悪人の魂が無生物に宿り、人々の命を奪っていく映画というのはホラーの定番とも言えます。
例えば、チャイルド・プレイはその筆頭ですね。
本記事で取り上げる
ウィリーズ・ワンダーランド
も、殺人鬼の魂が宿ったロボットによる殺戮が繰り広げられる映画です。
しかし、ただのホラーではありません。
「ホラーコメディ」になります。
王道とも言えるホラー要素がありつつも、
本作が何故コメディなのかについて、
また、主人公の正体は何者なのか、
ネタバレを含めつつ書いていきます。
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作品概要
2021年に公開されたニコラス・ケイジ主演のアクションホラーコメディ映画です。
コメディとつきますが、人は死にますし、それなりの出血があります。
また、ホラー王道のお調子者カップルの濡れ場もあり、R15指定がかかっています。
どちらも、それほど直接的な描写はされません。
しかし家族と見る際は気まずい空気が流れるかもしれないので注意が必要です。
ストーリー(ネタバレ含む)
ニコラス・ケイジ演じる主人公の男が街外れの道をスポーツカーで爆走していました。
快調にドライブしていましたが、突然タイヤがパンクします。
なんとか無事に停車した男が状況を確認すると、金属の杭が多数ある車両停止用の罠が仕掛けられていました。
クルマを動かせなくなり、どうにもできなくなった彼は、やむを得ず数時間その場で立ち往生することになります。
すると一台のトラックがやってきて、彼と車を乗せて街まで連れてきてくれました。
トラックの運転手は工場を経営しているようで、タイヤの交換が可能でした。
しかし、ここまでの牽引費とタイヤの修理費で1,000ドル必要だと言います。
男はクレジットカードで支払おうとしますが、街にはインターネットが引かれていないようで現金の取引しかできません。
また、ATMも故障しており現金の引き出しも不可です。
そこで、工場の経営者は男に対して仕事の斡旋を持ちかけます。
その仕事とは、ウィリーズ・ワンダーランドという遊園地廃墟の清掃作業でした。
遊園地の持ち主が男に仕事の内容を説明します。
- 遊園地の再開を計画している。
- 内部は荒れ果てているため、清掃してもらいたい。
- 一晩だけ泊まり込みで作業してもらいたい。
- 受けてもらえれば1,000ドルは建て替える。
普通に考えれば徹夜の作業になるとはいえ、日給1,000ドルと言う破格の仕事です。
いずれにせよ、クルマを直さない以上は男に選択肢はなく、その仕事を引き受けることにしました。
遊園地内部は確かに荒れ果てていましたが、水道や電気は通っているようです。
また、清掃用品一式と、かつてのスタッフ用Tシャツがたくさん用意されており、掃除の際の作業服にしました。
夕方になり、仕事の説明を終えた遊園地の持ち主が立ち去ると、男は作業に取り掛かります。
休憩時間を腕時計のアラームに設定した彼は、黙々と掃除を続けて行きます。
やがて休憩時間になると、持参した缶ジュースを飲み、見つけたピンボールを掃除して遊びます。
休憩後に作業を再開したところ、ウィリーズ・ワンダーランドのマスコットキャラのアニマトロニクスが突然襲いかかってきました。
それに対して、男は特に動揺することなく攻撃をいなし、逆にモップの柄でメッタうちにして破壊しました。
まさに残虐ファイトと呼ぶべき一方的な破壊です。
そして、その残骸をゴミ袋に詰めると、ロボットのオイルに塗れたシャツを着替え、何事もなかったかのように掃除を始めるのでした。
ところ変わって、遊園地の外では複数の若者がガソリンを撒いています。
火をつけようとしたところ、リーダー格の少女が中の人(男)を助けてからと止めます。
彼らは男が遊園地内にいることを知っているようでした。
彼女は男に対して窓越しに外に出るよう訴えますが、最後まで話を聞くことなく男は仕事に戻ってしまいます。
剛を煮やした少女は遊園地内に忍び込み、男に直接事情を説明します。
ちなみに彼女もアニマトロニクスに襲撃を受けていますが、辛くも切り抜けています。
この遊園地は、かつて家族連れに人気でしたが、スタッフたちは殺人鬼でした。
ターゲットにした家族を特別室に招待し、そこで殺人を繰り返していたようです。
やがて行方不明者の多さから警察の捜査がされますが、警官隊の突入の直前に黒魔術を用いて全員が自殺していました。
ちなみに、この突入シーンは、この映画のいい加減さに関係なくかっこいいCQBやってますよ。
その黒魔術の結果、殺人鬼たちの魂は遊園地のマスコットであるアニマトロニクスに宿り、殺人を繰り返していたのです。
それに対して街の住人は、生贄を捧げるので街での殺しはやめてほしいと取引を持ちかけました。
そのため、定期的に旅行者を遊園地に誘い込み、殺人鬼たちへのおもちゃとして提供していたのです。
男の車がパンクしたのも遊園地に滞在させるための罠だったわけです。
しかし、そこまで聞いても男は聞く耳を持たず仕事に戻ります。
紆余曲折あり若者グループ全員が遊園地内に入ってしまい、次々とアニマトロニクスに殺されて行きます。
ちなみにリーダーの少女は生き残ります。
この子はストーリー上、重要な立ち位置にいますが、主人公の男には全く関係ないことなので、いてもいなくても進行に問題はありません。
なんというか、ここは予想通りなので細かくは解説しません。
になる方は是非本編をご視聴ください。
しかし男は敵を破壊しては片付けて掃除を続けます。
そんな中で街の保安官が遊園地に駆けつけます。
そして散弾銃を男に突きつけて両手を後ろで拘束します。
大人しく生贄として死んでくれと。
保安官は、部下に少女を送らせて、自分は遊園地の外では事が終わるのを待つことにしました。
しかし、部下の運転する車にはすでにアニマトロニクスが潜んでおり、保安官助手は殺害されます。
少女は散弾銃を手に取り撃とうとしますが、すでに弾が抜かれていました。
しかしこの映画での重要人物たる彼女は一筋縄では行きません。
不敵に近づくアニマトロニクスですが、少女はショットガンを棍棒のように振り回して敵をボコボコにして逃走に成功しました。
男はと言うと、拘束をにも介さず、縛られた状態で2体のアニマトロニクスを素早く破壊します。
頭突きで体勢を崩し、肩と腰を駆使して投げ飛ばし、足で相手の首をへし折ります。
アニマトロニクスはろくに攻撃できず、近づいた瞬間に無力化されてしまいました。
その残骸を片付けている男を見つけた保安官は、いよいよ後がないと思い、再び男に銃を突きつけて動きを封じ、今の内に男を殺せと叫びます。
そこに現れたリーダー格のアニマトロニクスは、腕を一振りし保安官の胴体を両断します。
そして怒涛のラッシュで男の身体に爪を突き立て切り裂きます。
しかし男も負けてはいません。
反撃のフェイズに入ってからは初めて武器を用意して対峙します。
武器といっても大したものではなく、
モップの柄を束ねて強度を増した棍棒と、
持参したジュースの缶を袋に詰めただけのブラックジャックという、
素手よりはマシといった程度の即席の武器でした。
しかし、今までほとんど素手で敵を倒してきた男にとっては正に鬼に金棒。
準備万端の男にとって、不意打ちすらせずに現れたアニマトロニクスのリーダーなど、もはや敵ではありません。
見るに耐えない一方的な攻撃がしばらく続き、漏れ出したオイルがまるで返り血のように男の身体に吹きかかります。
まるでホラー映画の殺人鬼のような姿になった男は、改めて着替えて、一方的な殺戮戦闘によりメチャクチャになった部屋の片付けに取り掛かるのでした。
そして翌朝、男の死を確信しつつ様子を見にきた遊園地の持ち主と工場の経営者は、
異常なまでに清潔になった遊園地と、
何事もなかったかのように現れた男の姿に驚愕します。
男はやはり無言で車の鍵を要求します。
鍵を受けとり、そのタイミングで戻ってきた少女を車に乗せて遊園地から走り去るのでした。
残された遊園地の持ち主と工場の経営者は、思いもよらず危険のなくなった遊園地の再開を本気で検討し始めます。
しかし、完全な破壊を免れていた一体が、車のガソリンタンクに火をつけて自分ごと2人を殺します。
また、少女にリンチを受けた一体は、満身創痍で道を歩いているところ、男の運転する車に跳ね飛ばされてバラバラに破壊されました。
こうして、呪われた遊園地は完全に無力化され、男をはめた人間は死に絶え、助けようとしてくれた少女を助けて物語は終わったのです。
厳密には、男は車を直してもらう代わりに遊園地の掃除をしただけで、アニマトロニクスの破壊は掃除の邪魔になるからした副次的なものなのですが。
主人公の謎
なにを置いても本作の魅力を生み出しているのは、ニコラス・ケイジ演じる主人公の男の存在です。
まったく喋らず、セリフは一つも用意されていません。
せいぜい、アニマトロニクスとの格闘時に出るうめき声程度です。
さらに、人となりもほぼ不明で名前すらも設定されていません。
なぜ人気のない道をスポーツカーで爆走していたのか。
何のためにどこに行くつもりだったのか。
なぜアニマトロニクスに攻撃を受けつつも、それを撃退して「掃除」を続けるのか。
あらゆる事の一切が不明というのが彼のキャラクター性です。
ただ、彼の出自については推測が可能です。
冒頭の車の運転シーンでは、車内に吊るされた認識票(ドックタグ)が映ります。
軍に所属していたことがあることを匂わせる演出です。
さらに、遊園地内のトイレ掃除のシーンで、彼は便器内に躊躇わず手を突っ込んで汚れを拭き取っています。
ブラシを使わず、ウエスで汚れを拭き取れば確かに効率的ですが、衛生観念的に躊躇いなくそれができる人はそう多くありません。
しかし、便座を手で掃除することを強いられる組織があります。
それがアメリカ海兵隊のブートキャンプ(新兵訓練部隊)です。
海兵隊は米軍の4軍の内で最も新兵訓練の期間が長く、また内容も過酷です。
徹底した人格否定を繰り返すことで、アメリカ市民を屈強な海兵隊員に作り変えるのです。
課業前後の営内での生活も徹底的に厳しく管理され、部屋にはチリ一つなく、普段使いの便座ですら手で磨き上げる必要があります。
話は逸れますが、例えば海兵隊員が陸軍に入隊し直す際は新兵訓練は免除されます。
しかし、陸軍から海兵隊に入隊し直す際は、陸軍時代の成績や勤続年数に関係なく海兵隊のブートキャンプでの訓練が義務付けられているほどです。
話を戻しまして、
彼の卓越した格闘スキルや掃除に対するストイックさ、襲撃に対して即座に反撃する闘争心を考慮すると、海兵隊出身であることが窺えます。
まあ、その推測が合っているかは分かりませんし、それ以外のことのほとんど全ては推測すらできないのですが。
目の前で人が死んでも動揺しないどころか清掃の仕事をやり抜き、
アニマトロニクスに襲われようとも撃退し清掃の仕事をやり抜き、
戦いがまさに始まろうとしている時でも休憩時間を告げるアラームがなれば戦闘を放棄して休憩に入ります。
率直に言って元海兵隊員と仮定しても異常なメンタルをしており、人となりを推測することすら難しいです。
それがコメディたる所以なのですが。
まとめ
ホラーコメディと分かっていれば、概ね面白く見れると思います。
ホラーの王道を踏襲しつつも、主人公の異常な強さにより全てが台無しにされていくと言うシュールな笑いを得られます。
怪しい寂れた街。
モラルの欠ける(廃墟で営み)カップル。
冷めた若者。
ヒーロー願望者。
これらはh全ておまけであり、主人公の男にとって関係のないことです。
彼らを同行することは車の修理には関係のないことですから。
コメディーの時点で深く考えるべきではないのは明白ですが。
とりあえず、与えられた仕事に責任感を持ちつつも休憩時間を大切にし、仕事をやり切る人間になろうと思いました(雑)。
コメント
主人公の正体はホラゲのパロディ説もありますよ
正体不明,自分ルールで動く,声を発さない等ホラゲ主人公にありがちな要素なので
コメントありがとうございます。
なるほど、その説も十分考えられますね。
というより、ホラーコメディとしてはパロディ説の方がしっくりきます。
教えていただきありがとうございます!