ジャパンモダンホラーの金字塔を築いた傑作ホラーゲーム「SIREN」
その続編である「SIREN2」では、前作と世界観を共有しつつ、より洗練されたゲームデザインとして好評を博しました。私も初代より2のほうがプレイする分には好きです。
今回は、SIRENシリーズを象徴する敵キャラクター「屍人」および、本作から新たに登場した「闇人」について徹底解説をしていきます。
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初代サイレンと2の関係
上記の通り、初代と2は同じ世界観を共有しています。別の場所、別の時間での物語ということです。
2の世界には初代の舞台である羽生蛇村が存在し、村が異界に取り込まれた際に現世で発生した土砂災害には、2の登場キャラクターである三沢と沖田が災害派遣されています。
とはいえ、物語に直接絡むことはなく、登場人物のほとんどが羽生蛇村のことも異界のことも知らず、唯一その気配を悟っているのが災害派遣の際に異界の念に触れてしまった三沢のみとなっています。
同じ世界観ではあるものの独立したストーリーを持っており、登場する敵キャラクターも関連性はほとんどありません。
屍人と闇人
本作に登場する敵キャラクターは大きく分けて「屍人」と「闇人」の二種類です。
冒頭から中盤までは屍人のみが登場し、外見的特徴や行動パターン、不死性については初代の屍人とそれほど変わりません。
中盤以降は新たに闇人が登場し、屍人を駆逐したのちにメインの敵キャラクターとして君臨します。
こちらは屍人に比べてより軽快に動き、流暢に日本語を操ります。
屍人も闇人も初代とは全く関係のない起源をもった怪異となります。
それぞれを詳しく解説していきます。
屍霊と闇霊
作中に登場する屍人と闇人は異なる怪異によって人間の死体が変異させられた存在です。しかし大本を辿れば一つの怪異に帰結します。
遥か太古の地球には、現在の生態系とは全く異なる支配種たる「古の者」=「闇霊」がいました。その頃の地球には「光」という要素が一切なかったのですが、ある時発生した「光の洪水」によって闇霊たちは存亡の危機に陥ります。彼らは光のない世界で生まれた存在であり、光に対しての耐性が全くなかったのです。
彼らの多くは門を通って虚無の世界に避難しますが、一部は逃げ遅れてしまいます。門が閉じられてしまった後、逃げ遅れ組はやむを得ず海の底に逃げ込みます。
暗黒の水底といえども完全に光から逃れることはできず、気の遠くなるような年月をかけて少しずつ劣化してしまい、もはや闇霊とは別の種族「屍霊」に変質してしまいました。彼らはひとつに集まることで存在を維持しようとし、「堕慧児(おとしご)」と呼ばれる怪異となっています。
一方、虚無の世界に逃げ込んだ闇霊たちも光の洪水の際に傷付いており、一つに集まることで失った力の補填を行い、地上奪還の機会を虎視眈々と狙うことになります。闇霊が集まった存在は「母胎」と呼ばれます。
こうして同じ起源を持ちつつも、本来の力を持った勢力(闇霊)と、劣化してしまった劣等種(屍霊)と分派してしまったのです。
それぞれ屍霊が取りついた死体が屍人、闇霊が取りついた死体が闇人となります。
さらに起源をたどると「闇那其」と呼ばれる「世界の始まり」と呼べる存在に行きつくのですが、それはまた別の機会に解説します。
屍人
上記の屍霊が人間の死体にとりついた存在です。
見た目や緩慢な動き、ぼそぼそと支離滅裂な言葉を発するのは初代の屍人に酷似していますが、多くの違いが存在します。
まず、厳密には不死身の存在ではありません。ゲーム本編においてダメージが溜まると倒れて動かなくなり、時間経過で再度復活することから不死身にも見えますが、実態は「ダメージを負った闇霊」は倒されており、別の闇霊が死体にとりつくことで活動を再開しているだけです。完全にただの動く死体です。
そのため、周囲の闇霊を倒し切ると復活することはできなくなります。また肉体の改変能力も持たないため、傷を負っても回復させることはできません。
屍霊が死体に取りつく理由は、現在の地球にあふれている光に対抗するための殻にするためです。屍霊は単体では光の強い環境で生存することはできません。懐中電灯の光程度でも長時間当てられると消滅してしまいます。人間の死体に入り込むことで遮光しているのです。
単純に死体の中に入り込んでいるだけのため各機能は人体に由来しており、暗闇では懐中電灯を必要とします。
反面、後述の闇人に比べて光への耐性は強いことが作中の描写から推測できます。
また、人間を襲う理由も初代とは異なります。初代の屍人は100%善意に基づいて攻撃してきていましたが、こちらの屍人は殻の確保のために積極的に攻撃してきます。
屍霊(堕慧児)は母胎と再び一つになりたいという思いを持ちつつも、自らを見捨てた恨みも持っており、複雑な感情に支配されながらも母胎への帰還を目指しています。
そのため、のちに現れる闇霊や闇人にも攻撃を仕掛けますが、劣化の著しい屍霊では勝ち目はなく殲滅されてしまい物語から退場します。その後、せっかく集めた殻も闇霊に鹵獲され闇人として活用されることになります。
闇人
上記の闇霊が人間の死体に取りついた存在です。
屍人とは異なり、機敏に活動し、極めて流暢に日本語を操り、生存者に語り掛けてくることもあります。
この違いは、屍人が単純に死体を動かしているだけなのに対して、闇人は細胞レベルで死体と融合を果たしているためです。彼らは必要に応じて傷を治し、組織を変質させ、目的に応じて身体の形態を変化させることすら可能です。
頻繁に目にするノーマルな闇人ですら、人型は踏襲しているものの服の下は人間とはかけ離れた構造に変異しているとされています。
結果、後述する甲式や乙式のように戦闘に特化し人型を捨てた変異をしたり、全く明かりのない場所でも非常に鮮明な視界を得たりと人体の機能を大きく超えた能力を持ちます。
そのため、屍人に比べて身体操作がより高度になり、言葉を含めた生前の記憶を色濃く引き出すことができるようになりました。視界ジャックをしていると頻繁に独り言をつぶやきますが、生前の思い出や望みを言及していたり生存者への思いを語ったりしています。
不死性についても屍人より上位であり、他の闇霊と生命力を共有しているため、致命傷を受けたとしても単独で肉体を修復し復活することが可能です。
とはいえ屍人の上位互換かというとそうとも言えません。
屍人が光に対するほぼ完全な耐性を獲得できたにも関わらず、闇人は細胞レベルで同化してしまっているため光への耐性は不完全と言わざるを得ません。
彼らは懐中電灯程度の光でも怯み、身体から煙が発生します。それだけで倒れることはないものの日光ともなると話は別で、黒い服で身を包み日傘を差すことで遮光する必要があります。
また不死性も初代の屍人に比べれば脆弱であり、身体を木っ端みじんにされると復活ができないなど、完全な不死身とは程遠いと言わざるを得ません。初代の屍人はそこからでも再生可能ですから。
人間を襲う理由は、表面上は屍人と同じく光への耐性を得るための殻を確保するためですが、屍人とは異なり「地上奪還」という明確な最終目標を持っています。
闇人甲式・乙式
上述の通り、闇人は人間の死体と融合しており、自らの意思で体組織を変質させることができます。
その結果、本編中には戦闘に特化した甲式と乙式と呼ばれる人型を捨てた変異型が登場します。
どちらも共通した能力として正面からの攻撃を完全に無効にできる硬質化能力を持っています。この無効化はすさまじく、鈍器や刃物による攻撃はもちろん、89式小銃より強力な威力を持つ64式小銃による銃撃からもダメージを受けることはありません。少なくとも軽装甲車レベルの防御力を持っています。
現世の理から外れた世界の存在ですので、銃撃に限らずあらゆる攻撃を無効化できるのかも知れません。
とはいえ横からのダメージは普通に入るので、慣れればゲーム中でも苦戦することは少なくなるでしょう。
甲式は自らの周囲を完全に暗闇に包める霧状の物質を放出します。巻き込まれると懐中電灯をもってしても数歩先すら見通せなくなるほどの暗さになります。そのため一方的に攻撃を受けることも珍しくありません。
さらに上半身はかろうじて人型であり両腕があるため、武器の使用が可能という厄介な特徴も持ちます。
作中終盤の三沢闇人はMINIMI軽機関銃を装備していますので非常に厄介な存在です。
乙式は特殊能力は持ちませんが、四つん這いでの移動に特化した形状に変質しているため、非常に素早く移動します。また全高も低くなっているため物陰に潜むことも容易です。
そして何より、造形があまりにも怖いという特徴もあります。奇声を上げながら巨大化した顔面が四つん這いで突撃してくるという恐ろしい光景は、乙式の持つどんな能力よりもプレイヤーを苦しめるでしょう。
補足として、ストーリークリア後に解放されるボーナスステージにも登場します。このステージのプレイアブルキャラは前作主人公で異界ジェノサイダーとなった須田恭也(SDK)です。
SDKは前作ラスト以降の状態で夜見島に召喚されており、赤い水による完全な不死能力と、宇理炎と焔薙を使用可能という最強のスペックを誇ります。
神の武器で武装したSDKに対しては正面からの攻撃無効が通用せず、このステージにおいては単なる雑魚的になり下がります。
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