愛国心と聞くとどんなイメージがありますか?
文字通り「国を愛する心」、転じて「自国のために尽くす心」といった意味になりますが、過去から現在に至るまで「愛国心」を武器にして自己の利益を追求した禄でもない輩がいたのも事実。
その結果、愛国心という概念に対してあまり良くないイメージを持つ人が一定数いると思います。
今回は、「自称愛国者」を批判した言葉である
愛国心とはならず者たちの最後の逃げ場である(Patriotism is the last refuge of a scoundrel)
という非常に誤解されやすい言葉についてご紹介します。
概要
この言葉は、1775年にイングランドの文学者である「サミュエル・ジョンソン」が述べました。
結構いかつい顔をしていますよね。
当時活動していた政治家である「ジョン・スチュアート」に対して敵対していた政治家やその支持者に対する批判の言葉です。
政敵たちは、イングランドではなくスコットランド出身のスチュアートを愛国的な観点から批判していました。
彼ら敵対派閥は「愛国心」という言葉を武器にしていたとされ、そういった「自称愛国者」を皮肉的に批判したのが「愛国心とはならず者たちの最後の逃げ場である」という言葉なのです。
よくある誤解
言葉だけを見ると愛国心そのものをならず者と批判しているように見えるため、よく誤解を受ける言葉でもあります。
この言葉を使って、例えばいわゆる「ネトウヨ」だとか「パヨク」と呼ばれる思想を持った人々を批判したり、過去の大日本帝国時代の洗脳教育を行っていた軍部に対する批判に使われたりしています。
しかし、サミュエル・ジョンソンは上述の通り、愛国心という耳触りの良い概念を盾に自分の都合の良いことをする「ならず者」を批判する意図で発言しており、愛国心そのものや愛国者全般に対すしてならず者と批判しているわけではないのです。
そもそも愛国心は「国のために尽くす心」であり、自己を正当化するための道具ではありませんしね。
しかし、言葉だけが有名になり独り歩きした結果、愛国心そのものを批判する意図で使われることが散見されます。
悪いのは愛国心でも愛国主義者でもなく、それを隠れ蓑にするならず者であり、そういった輩は「自分は愛国心で行動している」と誤魔化し、言い訳することでしか自己を正当化できないのだと言っているだけなのです。
まとめ
過去の偉人の言葉は多数存在し、今回紹介した「愛国心とはならず者たちの最後の逃げ場である」も有名な文学者であるサミュエル・ジョンソンの言葉です。
こういった名言はしばしば私たちの行動のや心の持ち方に影響を与えます。
しかし、過去の偉人の名言だからと言って常に正しいものであるとは限りません。
例えばサミュエル・ジョンソンはアメリカ独立運動に対して批判的でした。
イギリス人である彼は、「アメリカはイギリスの庇護(支配)のもとで安定しており、イギリスの武力によって守られているのだから、アメリカに対する権利侵害などなく、そんなバカげた主張をする独立運動家は似非愛国者である」と批判していました。
これは現代に生きる我々の価値観と合致するとは言い難いでしょう。
名言を使用する際は、その意味合いについてしっかりと調べる必要があります。
良く知りもせずに偉人の名言を引用して他者を批判するという行為は、サミュエル・ジョンソンが残した「愛国心とはならず者たちの最後の逃げ場である」と全く同じであることを理解しなければなりません。
そうでないと自己の意見を正当化するためだけに愛国心を振りかざした過去の「ならず者」と同じ穴の狢となってしまいます。
愛国心を盾に他人を批判するのも、名言を盾に他人を批判するのも、出来ればやりたくないものですね。
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