私たちは肉体と精神(魂)が組み合わさり生きた人間として存在しています。
と、言い切れる客観的な証拠はありませんし、何を信じるかは個人の価値観によるものですが、一般的には理解しやすい考え方でしょう。
この考え方だと、人が死んだ時には肉体から精神(魂)が抜けてしまいます。
身体は抜け殻になり、魂はいわゆるあの世へと行くことになります。
本当にそうでしょうか?
身体はただの抜け殻なのでしょうか。
この記事では、肉体と精神の関係を取り上げたSCP-2372(ソウルメイト)の解説を行います。
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SCP-2372とはナニモノか?
当該SCiPを構成している物理的な要素は、“陳██さん”という中国人男性の遺体です。
オブジェクトの嗜みなのか、当然のように腐敗はしません。
遺体は声帯の振動をしていないにもかかわらず、不明瞭な呻き声を発します。
また、粉末化された翡翠の粒子と絹糸がSCP-2372の皮下組織全体に外科的に埋め込まれています。
翡翠とは、漢王朝の王族が埋葬される際に衣裳で、魂の劣化を遅らせる力があると考えられていたそうです。
この遺体のヘソからは霧を発生させることがあり、その霧には射精前に分泌される体液が混入しているようです。
さらに、その霧からはSCP-2372-Aと呼称される、霊的実体(簡潔に言えば幽霊)が出現します。
この実体は“陳さん”の上半身と類似した姿で、自らを陳さん自身だと自称しています。
周囲の霧を振動させて人間とコミュニケーションを取ることができる他、SCP-2372の呻き声の内容を理解して会話をすることが可能です。
SCP-2372-A(以下:霊体)は、SCP-2372(以下:肉体)に対して敵対的に振る舞います。
他の特徴として、霊体との会話の最中に、遺体の尿道には射精前に分泌される体液が出現することがあることが判明しています。
特別収容プロトコル
SCP-2372は極低温格納ユニットに収容されます。
SCP-2372-Aの肉体からの離脱要求は果たされることはありませんが、対象には肉体の呻き声を翻訳する見返りとして離脱実験が予定されると伝えられます。
週に一度、SCP-2372の洗浄のためにレベル0の職員が派遣されますが、霊体の出現に必要な霧の発生を抑えるために、担当職員の判断でユニット内の温度を0度以下に設定することも可能です。
あくまでSCiPの収容のみに特化したプロトコルが組まれているようですね。
なぜ肉体と霊体で仲が悪いのか?
これについては、当該SCiPに対するインタビューログから推察することができます。
基本的に財団エージェントと会話ができるのは霊体だけであり、霊体が遺体に対して敵対的であることから、遺体の呻き声が完全に翻訳されてエージェントに伝えられることはないようです。
インタビューログを簡潔にまとめると以下のようになります。
- 霊体は肉体と繋がっておりどこにも行けないため、接続を切り離すことを希望している。
- こうなった原因は、彼の生前に秦(チン)老師と呼ばれる外科医から、翡翠の粒子と絹糸を皮下に埋め込む手術を受けたから。
- 生前は墓地で働いていたため死体を見ることが多かった“陳さん”は、自身の死を何とかするために翡翠の移植手術を受けた。
- 霊体は否定しているが、肉体の方は“陳さん”が肉体(自分自身のこと)を性的に好いていたと主張している。
- 肉体がそう主張する根拠は、彼自身の性器を性的に満足させたから。
- 霊体は陳さんにそんなつもりはなく、単なる自慰だと主張している。
ちなみに外科手術をおこなった秦老師と呼ばれる人物は発見されていません。
霊体から得た住所を捜索したところ、確かに居住していたようですが、現在では別の組織に嫌がらせを受けて去ったとされています。
まとめると
本来であれば人間は死ぬと、肉体は土に還り、魂は天国やらなんやらにいくのでしょう。
しかし、何らかの原因で陳さんは死後に肉体と精神が分裂し接続されたままになりました。
肉体は腐敗しないため、精神もいつまでも離れることはできません。
さらに、それぞれに宿る意識は生前の「陳さんそのものではない」ようです。
精神は陳さんの自我をベースにした意識を持ち、肉体は身体的な刺激をベースにした意識を持っています。
“陳さん”の意識が分離しているというよりは、“陳さん”の人生を追体験した別人の意識が精神と肉体に存在していると考えられます。
現に互いの認識は異なっており、“陳さん”が自分をオカズにしていたのか、単なる自慰をしていたのか、自分であれば認識が異なることもないはずです。
自我をベースにした精神は肉体が自身を侮辱するような認識を持っていることに激怒していますし、肉体は肉体で自分自身と同じ姿をした精神と会話をしている最中に射精前の体液(いわゆる興奮した時に出るガマン汁でしょう)を分泌する有様です。
つまり、互いの主張はそれぞれの本心から来ているものであり、“陳さん”そのものの意識とは別だと考えられます。
プロジェクト・ヘイムダルとの関係
このプロジェクトについて聞き覚えのある方も多くいると思います。
メタ的なことを言えば、執筆者間で共通の認識(プロジェクト)を持って作品を投稿していこうという合作企画です。
「わるいざいだん」などと同じコンセプトですね。
財団世界的にはプロジェクトは以下のような内容となります。
- 財団は人類の正常性を維持するためにあらゆる状況を想定するべきである。
- その中には発生確率は低いものの、発生した時の影響が甚大なものも含まれている。
- つまりは、地球外生命体が人類や文明に対して能動的に敵対行為をとり、人類の絶滅あるいは奴隷化を目論む可能性についても対策案を策定する必要がある。
こういった目的で結成されたプロジェクトであり、各種施設、職員、機動部隊が関連職務に割り当てられている正式な計画となります。
SCP-2372は肉体と精神の遠隔接続が可能という特性から、プロジェクト・ヘイムダルの関連職員のうち、承認を受けた職員は、SCP-2372に関する研究結果へのアクセスと応用実験が許可されています。
そうして実用化されたのが、SCP-2669にて登場する無人探査機「Khevtuul」の無遅延の通信システムです。
詳細については、以下の記事を是非ご覧ください。
まとめ
このSCP-2372については、単一の異常としてはそれほど重大ではなく、オブジェクトクラスもsafeに指定されています。
おそらくSCP-2372達は今後も収容され続けるだけになることでしょう。
しかし、プロジェクト・ヘイムダルという計画に絡んだおかげで壮大な設定に巻き込まれています。
かつてはSCP記事同士のクロステストは避けるべきとされていましたが、一時期はマンネリ打破のためか積極的にクロステストをすべきという風潮になったこともありますし、今では別にNGというわけでもないという扱いです。
個別の記事だけで完結させるというのも良いことですが、せっかくシェアワールドなので質の良いクロステスト記事はどんどん作られていってほしいと思います。
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