「怯えてる…怯えてるぞ!!」
「「「いえぇぁあああぁあぁあぁ!!」」」
本記事では色褪せない名作
スターシップ・トゥルーパーズのネタバレ解説を行います。
Twitter:@tanshilog
現代ではいちいちレンタル屋に行かなくても往年の名作がネットで見れて便利な時代ですよね。
本作も例に漏れずAmazon primeで視聴可能です。
タイミングによっては無料で視聴可能ですが、優良だったとしても数百円でレンタルから可能です。
私は好きな作品なので購入しました。
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Amazon primeは無料で見れる作品が非常に多い上に定期的に内容が入れ替わるために飽きることはありません。
このシリーズは「新しい物語を事前情報なしで見るとドキドキして嫌だ」 「誰がいつどうなるのか分からない状態で映画を見るのがストレス」という悩みの助けになるべく書いています。
そんな悩みを持っている人がきっと私以外にもいるでしょう。
どうも歳をとると物語に心動かされるのが億劫になって困りますね。
ご意見ご感想は Twitter:@tanshilog まで頂けますとうれしいです。
スターシップ・トゥルーパーズとは
1997年制作の映画で、監督はポール・バーホーベン氏(ロボコップやトータルリコールの監督)です。
同年はメン・イン・ブラック、エイリアン4、旧劇場版エヴァンゲリオンなどが公開されています。
どんな映画か
登場人物の成長を描き、民主主義崩壊後の全体主義の軍事政権によるユートピアを描き、バグズ(昆虫型異星生物)との戦いと勝利を描いた新兵募集のためのプロパガンダ映画という体裁を取りつつも、第三の壁の外側にいる我々にとっては、全体主義に対する皮肉を込めた作品となっています。
ストーリーの大半は惑星クレンダスというバグズの支配惑星が舞台になります。
大気の素性や気温などが地球と変わらないようで、人類の兵士たちは機密服などは着用していません。
植民地として魅力的な星であることがわかります。
作品の特徴として極端な人体破壊描写が多用されます。
他にも濃厚なラブシーンや男女の裸体などが描写されますので、視聴の際はご注意ください。
どんな世界観か
作中世界は国家が独自に自治を行うのではなく、地球連邦という統一組織がユートピア社会を築き運営しています。
民主主義の崩壊による混乱を軍が武力を持って納め、それ以来、安定した社会が運営されているとされます、
実際、作中では人種・性別・年齢などの差別が一切なく、みんなが平等に活躍しています。
唯一の違いは軍歴の有無のみであり、兵役を務めた市民とそうではない一般民という差があるのみです。
市民には国家のために命をかける義務を負う代わりに選挙権が得られますが、一般民にはそれがありません。
しかし違いといえばその程度で、主人公のジョニー・リコの両親は軍歴のない一般民ですが裕福であり、ジョニーも含め何不自由なく生活ができています。
他にも生まれ持った才能の一つとして超能力者が存在しており、テレパシーや透視能力などを持つものがいます。
地球人類は銀河系に対して植民を始めるほどに技術が発達していますが、その先で遭遇したバグズの領域を侵したために全面戦争が始まってしまっています。
本作は、バグズとの戦争と頭脳階級であるブレインの捕獲までを描いています。
敵の「アラクニドバグズ」とは
昆虫型の異星生物で、人類との友好的なコミュニケーションは取れません。
いくつかのタイプが存在しており、知能レベルや能力も異なります。
戦場であるバグズの生息惑星には、バグズ以外の生物は存在せず、どのように生命を維持しているのかは描かれていません。
人間を殺害しても捕食するシーンはありません。
また、これらの種類が同種なのか、人類という共通の敵を前にして共生しているだけなのかも不明です。
以下に代表的なバグズの種類を挙げます。
ウォーリアー・バグ
最も頻繁かつ大量に見かける種類です。
おおむね蜘蛛のようなシルエットをしていますが、昆虫で言う「頭部」にあたる部位がなく、胴体から縦方向に挟める切断用の大顎が生えています。
戦闘時にはこの顎や鋭く発達した脚を用いて、人間を切断したり滅多刺しにしたりします。
中枢神経を破壊しない限り動き続けるため、脚を損失させるような攻撃を加えたとしても十分な攻撃力を維持します。
殺傷力は極めて高いですが、即死させられることは余り無いため、彼らに殺害されるシーンは非常に凄惨です。
ホッパー・バグ
ウォーリアーの顎と脚を小さくし若干細長くなったようなシルエットをしていますが、最大の特徴として翅を備えており、滑空するように空を飛びます。
滑空時の運動エネルギーを使い人間を切断したり、鋭い脚で人間の体を引っ掛けて連れ去って殺害しようとします。
数はそこまで多く無いようで、作中では谷間を移動している際と、要塞防衛シーンでのみ登場します。
タンカー・バグ
巨大なフンコロガシのような丸みを帯びた甲虫のようなシルエットで、口から腐食生の液体を噴出します。
火炎放射のようにも見えますが、攻撃を受けた腕が溶け落ちる描写から炎では無いようです。
空爆後の掃討作戦で登場しウォーリアーと共闘しますが、背部の装甲を小銃の連射で破壊されたのちに手榴弾を投げ込まれて撃破されます。
大きさの割には背後を突かれると弱いという弱点が目立ちます。
プラズマ・バグ
非常に巨大であり、丸みの強いキリギリスのようなシルエットをしています。
体内で生成したプラズマを腹部から放射するというトンデモないバグズで、この射撃によって宇宙船を破壊したり、小惑星の軌道を変えて地球に直接攻撃を仕掛けたりすることができます。
プラズマの威力は非常に強力ではありますが、本種の表皮は他の種と同じように人類の火器で破壊可能であり、発射直前のプラズマが最も溜まっているタイミングで誘導弾などの爆発性の武器で攻撃すると誘爆します。
当初は大した威力ではないように偽っていた(あるいは情報部の単純なミスの)ようですが、実際には戦艦を一撃で破壊できるほどの高威力を誇ります。
ブレイン・バグ
見た目はピンク色のブヨブヨした肉の塊で、あえて形容するなら血を吸った後のダニでしょうか。
バグズの頭脳階級とされる種で、他のバグズを統制しているようです。
そのため、知能の低いウォーリアーをはじめとしたバグズが人類に対して効果的に総攻撃を仕掛けることができていました。
他にも、人間の頭部を貫通できるストロー状の口器を持ち、脳を吸い取ることで知識や記憶などを得たり、人間を思い通りに動かすことができます。
中盤の要塞からの救難信号は行動を支配された無線手が送っており、人類軍をそこに集めることで要塞をキルゾーンとしていました。
本作のボス的存在で、ブレインの一個体を捕獲するのが作中の最後の作戦となります。
捕獲後はその生態を調べ戦いを勝利に導くために、非常に痛々しい拷問まがいの実験を受けている様子が描写されます。
なお、シリーズ3作目において、わざと捕虜になることでテレパシーでスパイ活動をしていたことや、超能力で人間の頭を直接攻撃することができることが判明しました。
超能力を持ってはいるようですが、自前の攻撃手段や移動手段は皆無に等しく、表皮も柔らかいので尖ったものを使えば研究者の腕力でも傷つけることが可能です。
主な登場人物と末路
私のように、誰がどうなるのかが気になってドキドキしてしまうし、それが嫌で新しい作品を見ようとも思えないという方向けに、誰がどのような目に遭って、最終的にどうなるのかまでを紹介します。
ジョニー・リコ(あらすじ含む)
本作の主人公です。
彼の視点で語られるシーンが大半のため、ここであらすじを含めて解説します。
一般民の両親をもち裕福な家庭で育った青年です。
学生時代に親友のカール、恋人のカルメンと一緒に青春時代を過ごしていました。
カルメンとカールが軍に入隊するため、両親の反対を振り切ってジョニーも軍への入隊をします。
超能力の素質のあったカールが諜報部へ、成績が優秀なカルメンはパイロット候補生となりました。
しかしジョニーは成績も良くなければ超能力も持っていなかったため、健康であれば誰もが入れる機動歩兵隊として採用されました。
ちなみに、カルメンと付き合っていたにも関わらずジョニーに思いを寄せるディジーという女性がおり、彼女はジョニーを追って歩兵隊に入隊を志願します。
教育隊ではズィムという鬼教官の元で訓練を受けますが、優秀さが認められ教育隊内の分隊長に任命されます。
順調に同期とも絆を深め、最初は険悪だったエースという男とも強い友情を築きます。
しかし、カルメンは配属先で別の男ができたようでジョニーはビデオレターで振られてしまいました。
失意のジョニーを同期たちは慰めますが、さらに悲劇が襲います。
訓練の終盤、実弾戦闘訓練が実施されました。
致死性のない光線を発射してくるダミー人形を相手に実弾で戦闘行動をする訓練なのですが、その際にヘルメットの不調を訴えた同期のブレッケンリッジに対してヘルメットを見せるよう脱がせてしまったのです。
その時に運悪く一人の女性兵士が光線で撃たれ、そのショックで小銃を発砲。
ブレッケンリッジの頭部に被弾してしまったのです。
結果、ブレッケンリッジは死亡、暴発させてしまった女性も依頼除隊し、ジョニーの判断ミスで二人の兵士を失うことになってしまいました。
ジョニーも自分のせいで同期を死に追いやった責任に押し潰され、鞭打ちの刑罰を受けたのちに除隊を申し出ました。
しかし、彼の悲劇はまだまだ留まることを知りません。
新兵募集のプロパガンダ映画であるため、どこまでもドラマチックに構成されるのです。
プラズマ・バグによって軌道をずらされた小惑星が地球に飛来。ジョニーの故郷であるブエノスアイレスが壊滅してしまいました。
基地のゲートを出る直前にその報せを聞いた彼は、指揮官に除隊の取り消しを訴えて原隊に復帰します。
初陣ではバグズの待ち伏せ攻撃に遭い、1時間で10万人、総数30万人以上が戦死するという壊滅的な敗北を遂げ、ジョニーも太ももを大顎で貫通されるという重傷を負いながらも生還します。
しかし医療技術も発達しているようで、脚がちぎれかかるような大穴が空いても数日で完治するようです。
その後、高校時代の恩師のラズチャックが隊長を務めるエリート部隊「ラズチャック愚連隊」にディズ、エースと共に配属されます。
大敗を喫した作戦の後に軍の総司令官が代わり、バグズの主星であるクレンダス星の周囲の惑星から制圧し、バグズの支配領域を少しずつ狭めていくことになりました。
ジョニーたちもその作戦に参加します。
ラズチャック愚連隊での初戦はジョニーの活躍もあって勝利し、その戦勝パーティーでジョニーとディズは結ばれます。
しかしパーティーの最中、近くの惑星Pにある要塞からの救難信号を受け、ラズチャック愚連隊は出撃します。
10分後に出撃だと告げにきたラズチャックが、ジョニーとディズがお楽しみ中であることを知ると「20分後に出撃だ」と訂正するシーンは好きです。20分でどうしろっていうんだとは思いますが、それだけ切羽詰まった状態なのでしょう。
しかし、この救難信号は前述のブレインが仕組んだ罠であり、要塞にたどり着いたところで生存者は要塞指揮官一人で壊滅状態。
そこに控えめに言って絶望的な数のバグズが押し寄せてきます。
要塞防衛線で多数の兵士が死亡、ラズチャックもバグズの攻撃で致命傷を受け、ジョニーに命じて自分を撃ち殺させました。
救援要請に応じてカルメンと新しい恋人のザンダーが操縦する救助機がやってきましたが、脱出の間際にディズも腹部を貫かれる致命傷を負います。
脱出はできましたが、機内でディズは苦しみもがきジョニーの名前を叫びながら死亡します。
女優さんの演技が迫真で、ジョニー役の俳優さんも熱の入った悲しい演技をする名シーンだと思います。
基地に帰還後、戦死者の簡易的な葬儀が終わり、愚連隊はジョニーを隊長として再編成されます。
そこに情報部で活躍し大佐にまで昇格していたカールが現れ、ジョニーを中尉に昇格させてブレイン・バグの捕獲任務を与えます。
惑星Pに再度降下し、ブレインの捜索を始めます。
バグズも黙っておらず、軌道上の宇宙船をプラズマで攻撃し、カルメンとザンダーの搭乗していた宇宙船が被弾します。
二人は脱出艇で宇宙船から離脱しますが、制御を失い惑星Pへ墜落。
不時着した場所はバグズの巣の中であり、さらにブレインが隠れていた場所だったのです。
ジョニーの部隊は墜落中の脱出艇の救難無線を受信し、捜索に向かいました。
その間、バグズに包囲されたカルメンとザンダーは果敢に応戦しますが、ウォーリアーに取り押さえられてしまいます。
不思議なことに二人の体を脚で貫通させて地面に縫い付けて動けなくした以外は、それ以上に傷つけようとはしてきません。
そこにブレインがゆっくりと現れます。
ザンダーはブレインに脳を吸い取られて死亡。
カルメンもあわやというところでジョニーたちが間に合います。
ジョニーは爆弾を手にしブレインを脅します。
ブレインもそれが何なのか分かるようで、自分が安全な場所に行くまで他のウォーリアーに攻撃を控えさせます。
そして、自分が奥へ引っ込んでいったタイミングで双方の攻撃が再開しました。
傷を負った救助隊の一人が、爆弾を手に時間稼ぎをしてくれたおかげで、脱出することができました。
そして巣穴から地上に出てみると、兵士たちが大騒ぎしています。
ジョニーたちが発見したブレインの位置情報をもとに、他の部隊が捕獲に成功。
地上に引き摺り出していたのです。
そこに現れたのが超能力をもつカール。
ブレインの思考を読み取ると、感じたのは怯え。
そして、この記事冒頭のセリフを叫ぶのです。
その後、ナレーションがブレインに対する研究状況を紹介し、自然な流れで新兵募集の案内が流れます。
ここで、本作がすべて新兵募集のためのプロパガンダ映画だったということがわかるのです。
「宇宙船はあります。高性能兵器もあります。あとは兵士だけ。」
「そう、あなたもカルメン艦長やエース二等兵、ジョニー隊長のように共に戦い、晴れて栄光ある市民になりましょう!」
「そして勝利する!」
ディジー・フロレンス
上述の通り、ジョニーに首ったけになっている女性です。
学生時代から猛アピールをしていましたが、カルメン一筋のジョニーからは鬱陶しがられることはあっても振り向いてもらえることはありませんでした。
それでも一途にジョニーを思い続け、開拓地に配属になったにも関わらずジョニーのいる教育隊への転属を申し出て受理されています。
教官のズィムに、お前は歩兵としてふさわしいのかと問われた際は何も言わずに格闘戦を仕掛けるほどに男前です。
実力も確かで、ズィムに一撃を入れることに成功しました。
その後は反撃を受けて失神させられましたが、学校を出たばかりの新人が教官に本気を出させるというのはすごいことです。
訓練期間中も熱心にアプローチをかけますが、姑息な手段は使わずに正攻法で攻め続けてきます。
ジョニーがカルメンに振られた時ですら、チャンスというよりはジョニーの落ち込みの方に心を痛めているようなまともな女性です。
ジョニーは最初は邪険にしますが、カルメンに振られた後の傷心を癒してくれたのと、困難な状況においても常に隣にいてくれたことから、だんだんと女性として意識していきます。
そして、ラズチャック愚連隊に配属されてからの初陣の後のパーティーで、晴れて二人は結ばれることになるのです。
ちなみに、直前までジョニーは覚悟が決まっておらず、ダンスの誘いを無下に断ってしまい、いつも通りディズをがっかりさせていましたが、ラズチャックからの「女の誘いは断るな」という忠告を受けて決心が固まります。
ジョニーからダンスを誘われ、エースのロマンチックなバイオリンの演奏もあり二人は愛し合うことになるのでした。
しかし、その幸せは長くは続かず、惑星Pで彼女は腹部に重傷を受けてしまい、脱出艇の中でジョニーに抱きしめられながら失血性ショックを起こして死亡してしまいます。
物語冒頭から一途にジョニーを思い続け、機動歩兵隊まで追いかけてくるというのは、いささかヤンデレ気質を感じますが、手段としては正攻法のみであり、最終的には想いがかなって恋仲になれるというまさにヒロインといったキャラクターです。
カルメンよりも魅力的に感じる人も多いのではないでしょうか。
カルメン・イバネス
ジョニー、カールと同級生であり、ジョニーとは学生時代から恋人関係にありました。
男心をくすぐるのが上手なようで、ジョニーからのラブラブなアプローチも(好意的に見れば)小悪魔的に受け流したり、ジョニーの恋敵になるザンダーに対して無意識に色目を使ったりします。
というよりは、ジョニーに対しての恋愛感情は学生の時点でどこまで本気だったのか疑わしい描写もありますので、すでに彼には見切りを付けつつあったのかもしれませんね。
成績は優秀で、軍に入隊後は宇宙船パイロットに配属され、同僚にカルメンの操縦は嫌だと言われるほどには操縦技術も卓越していたようです。
ジョニーが機動歩兵隊の訓練で扱かれている間に、エリートらしく綺麗な宇宙船の中で穏やかな艦長や自分に好意を持っているザンダーたちに囲まれて過ごしていました。
そういう生活をしていると、だんだんとジョニーの存在が邪魔になってきたようです。
入隊当初から続けていたビデオレターで仕事に集中したいからと一方的に別れを切り出して「これからも友達でいてくれるよね、また手紙ちょうだい」と勝手なことを宣ってくれたのです。
そのビデオを見ていたジョニーは当然落ち込み、周りの同期も気を使い、エースに至っては「勝手な女だ」と評しています。
かと思えばザンダーとは恋仲になっていたりと、なかなかに魔性の女性です。
ジョニーの初陣で、彼が戦死したという誤情報を見た際にはショックを受けていたことから、大切な存在なのは変わらないようですが、それはおそらく友人としてなのでしょう。
その後も、救助艇のパイロットとして再会してはジョニーに無碍に扱われますが、終盤で脱出艇が墜落しブレインをはじめとしたバグズに包囲された際はジョニーに助けられました。
ラストでジョニー、カールに対して「私たち三人が集まれば怖いものなしね」と学生の頃のようなことを言いますが、ジョニーは無言、カールは捕まえたブレインとその先に待つであろう終戦のことについてコメントします。
おそらく、ジョニーとカールは兵士として国に命をささげるようになったものの、カルメンだけは彼らとは別の物の見方をしているのでしょう。
肩をバグズの脚で貫かれるという重傷を負ってはいますが、最後まで生存します。
カール・ジェンキンス
色白の優男といった風貌ですが、強力な力を持った超能力者です。
軍に入隊する際にその才能が認められ情報部に配属されて以降、出番はほとんどありません。
バグズに対する研究も行っているようで、バグズの生命力の高さを実演を通して解説してくれたり、ブレインの存在を示唆したりします。
目立った活躍としては終盤にブレインの思考を読み取ることくらいですが、階級が大佐と凄まじい勢いで昇進しています。
ジョニーは中尉で、ジョニーの同期であるエースは二等兵のままです。
戦時昇進というか、上位者が戦死していく中で昇進が早まるケースは往々にしてありますが、前線に出ない情報部ではそれほど起こらない現象でしょう。
つまり、カールは凄まじく優秀であることがわかります。
エース・リビー
ジョニーの同期で、相棒として活躍する人物です。
最初の登場時から自分が分隊長になると豪語し、食堂の列では順番抜かしをしてジョニーに嗜められたりと問題児ポジションのキャラクターかと思わせられますが、実際はその逆。
ジョニーにとってはプラスになる面しかなく、お互いに切磋琢磨し、ジョニーの実力を認めてからは献身的に彼をサポートします。
訓練中は投げナイフでジョニーに負けた際に「ボタンを押せばミサイルが飛ぶのに投げナイフなんて時代遅れだ」と教官のズィムに訴えたところ、手を差し出させられて投げナイフで手と壁を縫い付けられたりと痛い目にも遭っています。
しかし、彼も実力がないわけでは決してなく、ジョニーが実弾訓練中に部下を死なせてしまった際は、次の分隊長としてエースが任命されています。
ジョニーが復帰した後の初戦でもエースが分隊長の任を与えられていましたが、パニックに陥ってしまい射撃の指示が出せず、隣にいたジョニーが攻撃の指示を出しました。
その際は「俺に分隊長は無理だ」と勝手にジョニーに指揮任務を依頼しています。
その後部隊は壊滅したものの彼は無傷で生存し、ジョニー、ディズと一緒にラズチャック愚連隊に配属されます。
ジョニーの隣で補佐を続け、カルメンの救出任務の際は「もう死んでる、無駄だよ」と諭しながらも捜索を強行するジョニーを支え続けました。
結局、目立った負傷もなく幾つもの戦場を掻い潜った彼は、もしかしたらジョニーよりも優秀な兵士なのかもしれません。
ザンダー
ジョニーたちとは別の学校出身のようで、学生時代にラグビーの試合で対戦していました。
その頃からカルメンに気が合ったようで、学校のパーティーでもアプローチをかけ、ジョニーと喧嘩になりかけていました。
カルメンも積極的に拒絶しない程度にはいい男で、優秀な人だったようです。
カルメンより早く軍に入隊した後は宇宙船パイロットに配属され、カルメンの入隊を知ったザンダーは人事的に手を回してカルメンの教官となるよう仕向けました。
ジョニーとはとことん反りが合わず、会えば殴り合いの喧嘩となる程です。
しかし、職務には忠実であり、惑星Pからの退却支援ではカルメンと共に駆けつけ、自らライフルを手に歩兵の退却を支えました。
終盤の宇宙船脱出後もカルメンを守りながら果敢に戦い、ブレインに脳を吸い取られる直前においても「いつか俺みたいな奴がお前も他のバグズも殺す」と言い捨て唾を吹きかけるほどには肝っ玉も座っています。
最期の瞬間まで恐怖に支配されることなく、兵士として勇敢に自分の運命に立ち向かいました。
ブレインに頭蓋を貫通され、脳を吸い出されて死亡します。
ズィム
初登場時はジョニーの配属された機動歩兵隊の訓練教官でした。
まさに鬼教官と呼ぶのにふさわしく、発達した医療技術があるためか、訓練生の腕を開放骨折させたり、投げナイフで手のひらと壁を縫い付けたりと暴力的な指導を行うことも辞さない性格です。
しかし、部下のことはよく見ており、例えば序盤にジョニーとエースが食堂の列で揉めた際に、よく見ると二人の後ろでズィムが事の推移を見守っています。
厳しい眼差しを向けていますが、大事になりそうにない雰囲気になると、何も言わずにその場を離れて行きました。
厳しさの理由は、機動歩兵の能力の維持、ひいては歩兵になる各個人の命を守ることに責任を負っているからです。
彼が優しく甘く接する分、実戦において兵士が命を落とすきっかけになることが増える可能性があるのです。
彼に腕を折られ、ナイフで刺されているうちに学ぶべきことを学べば、その分救える命が増えるのです。
本来の彼は思いやりに満ちていて、味方のために命を張れる男なのです。
例えば、ジョニーが辞表を提出した後、故郷がバグズに破壊されたために辞表を取り消したいと訴えてきた際に、ズィムの上官の目配せがあった直後に「俺にはこの辞表が貴様のものには見えないな」と言って破り捨てたりします。
極め付けなのが、ブエノスアイレス壊滅後の総攻撃に参加したいと上官に志願した際に、「お前の仕事は訓練教官だ。戦場に行きたいなら一兵卒に戻ってやり直せ。わかったな」と言われ、悔しそうに「よくわかりました」と返事をするのです。
志願が拒否され諦めて返事をしたのかと思ったら、まさかの本当に軍に入り直して戦場に赴いていたのです。
それが分かるのは終盤も終盤、ブレインを捕獲したのがズィムであること、そしてズィムが中尉になったジョニーに対して「今は二等兵です」と答えることで明かされるのです。
ズィムをはじめとしたジョニーの上官たちは基本的に良い人ばかりです。
部下を死に追いやったにも関わらず、連隊内処分という内々で処理できる罰則で済ませたり、故郷を失ったジョニーの除隊申請を取り消したり、戦場では部下を守るために自分の命を犠牲にすることを厭わなかったりと、いわゆる「嫌な上司」というのがほとんど出てきません。
ラズチャック
初登場時はジョニーたちが通う学校の教師でした。
左腕が欠損しており後退した頭髪と鋭い眼光が特徴で、歴史と公民を混ぜたような社会科の授業を行なっていました。
授業中にカルメンとよそ事をしているジョニーを叱ったり、他の生徒に質問を投げかけたりと、いわゆる普通の先生です。
しかし、次に登場した時はジョニーたちが再配置されたラズチャック紅蓮隊の隊長となっていました。
もともと軍人であり、全面戦争に伴って軍に復帰したようです。
失った左腕には高性能義手を取り付け「死ぬまで戦え!戦わない奴は俺が殺す!」と部下に対して発破をかける鬼軍曹といった人物です。
しかし、部隊員からの評判はすこぶる良く、配属されたてのエースが「この部隊の隊長はとんでもない鬼なんだってな」と軽口を叩いた途端に部隊員に顔面を殴られたほどです。
その場にいた全員が命の恩人だと言い、実際のところは非常に部下思いの軍人だったのです。
ジョニーたちが配属されてからの初陣では、ホッパー・バグに攫われた通信兵を狙撃で殺しています。
既に致命傷を負い、助ける手立てが無い以上、嬲り殺しにされる苦しみから救うには即死させるしか無いからです。
そして「俺が同じようになったら迷わず殺せ」と周囲の部下に言い放ちます。
その後、ジョニーの手柄で勝利した後のパーティーでは、本部からビールや食料、遊具などを取り寄せ、部下に楽しむよう命じます。
ディジーの誘いを断るジョニーに対して、大人の男として忠告を与えたり、二人がベッドでお楽しみだと察すれば出発時刻を(ほんの少しだけ)伸ばしてくれたりと、立場を越えて部下に対してできる限りの思いやりをかけてくれます。
そんな頼りになるラズチャックですが、惑星Pの要塞での救出作戦時に命を落としてしまいます。
泣き言を言う要塞指揮官を殴り飛ばしたり、襲撃後は率先してバグズに攻撃を加えていたのですが、地中を進んできたバグズによって地面に引き摺り込まれ、下半身を切り刻まれてしまいました。
ジョニーたちによってなんとか引き出されたものの両足を根本から切断されるという致命傷を負っており「おい、分かっているな…!」と自分を撃つように求めます。
そしてジョニーによって苦しみから解放される形で死亡しました。
解説
初めに書いた通り、本作は全体主義国家が新兵を募集するために制作したプロパガンダ映画(作中劇)という体裁をとっています。
作中の世界はよくできており、国民のほとんどが自分の住んでいる社会がユートピアだと信じて疑っていません。
確かに人種や性別による差別は全くありません。シャワーですら男女共同で、裸で入浴することに対して男性も女性も疑問を抱いていません。
男女の肉体的な能力差の激しい兵士という職業において、完全な男女平等が成し遂げられているということは、文字通り誰もが等しく活躍できる社会として機能しているのでしょう。
また、唯一の区別のポイントである軍歴の有無による市民と一般民の差でさえ、ジョニーの家族を見れば一般民であっても裕福な生活は可能であるということが分かります。選挙権が無い以外は平等なのでしょう。
しかし、実際の作中世界はディストピアであることが我々視聴者には分かります。
まず、学校では民主主義の不完全さにフォーカスした教育が行われ、民主主義の崩壊後の混乱は軍の武力によって鎮圧され、今も軍によって安定した社会が運営されていると教育されます。
暴力では何も解決しない、話し合いで物事は解決すべきと考えている人もいますが、どうやら少数派なようで、どんな理想論や議論も力の前では無力であり、物事を解決する最も有効な方法は圧倒的な武力であるとの考えが一般的です。
話し合いで物事を解決すべきと言う考え方は甘ったれた戯言だとラズチャックは言いました。
上述のように個別で見たときには魅力的で良い人たちである彼らも、根本の思想はこの野蛮な考え方に染まっているのです。
個人としては良い人たちなのに、あつまると妙な特徴を示すのはどの世界でも同じことですが。
いずれにせよ、その思想の結果がバグズとの戦争であり、ことの発端は人類がバグズの生存領域を侵略したのがきっかけです。
宇宙全体を開拓している人類にとって、バグズの住む惑星は人類が自然呼吸できる上に軽装で生存できる気候である非常に条件の良い惑星なので植民地にしたくなるのも頷けます。
そして一般的な解決策であると考えられている圧倒的な武力をバグズに叩き込んだのでしょう、
バグズにとってみれば防衛戦争であり、人類は侵略者なのです。
ただ、人類にとっての誤算だったのは、バグズが単なる大きな虫ではなく、高度な知能と高い攻撃力を持っていることでした。
結果として戦争は膠着状態になり、人類の多くが戦争によって死亡します。
すると、この社会ではバグズの凶悪性と危険性にフォーカスして情報操作をするのです。
作中でしばしば挿入される連邦放送と呼ばれるメディア映像は、バグズによる人類側の被害と、バグズの効果的な殺し方についての情報に偏っています。
バグズに対する敵愾心を植えつけ、軍に入って虫を殺すよう印象をコントロールしているのです。
すると、開戦の原因が人類にあったとしてもそんなことは既に関係なく、それを指摘されたとしても「俺たちの家族を殺した虫どもを殺すだけだ」という考え方になるのです。
そして、幼少から全体主義的な教育を施された国民はそれに違和感を覚えることはできません。
作中で命懸けで戦う兵士が多くいて、上官連中がみんないい人なのは、誰もがこの戦争の意義を信じているからです。
死の恐怖は感じパニックになる兵士はいても、戦争そのものを否定的に考えている兵士は一人も登場しません。
まあプロパガンダ映画なのだから当然でしょう。
我々とは異なる歴史を歩んできた異常ともいえる世界ですが、これから先に同じ道を歩まないとは限らないのです。
歴史とは勝者が示すものだと言われることがありますが、まさに言い得て妙で、敗者の記録や思いは残されないため、知りようが無いのです。
本作は全体主義やナチズムに対するアンチテーゼとしての作品として制作されているそうです。
明らかにおかしな思想をこれ見よがしに賛美することでナチズムを皮肉っているのですが、ワシントンポスト紙ではナチズムに賛同する映画だと批評されてしまったそうです。
現代社会、ひいては同じ主義思想の社会で生きている人々ですら、意図したものとは異なる受け取られ方をしてしまうのです。しかしそれが悪いことだとは思いません。
私とあなたが別人であり別のことを考えているのだから、むしろ自然なことです。
問題なのはその認識の齟齬から争いが起こりうることでしょう。
それを回避するためにはお互いをよく理解し合うことが重要で、その第一歩が話し合いなのです。
そして、もし話し合いでは何も解決しないという考えに支配されてしまえば、出てくるのは暴力であり、権力や思想はどんどんと偏っていくのでしょう。
流し見しているとただのB級SF映画なのですが、込められたメッセージを理解して深く見直すことで得られることが多くあるのが、スターシップ・トゥルーパーズという作品だと思います。
ご意見ご感想は Twitter:@tanshilog まで頂けますとうれしいです。
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