SCP財団というコンテンツには様々な専門用語が存在します。
SFホラー色の強いコンテンツである都合、科学的かつフィクションの造語も多く登場します。
この記事では、SCP財団の新人職員向けに躓きやすい用語について解説していきます。
初めに
SCP財団というコンテンツはシェアードワールドという体裁を取っています。
つまり、基本となる設定を基に、執筆者が各々の考え(ヘッドカノン)を持ち寄って財団世界を作り上げていきます。
そのため、公式設定という便利なものは存在しません。
SCP財団に存在するのは、各々が考え出し、多くの人に「面白い」と認められた「一つの説」の集合体のみです。
極端なことを言えば、財団の最高意思決定機関である「O5」のさらに上の設定を作ってもいいのです。
それが面白く、読者から支持されるのであれば。
この記事で解説するのも、あくまで「多くの人に支持されている設定」であるということに留意してください。
解説
SCP
以下の二つの意味を持ちます
- Secure,Contain,Protect(確保、収容、保護)の頭文字。
- Special Containment Procedures(特別収容プロトコル)の頭文字。
1は、アノマリーを人目から遠ざけ、自らの内にしまい込み、人類及びアノマリーも保護するという財団の理念を表しています。
2は、財団が把握しているアノマリーに対する収容方法を意味します。
アノマリー自体をSCPと呼ぶことはありません。
財団(SCP財団)
このコンテンツにおける主観的な組織です。
この世(あの世や異世界も含む)に存在する異常現象・物品(アノマリー)を確保し、人目に付かない場所に収容し、不測の事態に発展しないよう保護することを理念に持ちます。
世界中に支部を持つ超法規的な組織ですが、特定の組織や国に属するのではなく、独立した権限によって活動しています。
財団は多くの国の政府と非公開の提携関係を結んでおり、様々な場所で暗躍し、人類の正常性を維持しています。
アノマリーに対してのスタンスは上述の通り「確保」「収容」「保護」であり、主に科学的な手法を用いてアノマリーの特性を解明し、しまい込むことで人類を保護しようとします。
そのため、滅多なことではアノマリーの破壊や無力化を試みることすらなく、後述の世界オカルト連合とは水と油の関係になっています。
ちなみに我々読者や財団以外の要注意団体はしばしば「SCP財団」と呼称しますが、作中では彼らは自身を「財団」とのみ呼称することが多いです。
特別収容プロトコル
財団が把握しているアノマリーに対する収容方法です。
アノマリーは固有の性質をもち、それに対応する収容方法が個別に策定されています。
財団の理念にもあるように、アノマリーの収容が最重要であるため、オブジェクトの報告書においては、そのものの説明より前に記載されます。
オブジェクトクラス
当該アノマリーの収容難易度を示します。
主にSafe、Euclid、Keterの三種類に分かれています。
字面から誤解されやすいのですが、あくまで「収容の難しさ」を示しており、オブジェトの危険性とは関係ありません。
例えば、世界を滅ぼす力を持っていてもスイッチを押さない限り起爆しない爆弾はSafeですし、
どんな手段でも防ぐことのできない瞬間移動をするただの落書きはKeterです。
Dクラス職員
SCP財団は多くの人材を雇用しています。
A~Eクラスまで分類がされていますが、中でも多くの記事で目にするのがDクラスです。
Dクラスで雇用されるのは一般的に死刑囚などの重犯罪者です。
彼らは、財団にて一定期間(多くは一か月)実験の補佐をすることで刑罰が免除されるという条件で雇用されています。
当然ですが安全な実験ばかりではなく、良くて重症や死亡、悪くすると死ぬことすらできない状況に直面します。
財団にとってのDクラスは、実験材料かつ危険なアノマリーの収容に使用する消耗品です。
例えばSCP-096(シャイガイ)が脱走すれば、若いDクラス職員をエサにおびき寄せます。
エサとしての魅力を高めるために、Dクラスの若者は大腿骨などの痛みの強い骨を財団によってへし折られ、悲鳴を挙げさせられます。
その悲鳴に寄って来たシャイガイによってDクラスは容易に死ぬこともできないような目に遭わせられますが、おかげで再収容を容易にします。
ちなみに、実験期間を生き残ったDクラスの処遇について、かつては契約通り釈放していたり、処刑していたりと幅がありました。
しかし、現在では記憶処理によって一か月間の記憶を消去し、再度使いまわしているというカノンが多くみられます。
これは「世界中の死刑囚を雇用したとしてもDクラスの供給が間に合わない」という問題を解決するために考え出されたカノンです。
稀なことではありますが、オブジェクトの収容に必要とあらば、やむを得ず一般人をDクラスとして強制雇用することもあります。
機動部隊
アノマリーの確保や収容に際して頻繁に登場するのが機動部隊と呼ばれる財団の部隊です。
彼らは特定の目的のために編成され、その目的達成後は解体、また必要に応じて再編成をするといった具合に、特定の状況に特化した能力を保有しています。
とはいえ、作中に登場する多くの機動部隊は殆ど常設されており、類似の状況が発生すれば駆けつけるといった具合に過労死待ったの無しの活躍をしていることも珍しくありません。
名称の厳つさから軍事的な色の強い戦闘部隊のイメージが持たれがちですし、実際に武器を用いて事態の収拾にあたる記事も多く書かれています。
しかし実態は上述の通り、戦闘に限らず各分野に特化した能力を持つ部隊を適宜編制しています。
そのため、こういった機動部隊もあれば、
こういった機動部隊もあるわけです。
要注意団体
アノマリーに関わりを持とうとしている集団(あるいは個人)は財団のみではありません。
そういった存在を財団は要注意団体として警戒対象と見做しています。
要注意団体にも数多くのバリエーションがあり、財団同様に人類の保護を目的としているものから、自らの信仰する神の復活を目指すもの、
以下に代表例を紹介します。
世界オカルト連合
国連直下の組織で、財団とは異なり異常存在の徹底破壊を理念に置いています。
財団とは理念の違いから犬猿の仲ですが、目的自体は「人類の保護」であるため、状況によっては財団と共闘することもあります。
オカルト連合の名の通り、様々なオカルティストの連合組織ですが、科学技術を軽視していることはなく財団同様に超科学を持ちます。
詳細は以下の記事をご参照ください。
サーキック・カルト
腐肉や腫瘍、疫病などを崇拝する宗教団体で、異常な方法により人体を変異させます。
人類に対して敵対的であり、人類を肉塊に変え、自らの信仰する世界に作り替えようとします。
構成員は自身の身体能力を高め、その他の人間には悍ましい肉体変異を起こさせます。
代表的な記事はSCP-610(にくにくしいもの)です。
読み応えたっぷり、SAN値ごっそりの超大作です。
ワンダーテインメント博士
異常な機能を持つ子供向け製品を製造・販売している集団(あるいは個人)です。
正体の殆どが不明であり、財団が発見できるのは一般に流通した後のワンダーテインメント博士の製品のみです。
ワンダーテインメント博士は子供を楽しませるための製品作りに熱心で、同封されている説明書通りに使用すれば楽しめるオモチャ等を作っています。
また、この手の組織としては珍しくカスタマーサポートも行っており、不良品による損害が発生すればその補償も行ってくれます。
ただし、製品自体の危険度が低いことは決してなく、使い方を誤れば大きな被害が発生します。
博士
財団日本支部にて確認されている「ワンダーテインメント博士の偽物」です。
一見すると子供向けの製品ですが、その実態は悪意に満ち溢れており、多くの子供たちが凄惨な目に遭って命を落としています。
ワンダーテインメント博士とは異なりアフターサービスなどもなく、意図的に危険性を隠したような説明書が付属しているのみです。
財団は博士の正体を察知できず、やはり流通後の製品の発見が精一杯の状態です。
とある製品の流通を停止させた際には、財団に対して博士本人から苦情の電話が入ったことがあり、財団の存在を察知していることが伺えます。
財団エージェント
多くの記事で登場する財団職員の区分です。
エージェントとは代理人を表す言葉で、財団の目となり手足となり様々な実務を行います。
大抵の場合はアノマリー発生の現場にいち早く急行し、事態の収拾と初期収容を行います。
状況が高度に専門的な場合は機動部隊が派遣されますが、まずはエージェントによる対応が基本となります。
現実改変(ヒューム/現実強度)
ヒュームと呼ばれる現実を構成する物質の濃度を操作することにより、自身の現実を上書きする能力を言います。
世界の現実強度(ヒューム値)は通常1で、人間や動物、様々な物品の現実強度の1です。
そのため、通常は現実性が釣り合い、任意の現実改変は不可能です。
現実改変能力は、現実強度の差によって周囲の現実に影響を与えます。
現実改変能力を持った人物や物は、自らの現実性が高いのに加えて周囲の現実強度を下げる力を併せ持つケースがあります。
例えば自身の現実強度が5であっても、周囲の現実強度を0.1まで下げる能力を併せ持つことで、より強大な現実改変を行うことが可能です。
現実改変について例えるなら、すべてが灰色一色の世界で自分だけ黒みが強い状態です。
さらに世界の色を白に近づけることができれば、自身の存在はより黒く見えるようになります。
この色の違いが現実強度の差を指します。
スクラントン現実錨
周囲の現実強度(ヒューム値)を一定に保つ装置です。
たいていの場合はヒューム値を2に固定します。
財団が保有する現実改変に対抗できる手段であり、現実改変攻撃に対する防御のほか、現実性が不安定な現場にも投入されます。
スクラントン現実錨は周囲のヒューム値を固定するのみですので、自身のヒューム値がそもそも高いタイプの現実改変者を防ぐことはできません。
逆に、周囲のヒューム値を下げて相対的に自身のヒューム値を上げる形で現実改変を行うタイプの現実改変者に対しては効果を発揮します。
例えば、現実改変者が固有で持つヒューム値が2以下であれば、スクラントン現実錨で封殺が可能です。
先の例えで言えば、周りの灰色を白に近づけられなくするということですね。
基本的にはかなり大型の設備であり持ち運びは不可能ですが、効果範囲が限定的ではあるものの小型の携帯式も開発されています。
シャンク/アナスタサコス恒常時間溝(XACTS)
効果範囲内を時間的・空間的・因果率的に隔離することで、様々な改変に対する保護を行う装置です。
これにより、現在の現実改変はもちろん、過去改変に対しても耐性を持ち、その他の現象による影響からも隔絶されます。
基本的には財団が全力を挙げて保護したい物品や装置などを効果範囲内に入れることで恒久的に保護する用途で使われます。
ただし、効果範囲内はほとんどすべての要素から隔絶されているため、範囲外の現実とのズレが発生し、その差が徐々に大きくなってしまうことが懸念されています。
認識災害
特定の情報を人間が認識することで発生する災害です。
「ヒトの認識に作用する災害」と誤解されることもありますが、「自然災害」のような言葉と同様、「認識による災害」です。
視聴覚性のものが多く、特定の図画を見ることで身体が発火したり、聴くだけでパニックを誘発したりなど様々です。
なお、あくまで「認識する」必要があるため、4ピクセルのシャイガイの写真を無意識に見ることで襲撃対象になる現象は含まれません。
ミーム
実は実際に存在する言葉でして、
ざっくり解説すると「人の認識や行動に影響する伝播する情報」のことをいいます。
例えば「電車の中では周りの人の迷惑にならないように静かにしなければならない」という一般的な考えもミームです。
もうちょっと極端に言えば「常識」や「固定観念」のことです。
例えば、少し前まで「女は結婚したら仕事を辞めて家庭に入るべきだ」という「常識」=「ミーム」を日本人の大多数が持っていましたよね。
ミーム汚染
アノマリーの中にはミーム汚染を引き起こすものも少なくありません。
ミームとは上述の通り、「人の認識や行動に影響する情報」です。
これが汚染・改竄されるということは、従来持ち合わせていた感性や行動規範が書き換わってしまうということです。
上述の例えで言えば、「女性も社会で活躍し、男性も家庭のために尽力し、互いに助け合うべきだ」という最近の考え方の変化はミーム汚染と言えます。
この例ではミーム汚染は正しい方向に進んでいますが、例えば「食べる」や「眠る」という動作の重要度が下がってしまうミーム汚染が起こると人類の存続にかかわる事態となります。(例:SCP-161-JP)
フロント団体(フロント企業)
財団を始めとした異常存在に関わる組織の幾つかは、フロント団体(フロント企業)と呼ばれる会社を持っています。
この言葉は特別なものではなく、現実においても「暴力団のフロント企業」などという使われ方をします。
経営母体を隠し、あたかも一般企業であるかのように振る舞って収入を得たり情報収集を行うのが目的です。
財団であればアノマリーの収容に当たって都合のいい業種(不動産業や建設業)など、多数のフロント企業を持っています。
まとめ
初めに書いた通り、SCP財団というコンテンツに公式設定はありません。
上述の解説群も、多くの人に支持されている設定を述べただけであり、これ以外の設定があっても何の問題もありません。
いかに面白く、恐ろしく書けるかが全てです。
この記事の内容も、SCP初心者の方が記事を読み進めていく上での助けになれれば幸いです。
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