多種多様な悪人や異常者が溢れている「ザ・ファブル」という作品。
主人公の「佐藤明」が圧倒的強者のため霞みがちですが、一般的に強キャラに分類されるであろうキャラクターが何人か存在します。
その中の1人、登場人物の中では比較的情に厚くも、殺し屋としては一流の実力を誇る「鈴木」。
彼の心構えや技術は一流ですが、使用する武器も極めて特殊なものです。
この記事では、鈴木がメインで使用する
Mk.22特殊拳銃、通称「ハッシュパピー」
について解説します。
ご意見ご感想は Twitter:@tanshilog まで頂けますとうれしいです。
実写は実写で面白いのがファブルの魅力の一つです。
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鈴木とは
佐藤明および洋子と敵対したものの、のちに奇妙な共闘関係になるキャラクターで、ひとえに魅力的な人物といえます。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
ハッシュパピーについて
本題に入りまして、鈴木の使用する特徴的な拳銃が「Mk.22 Mod 0ハッシュパピー」です。
本銃はS&W(スミスアンドウェッソン)という有名な銃器メーカーが開発販売していたM39という拳銃をベースにしたカスタムモデルです。
カスタムモデルといってもメーカーが作ったものですので、製品ラインナップの一つです。
とはいえ、いかに銃器大国の米国でも本銃は一般人が購入することはできません。
Mk.22は米海軍の特殊部隊「ネイビー・シールズ」の要望に基づき開発された
暗殺用拳銃
なのです。
Mk.22 Mod 0 ハッシュパピーの特徴
上述のとおり出自が特殊な、まさしく特殊拳銃ではありますが、何がオリジナルと変わっているのでしょう。
強力な攻撃力を持つ銃という武器の待つ最大のデメリットは銃声が響くことです。
装薬が炸裂することで、ほぼ全ての銃弾は似たような発砲音とともに打ち出されます。
Mk.22は特殊部隊が隠密行動を行うために作られた、銃声の抑制に重きを置いたカスタムモデルとなっています。
具体的に解説します。
サイレンサーの装備が前提となっている。
銃声の大部分は銃口から放出されます。
それを軽減させるには、銃口に音を軽減させる仕組みを追加するのが最も効果的です。
そして開発され、現在まで進化し続けているのがサイレンサー(サプレッサー)です。
銃声の仕組みとしては、装薬が燃焼する際に発生した高圧ガスが、銃口から放出し解放されることで急減圧され、その際に高音の破裂音が発生します。
つまり、銃声を軽減するには、発射ガスの減圧をゆっくりにしてあげればいいのです。
サイレンサーの内部は減音材(バッファ)で仕切られた減音室が複数あり、そこを発射ガスが通ることで分散され、減圧を緩やかにすることで銃声を軽減します。
そのため、サイレンサーは筒状の形状をしています。
この装置により、発砲に伴う銃声は軽減されます。
とはいえ、当時の技術ではサイレンサーの性能に限界があり、減音機能が期待できるのは22発までである上に、サイレンサーの筒自体が大きいため、M39に比べて照星と照門が上部に延長されたアジャスタブルサイトが採用されています。
サイレンサーの使用が前提となっている拳銃ですね。
スライド・ストップ機能が搭載されている。
銃の構造上、最も大音量が鳴るのは常時解放されている銃口から前方に対してですが、自動拳銃は排莢する都合、スライドやそれに類する部位が前後し開口します。
当然そこからも銃声は漏れます。
ここからの音声はサイレンサーでは抑制できません。
ではどうしたらいいのか。
答えは簡単、排莢のために動作する部位を機械的に強制停止させてしまえばいいのです。
そのための機構が「スライドストップ」と呼ばれる部品です。
ガス圧によるブローバックを無理やり停止させることにより、消音効果を高めます。
これによるデメリットは、自動式の最大の利点である連射ができなくなることです。
排莢すると同時に次弾を薬室に装填するという動作をスライドのブローバックにより行うのが自動式です。
その動作が止まる以上、発砲後は手動でスライドを前後して、空薬莢を排出して次弾を給填する必要がありますので、引き金を引くだけの連射をすることはできません。
しかし、こちらの機能は解除することも可能ですので、連射が全くできないわけではありません。
あくまで部品によって機械的にスライドの往復を抑えているだけですから。
専用の亜音速弾が使われている。
銃声を構成する要素は、上述の装薬が燃焼することによる高圧ガスの急減圧による爆発音と、銃弾が音速を超えることにより発生する衝撃波(ソニックブーム)によるものの二つに大別されます。
発射ガスによる音はサイレンサーとスライドストップにより大きく減退することができました。
しかし、銃口初速が音速を超えることによるソニックブームはサイレンサーでは低減できません。
ではどうするか。
こちらも簡単、縦断の速度を抑えればいいのです。
そこで同時開発採用されたのが、亜音速特殊弾Mk.144 Mod0です。
銃口初速が340m /秒を下回れば衝撃波は発生しません。
亜音速弾を使用することにより、銃弾の威力と射程は低下しますが、バイタルゾーンを狙えば射殺は十分に可能です。
サイレンサーの消音効果はフィクションほどではない。
映画などのフィクションではサイレンサーを装着した中では敵に気づかれることなく発砲が可能ですが、実際にはそこまでうまくいくことは稀です。
特に小銃(アサルトライフル)では、サイレンサーを使用しても映画やアニメのような劇的な効果はありません。
ライフル弾の場合は135db程度の音量まで抑えられますが、これは飛行機の離陸音と同程度です。
発砲音は瞬間的なものなので実感的には異なりますが、そもそものライフルの発砲音が大きいため、減音したとしても、それなりの大音量となります。
とはいえ、屋内戦闘(MOUT)などでは射手の鼓膜を保護するという点では効果的であり、米海兵隊では2020年ごろからサイレンサーの普及に力を入れているそうです。
拳銃であっても、一般的な9mm弾では初速が音速を超えるため、サイレンサーでは抑制できない衝撃波(ソニックブーム)による空気を裂く音がするため、完全な減音はできません。
さらに余談として
銃声を抑える装置について、かつてはサイレンサー(Silencer:沈黙するもの)呼ばれていましたが、「消音してないじゃん、減音じゃん」という声が高まりサプレッサー(Suppressor:抑制するもの)という呼称がミリタリー界隈では一般的になってきました。
しかし米国ではサイレンサーの呼称が法的には用いられており、日本では「消音器」として規定されています。
英国ではサウンド・モデレーターと呼ばれているそうですが、ウィキペディアで調べるまで知りませんでした。
さらにさらに余談として
銃声を抑えるのがサウンド・サプレッサー、発射炎(マズルフラッシュ)を抑えるのがフラッシュ・サプレッサーと細分化されています。
フラッシュサプレッサーはフラッシュハイダーとも呼ばれ、自衛隊では消炎制退器とも呼ばれます。
小銃の先っぽにあるカゴ状だったりの部品ですね。
どちらの機能も発砲の痕跡を減らし、第三者(敵)に射手の位置の露見を防ぐのが目的です。
しかし私はサイレンサーと呼んでいた世代ですので、本記事ではサイレンサーで統一します。
その他の消音機構
旧ソ連が開発したPSS消音拳銃という風変わりな拳銃が存在します。
こちらはサイレンサーがなくても、ほぼ完全な消音が可能な特殊拳銃です。
なぜ消音できるのかというと、弾薬に秘密があります。
7.62mm×42mm弾という独自口径の弾薬を使いますが、特殊なのは口径だけではありません。
この銃弾は、薬莢の中にピストンが備えられており、装薬が炸裂するとピストンが押し出されて弾頭が射出されるという仕組みです。
発砲によるガスはピストン内部に閉じ込められるため、銃声が発生しないというカラクリですね。
勘の良い方はわかるでしょうが、威力はかなり落ちます。
とはいえ、銃撃戦に使用する拳銃ではなく暗殺に特化したものであるため、短射程低威力はさしたる問題ではありません。
本中はその性格上、長らく公表されることはありませんでしたが、旧ソ連のKGB(現:FSB)の工作員がCIA局員に逮捕された際に存在が露見しました。
ちなみに現在も配備が継続しているとのことです。何に使っているんでしょうね?
まとめ
ザ・ファブルは森の中でのサバイバルのような特殊な知識もかなり正確な考証で描写します。
その正確さ、マニアックさはミリタリー描写についても変わりありません。
その一つが、このMk22 Mod0 ハッシュパピーです。
我々ミリタリーマニアの中ではそれほど珍しい銃ではありませんでしたが、本作以外に取り上げられたのはメタルギアシリーズ以外には知りません。
そういった意味でも、本作の面白さが伝われば良いなと思います。
実写は実写で面白いのがファブルの魅力の一つです。
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