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SCP-2639 チャットログ
私はこの場面で何故か涙が出そうになります。
頼りがいのある存在を見ると妙な感動を覚えるのは何故なのでしょうか。
それはさておき、
本記事ではSCP財団に投稿された「SCP-2639(ビデオゲーム・バイオレンス)」
および
該当SCiPにて構成された「機動部隊オメガ-9(スクラブ)」
について解説していきます。
ご意見ご感想は Twitter:@tanshilog まで頂けますとうれしいです。
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解説
SCP-2639
オブジェクトクラス:Keter → Euclid であり、任意の空間に発生する異常現象です。
構成要素はSCP-2639-A・B・Cに分類されています。
特別収容プロトコルは、SCP-2639-CであるPCを隔離室に保管し、アクセスはレベル4職員に制限され、実験は禁止されている程度のシンプルなものです。
このオブジェクトの危険性は次にあげるSCP-2639-A・Bがメインとなります。
Aは異常な兵器と防具で武装した人型実体で、3体が同時に出現します。
この実体群は超人的な身体能力を持ち、攻撃に対する痛みや不快感を一切感じていません。
A個体が破壊されると、付近の別の場所に健全な状態で再出現します。
BはSCP-2639内の影響領域内に複数存在する非実体的なオブジェクトです。
現象発生時から出現しているもののほかに、A個体や非異常性の人間が死亡した場合のみ出現するモノもあります。
これらは地面から浮遊した状態でその場にとどまり、水平軸方向に回転しています。
A個体がBに触れると、オブジェクトは消滅しますが、A個体に対して攻撃力の向上や防御性能の向上といった有益な現象を引き起こします。
このSCPを知らない人でも、ここまでの説明で気付くのではないでしょうか。
SCP-2639はFPSゲームに取り込まれた若者が、そのことに気付かず現実世界で一般人を敵と認識してゲーム(殺人)を繰り返しているという異常現象です。
Aは取り込まれてしまった3人の10代の若者で、Bはマップ上に配置されるアイテムです。
上述の、Aや人間が死亡した場合に現れるBについては、「弾薬パック」と呼ばれています。
つまり、弾が切れれば、そこら辺の人間を撃ち殺すことで補充できるのです。
一般的なFPSゲームを現実世界で再現しているといえるでしょう。
数百回に及び、世界中のいたるところで「マッチ」が行われ、1,500人以上の一般人が殺害されました。
しかし、取り込まれた若者たちにはその自覚は全くありません。
財団職員がゲームを起動している異常なPCを確保、ゲーム内のチャット機能を使って接触するまでは、ディスプレイ上で普通にゲームをしていると認識していました。
また、およそ20年間ゲームを繰り返しており、キーボードやマウス、自分の手を含めて、ディスプレイ以外の風景が全く見えない状況だったにも関わらず、指摘されるまで気付いていませんでした。
その後、財団の管理下の元、A実体確保の為に彼らはゲームを開始します。
そこで3人のうちの一人(女性でゲームの所有者)は事態を察します。
財団から回収班が到着するまで動かないよう指示を受けるも、彼らから見た敵キャラクターは構わず攻撃してきます。
一人がライフが減ってきたことから、敵キャラクターへ反撃してしまいます。
やめるよう言われますが、周囲の敵を倒してしまいました。
そして、彼らは自分たちがどこに現れ、何と戦っていたのかを察します。
敵だと思っていたのは治安維持に当たった警官や兵士であり、弾薬が必要になるたびに殺していたモンスターは逃げ惑う人々だったのです。
事態を把握した彼らは、無自覚に多くの人の命を奪ってしまった罪悪感に耐え切れず、一切の反応を見せないようになります。
財団としては異常性の低下、もしくは消失を想定し、実験に割り当てるリソースを減らし始めました。
担当職員のJ-ブレイナー博士は、それでも根気よく彼らと対話を続けます。
財団職員らしからぬ親身なセリフが印象的です。
[JBREINER]私にも10代の息子が一人いる。だから、なんだ – 理解できるとは言わない。しかし共感している。もしこういう事が息子の身に起きたら、私は何を思うだろうと想像してしまう。そして…分からない。起こり得るという事実が、私を怯えさせる。
SCP-2639 チャットログ
自らもプロ意識に欠けると自覚した心のこもった呼びかけの全文は、ぜひ記事をご覧ください。
そんなこんなで、数か月以上SCP-2639が不活性化していたころ、ブレイナー博士の勤務する施設で収容違反が発生しました。
収容違反したオブジェクトの詳細は不明ですが、極めて攻撃的で、他の職員を殺しまわり、博士も研究室から出られなくなってしまいます。
そこで博士はSCP-2639の三人にチャットで助けを求めます。
初めはいつも通り反応がありませんでしたが、必死の求めに対して、一人、また一人と応答をします。
そして冒頭のセリフへとつながり、彼らの活躍で無事に再収容に成功ました。
機動部隊オメガ-9
状況が終了したのち、3人は財団との、ブレイナー博士との対話を再開しました。
初めに彼らが訊ねたのは、「自分たちが戦ったのは化け物だけで、人間は殺していないか」というものでした。
被害は甚大だったようで、彼らの助けなしでは、もっと死者も増えていただろうとのことですが、
彼らが出現したエリアには、博士と二人の同僚の他には、既に生存者はいなかったと伝えます。
それに安堵した三人は、内々で話し合ったことがあると続けます。
彼らは元の生活に戻ることは半ばあきらめており、いつかこのゲームを起動しているPCが壊れてしまえば、永遠に一人で暗闇の中で過ごすことになるだろうと覚悟していました。
ブレイナー博士も、彼らについての研究は続けているものの救出の見込みは全くなく、そもそもPCと3人の精神的なつながりを示唆する要素すら見つけられていませんでした。
彼らは、やがてその結末が訪れるであろうことを完全に受け入れています。
無自覚とはいえ遊びとして1,500人を超える人々を殺してしまっていたのです。
その贖罪の為に暗闇で一人生き続けたいと。
博士へPCの電源を落としてもらうようお願いすることも考えたそうです。
しかし、ゲームから脱出できない以上は、放っておいても、それはいつか必ず起こる結末だとも理解しています。
そこで彼らが出した結論は、いつか訪れるその結末までの間、彼らの力を使って命を救えるのではないかというものでした。
今の彼らに出来ることは、戦うことだけです。
何しろ、20年以上も戦闘ゲームに明け暮れていた彼らの戦闘力は非常に強大です。
上手く活用すれば、化け物から人の命を救うことも出来るでしょう。
それに対してブレイナー博士は上層部へ打診。
結果、申し出は受け入れられ、SCP-2639は「機動部隊オメガ-9(スクラブ)」として編成されたのです。
彼らは上述の能力を活用し、圧倒的な戦力が必要な状況に即時展開可能な3体の人型実体の戦闘部隊として機能します。
彼らの任務は敵対的かつ攻撃的な異常実体の収容違反対応ですが、上述のように彼らは人を殺傷することを嫌います。
そのため、オメガ-9と財団との合意事項として、攻撃目標となるのは非人間のみとされています。
人数は3人と少ないものの、異常な兵器で武装し、たとえ倒れても何度でも復活してくる彼らは、まさに「圧倒的戦力」といっても差し支えないでしょう。
考察:SCiPからの申し入れを受けたのはなぜか。
SCP-2639の3人は、自身のしてきたことに深い後悔をしており、さらに緊急事態とはいえ、収容違反に対して協力もしてくれたことから、危険性は低いようにも思えます。
しかし、それは状況証拠に過ぎず、彼らがSCiPであることに変わりはありません。
財団の理念としては、確保し収容、保護が出来るのであれば問題なく、現状の無気力な状態の彼らはある意味安全に収容し続けられる状況とも思えます。
しかし、オブジェクトクラスが当初はKeterであったことからも分かるように、彼らの特性上、確実に収容し続けることは非常に困難です。
何しろ、任意の場所に瞬間的に出現できるうえに、人類を遥かに超越した身体能力と兵器で武装しているのです。
財団は人型オブジェクトを人間扱いしません。
必要がなければ最低限の人道的配慮しかしませんし、必要のない要求には応じません。
それでも、財団上層部は彼らの申し入れを受け入れました。
そこから考えられる理由が一つあります。
彼らの贖罪の為に働きたいという強い想いを「収容方法」に取り入れたのです。
このまま放っておけば何をしでかすか分からないうえに、何をされても抑えることが出来ないという不安定な状態に置くくらいなら、彼らの要求通りの目的を与えることで行動をコントロールすることも可能でしょう。
財団がオブジェクトを信用することはありません。
オブジェクトを確保、収容、保護するのが財団の使命です。
そのためには何だってします。
機動部隊として編成したからといって、彼らに気を許したわけではないのです。
戦績
SCP-3797-ARC
SCP-3797-ARCとは、簡単に言うと予知能力以外の全ての能力を持った現実改変実体のことです。
その実体により、CK-クラス:世界再構築シナリオが始まったため、機動部隊オメガ-12(アキレウスの踵)と共闘しました。
オメガ-12は簡単に言うと現実改変者の集まりであり、構成員はSCP-3480から出現した人型実体です。
オメガ-12の任務は、SCP-3480から出現する敵対的な現実改変者の封じ込めであり、現実改変を現実改変によって妨害することが可能です。
SCP-3797-ARCの現実改変能力をオメガ-12が妨害しつつ、オメガ-9の攻撃によって封じ込めを図ったのでしょう。
結果として、両機動部隊は敗北しました。
それだけSCP-3797-ARCの現実改変能力が強力だったのでしょう。
SCP-5000
難解なSCPの一つであり、番号からわかるようにコンテスト作品です。
コンテストテーマが「謎(mystery)」だったため、めでたくノミネートされたSCP-5000は謎だらけです。
しかし、記載の中に明確にSCP-2639が登場します。
SCP-5000は、人間性を異常なものとして認識し自らから排除してしまった財団が、人間性を持つ他の人類に対して宣戦を布告するという絶望的な状況を描いた作品です。
世界オカルト連合などの要注意団体が財団から人類を守ろうと奮闘しますが、SCiPの力を遺憾なく発揮する財団の戦力はすさまじいものがあります。
そんな財団が彼らを活用しないはずがありません。
生存者のコミュニティや財団に敵対する組織を壊滅させるために送り込まれていました。
神出鬼没にして圧倒的な戦力を持つ彼らを止められる存在はいないでしょう。
そう、彼ら自身を除いて。
彼らは、財団から「世界を滅ぼそうとしている怪物と戦ってくれ」と言われて派遣されていましたが、
6度目の派遣でついに嘘だということに気が付き、それ以来あらゆる行動を拒絶するようになりました。
基本的にはFPSゲームの画面として世界を認識している彼らですが、ある程度は正しく世界を見ることができます。
明らかに逃げ惑う人ばかりだったりしたら、人間と戦っているのだということに気づくでしょう。
ちなみに、この世界の財団は、「人間性を持つ」という理由で人型オブジェクトの大半を終了させています。
当然、心は人間であるSCP-2639も人間性を持った立派な人間ですが、強力な戦闘力を持つ彼らを終了させるのは財団にとっても簡単ではありません。
であるならば、心を破壊し活動を止めてしまえばいいのです。
その過程である程度の人間を減らしてくれれば、言うことないでしょうね。
まとめ
結局、彼らはどの記事でも活躍が描かれることはありませんでした。
そもそも、彼らは友達同士で集まってゲームをしていただけのティーンエイジャーであり、ごく普通の少年少女でした。
昼間は学校に通って放課後は友達と遊んでいたのでしょう。
それが気付けばゲームに取り込まれ、肉体を失い、無自覚に人を殺してしまっていたのです。
彼らはもう元の生活に戻れません。
家族と会うことも、友達と遊ぶことも、将来を夢見ることもできないのです。
この現象には被害者しかおらず、誰ひとり得をしていないのです。
ブレイナー博士が生き残った収容違反の件については、SCP-2639とは全く関係ないことです。
考えれば考えるほどに、彼ら自身や彼らに殺されてしまった人々の不幸を思い知らされ、原因が分からない以上他の人が同様の現象に巻き込まれる恐怖から逃れることは出来ません。
そんな中でも、彼らなりに自分にできることを考え、せめてもの贖罪として人の役に立とうとする姿は、健気で尊いものだと感じました。
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コメント
感染しない、復活できる彼らならにくにくしいものを鎮圧できそう
確かにそうなんですよね
ヘッドカノンの集合体であるSCPでは無粋かもですが、現実改変系の敵対存在でなければ対処できそうですよね