SCP財団黎明期に投稿された傑作胸糞SCPである
SCP-231「特別職員要件」
本家SCPの番号が5,000を超えた現在においても、決して色あせることのない恐怖心と好奇心を煽ってくれる報告書です。
本記事では、SCP-231について解説していきます。
概要
当該オブジェクトは当初SCP-231-1~7の数字が割り当てられており、それぞれ█才から██才の7名の女性です。
Children of the Scarlet King (緋色の王の子ら)という宗教的組織が警察の強制捜査を受けた際に保護された女性たちで、警察の介入時点で全員が妊娠の兆候を示していました。
女性の一人(SCP-231-1)は、警察による救助後すぐに陣痛を起こし、アノマリーを出産(後にSCP-██と指定)、三桁を超える犠牲者を引き起こしました。
この時点で財団が介入し、SCP-231-2~7を収容、「緋色の王の子ら」から回収した資料を基に処置110-モントークを制定しました。
現在までにSCP-231-2~6は死亡し、その都度アノマリーが出産、だんだんと被害規模が大きくなっています。
「緋色の王の子ら」からの回収資料によると7番目のアノマリーは世界終焉シナリオに直接つながる被害をもたらすことが推定されています。
生存しているSCP-231-7は処置110-モントークにより出産を延期させられているため、現在に至るまで収容下にあります。
特別収容プロトコル
SCP-231達の度重なる脱走と自殺の試みを受けて、極めて厳重な監視監禁体制が敷かれています。
防音された留置房に隔離され、SCP-231-7は「処置110-モントーク」の実施時以外は寝台に厳重に拘束され続けます。
さらに、水分補給は静脈点滴、食事は管を通して投与、といった具合に徹底的に自由を奪われています。
担当職員の選定基準は「ミルグラム従順性試験で最低72点を記録し、財団への完全な忠誠心のほかに、未婚であり、子を持たない者」という条件があります。
SCP-231-7の収容房はカメラによって24時間監視されます。
最低でも24時間に1度は「処置110-モントーク」が選抜された性犯罪の経歴を持つ6名のDクラス職員によって実施されます。
「処置110-モントーク」の実施中は担当職員は進捗を随時カメラで確認しなければなりませんが、SCP-231-7の悲鳴があまりに凄惨であれば音声出力は切ってもいいことになっています。
事案記録
- SCP-231-1:警察による救助作戦の直後にSCP-██を出産、出産時に殺害される。████████████事案の発生。
- SCP-231-2:財団により胎児状態のSCP-██の摘出が試みられた。摘出手術は失敗し殺害された。より威力の大きい████████████事案が発生。
- SCP-231-3:「処置110-モントーク」による苦痛により自殺した。胎内のSCP-██は、より威力の大きい████████████事案に発展した。
- SCP-231-4:SCP-500「万能薬」が投与された。胎内のSCP-██はSCP-231-4を傷付けずに対外に排出されたが、排出されたSCP-██は直ちに█████████████事案に発展し、SCP-231-4を含む多数の死者を出した。
- SCP-231-5:「処置110-モントーク」の失敗によりSCP-██を出産し、██████████事案に発展。この事案を機に「処置110-モントーク」を実施するDクラスの選定基準を変更。
- SCP-231-6:担当職員の一人であるエージェントの手引きによりSCP-231-6と7の脱走事案が発生。収容部隊との銃撃戦の末、エージェントとSCP-231-6は死亡。胎内のSCP-██は、より威力の大きい████████████事案に発展した。この事案を機に担当職員の選定基準を改定。
解説
SCP-231とは何か
世界終焉シナリオを引き起こす「ナニカ」を胎内に内包した女性です。
誤解を恐れずに言えば、SCP-231は「ナニカ」を世界に産み出すためだけの箱なのです。
この「ナニカ」はSCP-██と割り当てられており、このオブジェクトによって「████████████事案」と呼ばれる世界終焉シナリオにつながりかねない事象が発生します。
SCP-██の正体や収容方法については該当の報告書が存在するのでしょうが、SCP-231においては関係がないため記載されていません。
緋色の王の子ら
本家記事内では、以下のような記載がされています。
████████████ ██████新聞、██-██-████発行の記事、”警察セックスカルトを襲撃、7人を救出”を参照
引用元:SCP-231
要するに、財団がこの集団をどのように認識していたのかについては一切記述がありません。
要注意団体としてマークしていたのか、全く把握していない組織だったのかも不明です。
そのため、我々読者に対して「緋色の王の子ら」という団体は性的なナニカをするカルト集団であるという印象を与えますが、実際のところは何者なのか分かりません。
メタ的に言えば、SCPというコミュニティができて日が浅い時の記事のため、要注意団体などの設定が固まり切っていないという側面もあるでしょう。
ただし、少なくともSCP-231と割り当てられる7人の女性を拘束し、その身に「SCP-██」を宿らせることに関与していた団体ということは間違いありません。
この団体の目的も不明です。
「SCP-██」を現実世界に出現させるのが目的なのか、
逆に「SCP-██」を封じ込めるのが目的なのか
これも語られていません。
ただし、団体名の「緋色の王の子ら」から考えても、彼らは自らが子として信仰している「SCP-██」=「緋色の王」なる神格存在を復活させるために7名の女性の身体を使った儀式をしていたのではないかと個人的には考えています。
処置110-モントーク
SCP-231の出産を遅らせるための処置であり、詳細はセキュリティクリアランス4/231で制限されています。
ただし断片的には開示されており、以下の情報が読み取れます。
- 現在生存しているSCP-231-7は少女であり、危険なオブジェクトを妊娠している。
- SCP-231-7の出産を防ぐために毎日行わなければならない。
- 実施するのは過度に暴力的ではない6名のDクラス職員(SCP-231の死につながる不慮の事故を防ぐため)
- 配備されるDクラス職員は「処置110-モントーク」に必要な精神的素養がある限り、第II軸障害(パーソナリティ障害)であっても構わない。
- SCP-231は処置110-モントークにより凄惨な悲鳴を上げる。
- 悲鳴に耐えられない場合、監視スタッフは監視装置の音声を切ることが許可されている。
- SCP-231に同情したり救出を望むようになった職員は別のプロジェクトに再配置される。
- O5が職員への信書にて「とても悲惨であり、暴力的手段が含まれる」と明言している。
- プロジェクトを離れる際に、希望者は記憶処理を受けられる。
- 財団に忠誠を誓った職員ですらSCP-231の悲惨な境遇から彼女の救助と脱走のための行動を取ったことがある。
- SCP-231が自分の状況を認識し恐怖することで「処置110-モントーク」の効果は飛躍的に上昇する。
- SCP-231が「処置110-モントーク」に慣れてきたなら、定期的に記憶処理をすることで恐怖心を取り戻させる必要がある。
- 記憶処理の使用を進言した博士が、心を病み自殺した。
これらの情報から、処置110-モントークがすさまじく非道なものであり、完全に巻き込まれてしまった罪のない少女が常時苦しめられていることが分かります。
しかし、具体的に何をしているのかは記事内からは読み取れません。
メタ的な解説
上述の通り、読者は処置110-モントークが何なのかを推測するしかありません。
そして、それこそがSCP-231の筆者の狙いなのです。
世界を終わらせる存在を身籠ってしまった罪のない少女に対して、世界を守るために「ナニカ」を財団はしています。
この「ナニカ」の正体は、我々読者が推測した行為すべてなのです。
何の罪もない少女に対して、
重犯罪者であるDクラス6人を使って、
世界を守るためという大義名分のもと、
財団職員ですら直視が難しい「凄惨なこと」をする。
この情報から、私たちは各々がおぞましいことを想像します。
想像の中で、抵抗できない哀れな少女に、お前は一体何をしたんだ?
そういう思考トリックがSCP-231の主なテーマになっていると作者は公言しています。
他SCPとの関わり
SCP-2317
このオブジェクトは世界を滅ぼす可能性が非常に高いとされている全長200Kmの人型の神格実体です。
現在はポータルを通じた別の世界に封印されていますが、その封印をしている鎖と柱が壊れかかった状態になっています。
封印を維持するために「カラバサス手続」と呼ばれる宗教的手順が実施されます。
SCP-2317の収容に当たる職員の選定基準は「ミルグラム従順性試験で最低72点を記録し、財団への完全な忠誠心のほかに、未婚であり、子を持たない者」という、SCP-231と同じ条件が課されています。
さらに一目瞭然ですが、番号を構成する数字も同じです。
そのため、財団職員の中にもSCP-231-7とSCP-2317が何か関係があるのではと考える者もいます。
しかし、実はこの「カラバサス手続」というのが全くの出鱈目であり、封印を継続する方法が見つかっていません。
では何故こんな大仰なことをしているかというと、財団内部のパニック抑制のためです。
研究の結果、SCP-2317の封印はあと30年ほどで破られると判明しており、その絶望感から財団の機能不全が起こることを防止する必要があるのです。
つまり、SCP-2317の収容手順は財団構成員を対象にしたものだということです。
「カラバサス手続」の信憑性を高めるために、既知のオブジェクトや、宗教などのオカルト要素を入り交ぜた偽情報を作り上げているのです。
そのため、同じく世界を終わらせる存在であり、何とか封じ込めに成功している「SCP-231-7」にあやかったプロトコルになっているというわけですね。
SCP-999-JP-J
本家に存在するSCP-999「くすぐりオバケ」
このオブジェクトのジョーク記事が 何故か 日本支部にて生まれました。
SCP-999は心優しいゲル状の生き物で、あのSCP-682「不死身の爬虫類」とすら友好的な態度で接しようとします。
SCP-999とSCP-682のクロステストの際に、結果的にSCP-682の収容違反が発生し、職員に多数の犠牲者が出てしまいました。
SCP-999は、自分が弱かったためにSCP-682を止めることができず、多くの人々が傷ついたのだと思い詰めます。
そして彼は一念発起、財団の収容を突破し、武者修行の旅に出たのです。
そして厳しい修行を終えて帰ってきた彼は、様々なオブジェクトに対して深い自愛の心と協力無比な筋肉で むりやり 接することができる存在になっていたのです。
SCP-682はSCP-999-JP-Jのマッサージにより攻撃性を抜かれて「ちっちゃなトカゲ」に、
SCP-049「ペスト医師」はSCP-999-JP-Jの技術を受け継ぎ整体師に、
SCP-096「シャイガイ」とは友達になり、
SCP-231-7は「SCP-██」の異常性を取り除かれ次の言葉を残しました。
「おかげさまで、無事に元気な男の子が生まれました」
引用元:SCP-999-JP-J
Tales:ひとりっきりで怯えてろ
SCP財団というコミュニティは、各人の考える設定「ヘッドカノン」の集合体です。
つまり、公式設定はなく、せいぜい「多くの人に支持されている設定」がある程度です。
なので、ここで紹介するTales「ひとりっきりで怯えてろ」も公式ではないものの、「処置110-モントーク」に対する一つの答えを示しています。
このTaleはSCP-231に新しく割り当てられた財団博士を主人公にした物語です。
SCP-231「特別職員要件」がどんなものか、そこで行われている「処置110-モントーク」の恐ろしさについて噂として事前に知っていた彼は、SCP-231-7の収容施設に来てからずっと緊張しっぱなしでした。
担当職員に選ばれたということは財団に対する忠誠心も高いはずですが、しかし「処置110-モントーク」の監視をしなければならないとあれば動揺するのも無理はありません。
極度の緊張の中にある彼が見た「処置110-モントーク」の内容は、、、
Dクラスが8歳ほどのキャサリンと呼ばれる女の子に絵本を読み聞かせてあげるという、拍子抜けするほどに平和な光景でした。
しかしキャサリンは妊娠しているのが分かる、年齢に対して不自然な体型をしており、SCP-231-7であることが他の博士から明言されます。
そして、現在行われている平和極まりない「処置110-モントーク」に至った経緯も教わります。
SCP-271-1~6の頃は、本当に凄惨極まりない「忌まわしい行為」を彼女たちに強要していました。
そして-7以外の失敗によって財団は学んだのです。
件のオカルティストたちが崇拝していた「緋色の王」についてより厳密に精査しました。
その結果、「緋色の王」を封じるために実際に「忌まわしい行為」をする必要はなく、封じ込めのために「忌まわしい行為」をしているのだと「緋色の王」に信じ込ませるだけでいいということが判明しました。
この封じ込め方法そのものを「処置110-モントーク」と定義し、その内容がさも凄惨極まりない「忌まわしい行為」であると財団の大部分、そして読者の私たちも信じ込むようになりました。
いわゆるミーム的な手法で封じ込めが可能になっているのです。
むしろ、実際に「忌まわしい行為」を行うことで不慮の事故によるSCP-231の死亡や、心を痛めた職員による収容違反の危険が無い分、現在の方法のほうが確実性が高いのです。
「緋色の王」は目を持っているわけでも耳を持っているわけでもなく、ただ人々の恐怖心を感じて抑え込まれているにすぎません。
財団が「処置110-モントーク」の内容を意図的にはぐらかして記載したことで、財団職員は「緋色の王」を封じ込めるための「処置110-モントーク」という概念に漠然とした恐怖心を強く覚えます。
そして実際に何もしないわけにはいきませんから、SCP-213に割り当てられた人員は「処置110-モントーク」としてキャサリンに寝かせ着けの絵本の読み聞かせをするのです。
つまり、「緋色の王」は「処置110-モントーク」が行われているという事実のみを認識し封じ込められているというわけです。
絵本の読み聞かせだろうと、目を逸らしたくなる拷問だろうと、「緋色の王」にとっては関係ありません。
多くの人が恐れる「処置110-モントーク」という封じ込め手順が実行されているという事実だけが必要なのです。
しかし、この一見平和な「処置110-モントーク」も細心の注意を払って実行されています。
SCP-231-7の封じ込め失敗は、すなわち世界終焉シナリオに直結します。
さらに実際に「忌まわしい行為」をしていないため気が緩みがちですが、SCP-231-7の胎内には「緋色の王」が未だ存在しているのです。
「処置110-モントーク」は対症療法に過ぎず、抜本的な解決策は見つかっていません。
この哀れなティーンにも満たないキャサリンは、異形の存在を胎内に抱えながらSCP-231-7として財団に収容され続ける運命しかないのが現状なのです。
まとめ
2014年頃に執筆された古参記事であるSCP-231「特別職員要件」ですが、現在でも十分に通用するホラー作品です。
メタ的な狙いは、「処置110-モントーク」の詳細をあえて伏せることで読者が内包している残虐性を露わするというものです。
しかし、ホラー作品として見ても非常に恐ろしく、胸糞の悪いものであることに間違いはありません。
想像してみてください。
あなたが女性ならばあなた自身が、
もしくは、あなたの大切な人、恋人や妻、娘が攫われ、胎内にこの世のものではない世界を終わらせかねない「ナニカ」を宿されるのです。
私たちの未来で赤ちゃんを産むはずだった女性たちの子宮は、今や世界を滅ぼすための時限爆弾です。
爆発を止めるには、目をそむけたくなるような、耳を塞ぎたくなるような苦しみを絶えず与え続けなくてはなりません。
苦しみから逃れるために彼女たちが死を選べば、世界全体が終わります。
それを防ぐために、世界全体が彼女たちに身の毛もよだつような「忌まわしい行為」をしてくるのです。
突然日常を奪われ、死ぬことも許されず、かといって平穏な時間を過ごすこともできない。
世界が彼女たちに求めるのは、彼女たちが死を乞うほどの苦痛を受け続けることだけ。
助けは来ません。
彼女たちに明るい未来はなく、世界を守るためという大義名分のために地獄の苦しみを味わい続けています。
いつか来るかもしれない終わりの時間まで、彼女たちは世界を死なせないために、いわれのない責め苦を受け続けるのです。
今、この瞬間も。
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