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【解説】メダロットの世界観【少年マンガの皮を被った作品】

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引用元:メダロット2 1巻 21ページ
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ティンペットと呼ばれる骨格・神経系を模したフレームに筋肉に当たるパーツを装着。

頭脳となるメダルを取り付けることで、人と同等の人格を持ったロボット、


メダロットは完成します。


さまざまな特性を持つメダルとパーツの組み合わせにより、メダロットの能力には無数のバリエーションが存在します。


作中世界ではメダロットは人格を持った対等なパートナーでありつつ、

メダロット同士を戦わせるロボトルが人気となっており、各メディアミックス作品でもロボトルが物語の主体となっています。


ポケモン同様に、カッコイイデザインかつオリジナルの技構成や戦術を組み立てられる、少年心をくすぐるコンテンツでした。


アニメ版、ゲーム版は子供向けロボット作品の側面が強いですが、漫画版は一味違った魅力を持ちます。


本記事では少年漫画の皮を被った社会派漫画である「メダロット」のうち、シリーズ1から4までのご紹介をいたします。


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メダロットとの友情!…は一つの要素に過ぎません

メダロット1~4は主人公別に大きく二つの編に分かれます。


ヒカル編:シリーズ1の主人公は「アガタ・ヒカル」であり、メダロットの基本的な世界観を描きつつ、のちのシリーズに繋がる重要な物語となっております。(全3巻)


イッキ編:シリーズ2~4の主人公は「テンリョウ・イッキ」であり、シリーズ1の10年後で同じ町を舞台にしています。メダロットという存在に対して深く切り込んでいくストーリー展開となります。


ちなみに、どちらの主人公も「メタビー」と呼ばれるKBTタイプ(カブトムシ型)のパーツを付けた個体がパートナーになりますが、それぞれは同名の別個体です。


ヒカルもイッキも、自立心の強いメダルであったメタビーとは、当初こそ揉めたりすることもありましたが、戦いと冒険を重ねていくにつれて固い友情で結ばれていきます。


仲間やメダロットたちと協力しながら、二人とも世界規模の事件を解決していくという、少年漫画にありがちな熱いストーリーを楽しめます。


しかし、リアルタイムで読んでいた小学生の頃は気にならなかったのですが、彼ら二人の物語は作中世界の表面的な描写に過ぎません。


メインで描写されているのは子供である主人公の視点ですが、大人はもちろん、メダルを生み出した存在によりストーリーは大きく動いていきます。


大半は主人公視点、つまり少年漫画的な展開になりますが、隠しきれないシビアな現実がしばしば顔を覗かせるのが漫画版の魅力です。


人格があっても彼らは人間ではありません

メダロットの頭脳である「メダル」は高度な情報処理能力を持っており、自我が存在します。


この「自我」は、人工知能とは異なり人間が作り出したものではありません。

メダルに元々備わっている人格であり、人間は身体となるメダロットを準備したにすぎません。


つまり、メダルは高度な自我を持った知的生命体なのです。


しかし、人間と同等の喜怒哀楽を示し、高い知性を持っているものの、作中ではメダロットには人権が付与されていません。


当初は単なるペットロボット程度の扱いを受けて世界中に流通していましたが、

1作目(ヒカル編)のとある事件がきっかけで、メダロットの危険性が浮き彫りになりました。


2作目(イッキ編)以降、メダロットの所持は登録制になり、保有者(マスター)のいないメダロットは野良メダロットとして迫害を受けることになります。

それにより心に傷を負うメダロットもいますが、ケアをすることはありません。


人間同様に物を考え善悪の判断もつきますが、彼らは所詮はロボットであり、コンビニやおもちゃ屋で購入できる単なる製品であると考えられています。


加えて、人間との決定的な違いとして、メダロットには寿命が存在しません。

メダルさえ無事なら半永久的に生存が可能です。


しかも、メダロットのハード部分は子供でも組み立てられるほど簡素化されており、パーツさえ手に入れば、自分で自分を直すことも可能です。

さらに後年の機体には「スラフシステム」を始めとしたナノマシンによる自己修復機能を備えたパーツを装着している機種もあり、外的要因がなければ相当の年月を同じボディで過ごすことができます。


人間と異なる圧倒的な耐久力を誇るメダロットは、やがてはマスターとの別れを経験することになります。


シリーズが進むにつれて、この「寿命の差」という問題がより明確になっていきます。

どうあがいても辛い別れを経験することになり、さらに多くのメダロットがマスターのいない野良になっていくのです。

もし人間がいなくなっても、メダロットたちは地球で生き続けるでしょう。


メダロットは外宇宙からの侵略兵器

作中世界では友達ロボット、競技用ロボットのような製品としての側面が強いメダロットですが、

人間がそうなるように扱っているだけで、実際の性質は全く異なるものであることが判明しています。


上記のように、メダルは一種の生命体です。

お察しの通り、地球由来の生物ではありませんが、基本的な本能は地球生物と変わらないものを持っています。


それは「繁殖」です。


メダルの出自

遥か古代に、高い技術力を持った宇宙人が、宇宙全域に命の種としてメダルをばらまきました。

それらのメダルは、以下のようなヒエラルキーを持ったセットとして、様々な星を目指します。

  1. 群れの頂点となる1体の「マザー」
  2. マザーの直属の部下になる少数の特別な力を持った「レアメダル」
  3. その他 無数の「メダル」


彼らは宇宙人から「降り立った地で増えろ」という指示(本能)を受けて宇宙全体を旅していました。


地球に飛来したメダルたち

そしてそのうちの数セットが太古の地球に降り立ったのです。

つまり、メダルというのは地球外からの来訪者で、「増える」という目的を達成することのみを考えています。


メダルが飛来した時には、地球上では既に多種多様な生物が繁栄していました。

ちなみにメダルが持つ様々な要素の紋様や能力は、地球にある要素をコピーしたものだと考えられています。


本来であれば、本能に従って自身の繁殖のために邪魔になる先住生物を駆除することも厭わないはずでした。


しかし、地球に降り立った「マザー」達は、何故かその本能を無視します。

配下のメダルたちに命じて、長い眠りにつくことを選んだのです。


彼らがなぜそうしたのかは分かっていません。

単なる気まぐれではないかと推測される始末です。


やがて地球に降り立ったマザーやメダルの多くは化石化していき、作中世界にはその着陸地点である「遺跡」が複数存在しています。

そして、一部の生きているメダル発掘され、研究の末にがメダロットに使用されることになりました。


メダロットを販売しているメダロット社㈱は、過去の文献や遺跡の調査結果からその事実を知っています。

しかし、メダルをあくまでオモチャ用の頭脳とすることで意図的に陳腐な存在に落とし込んで制御をしているのです。


月のマザー

地球に降り立ったマザーが本能を無視したために、人間を始めとした地球の生命は繁栄を重ねることができました。

しかし、これはあくまでレアケースであり、基本的にマザーたちは「増える」という本能に極めて忠実です。


マザーの本当の姿を示したのが、「月で発見されたマザー」です。


シリーズ4作目にて、メダロット社の調査により月の裏側に「遺跡」が発見されます。

発掘の結果、活動停止状態のマザーを発見、研究のためにメダル及び脊椎を地球へ持ち帰りました。

そして地球で開発していた通称「復元体」と呼ばれる「マザー」を模した機体に装着します。


しかし新たな身体を得た月のマザーは地球のメダルたちを洗脳します。

もともとマザーはメダルを従わせる能力(メダフォース)を持っています。

地球のマザーから直接生まれたレアメダルでなければ自由に操ることができるのです。


月のマザーは操ったメダロットたちを使って邪魔者である地球の生物を滅ぼそうとします。

その妨げになるであろう、洗脳の利かない地球産レアメダルのメタビーに対して「教育」をしよう彼とイッキのもとにやってきました。


「他者を排除するのは良くない」というイッキとメタビーに対して、月のマザーは「自然な営みだ」と返します。

あらゆる生物は自身の生存と繁殖のために邪魔になるものを排除しており、人間もその枠組みから決して外れていない。

同じなら奪い合い、違えば攻撃し合う。

侵食は生命の本質なのだ、と。


それに対して、それでもイッキとメタビーは、人間とメダロットという種族の違いはあれども分かりあって共生できると宣言します。


そして、意見の合わない月のマザーを排除しようとすること自体が、その枠組みの中にいることを証明してしまうとして、説得を続けます。


しかし、そこに飛来するのはマザーの目論見を阻止するために自衛隊が発射したミサイルでした。

月のマザーはミサイルに破壊され「これが真実なのだよ」と、自身の考えが正しいことを伝えて息絶えるのでした。


まとめ

イッキたちの決死の説得も心に迫るものがあります。

しかし、最後には人類はマザーが正しかったことを人類自らが証明してしまうことになってしまいました。

そしてイッキ編は特にこのまま何もなく幕を閉じていきます。

少年マンガにありがちな熱い戦いもスッキリとした勝敗もありません。

最後の敵とはロボトルにすらならず、せいぜいが口喧嘩レベルです。

さらに、決着は「自衛隊による攻撃」というイッキやメタビーなどの主要人物が一切関わりなく終わることになります。

マザーの撃破後、いつもの日常に戻りつつも釈然としないイッキですが、

これからもメタビーたちとはうまくやっていけると思う、と自分の考えをまとめています。


自分達にはどうしようもない世界というのは確かにあります。

それは現実世界でも変わりません。


何かの拍子にその世界に関わることがあっても、ドラマチックな結末に至ることは稀でしょう。

それでも、その経験は人を成長させます。


メダロットシリーズで最も評価の高いイッキ編は、イッキの成長に主軸が置かれていました。

作品内では人類滅亡の危機レベルの事件が起きていますが、それを解決するのはイッキたちではありませんでした。


それでも様々なことを経験したイッキは、初期に比べて明らかに成長しており、またメダロットたちと助け合って生きていけるという考えをより強固にしています。


子供向け作品としては異質ではありますが、大人になってみてみると良い意味でモヤモヤさせられる良策です。


一時期は絶版していましたが、kindleで容易に読むことができます。

これを機に、大人買いして一気読みしてみてはいかがでしょうか。

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