や大切な人の未来を守るために全力で生きていたのです。
特に「Air」における戦略自衛隊の悪逆非道さは目に余るものがありますが、彼らに残された選択肢はアレしかなかったのです。
自らの良心に蓋をして、世界を救うために手を汚してくれる、立派な自衛官たちだったのです。
上記の画像はVHS版の「シト新生」のパッケージ裏に書かれたイラストです。
戦略自衛隊の隊員たちが談笑し、奥には猫を抱えて笑っている隊員もいます。
彼らが残酷な戦闘マシーンではないことが分かる切ないイラストだと思います。
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