護身術・護身グッズと聞くとどのようなイメージを持ちますか?
格闘技を基に不審者を倒したり、バットや警棒、スタンガン、果てはナイフや銃とイメージする人いるかもしれません。
つまり、護身=攻撃と考えていませんか?
私も例にもれず中学二年生頃の真っ盛りの時、この手のものに興味をもち、いろいろ恥ずかしいことをしたものですが、
この考えは正解とは言えません。
本記事では護身用品や防犯について考えていきたいと思います。
護身とは文字通り「身を護る」ことです。
護身術や護身グッズという概念自体は、暴力や犯罪と無縁の方もご存知かと思います。
一昔前は漫画雑誌の後ろの方にその手のグッズの通販記事が載っていたり、
格闘技をベースにした護身術などの情報も目にしたことがあるかもしれません。
これらの概念は、護身に役立つことは間違いないのですが、
役に立つ状況になること自体が手遅れであると考えられます。
身を護る最良の方法は、危険な目に遭わないことです。
降りかかる火の粉を払うのではなく、そもそも火を立てない、火に近づかないというのが最も重要なのです。
つまり、治安が悪そうな場所や、人気のない場所、暗い道を一人で歩くなんて状況自体が、護身術やグッズがどうこうの前に、避けるべき状況と言えます。
とはいえ、
自分がどんなに気を付けていても、安全とは言い切れない状況になることもあります。
突然火の粉が降りかかることもあるでしょう。
そうしたときに振り払ったり消火できるようにする。
そういった状況に備えるのも護身です。
有効な護身について
先に言った通り、最善なのは危険な目に遭わないことですが、
だからと言って危険な状況に対する対策を怠っていいことにはなりません。
世界的に治安の良い日本でも犯罪や事故に巻き込まれることは珍しくありません。
そして、
災害と同じで、いつどこで巻き込まれるのか分からないのです。
そういった状況に少しでも対処できるようにするために
護身術や護身グッズというものがあります。
護身術について
※本記事でいう護身術は危険からの回避ではなく、格闘技術と定義します。
世の中には格闘技をベースにした護身術の講座や道場があります。
各種格闘技の技の中から簡単かつ有効な技術を抜出し、体系化して教えてくれるようですが、
はっきり言って、これが役に立つとは全く思えません。
私は剣道をはじめ、空手や日本拳法、自衛隊では徒手格闘や銃剣格闘の訓練を受けた経験があります。
剣道以外は殆どかじった程度の物であり、だからこそ分かるのですが、
身体的な技術というのは一朝一夕では身につきません。
また、技を習得したと思っても、それが実戦でスムーズにできるかはまた別の問題です。
向かい合って合図とともに始まる格闘技においても、練習で出来た動きが出来なくなるなんてことは普通にあります。
特にルールも何もない実戦においてはその傾向が顕著です。
これには、二つの理由があります。
1. 技を掛けるタイミングが分からない
護身術として格闘技を習い、道場での稽古では相手に有効打を与えられるようになったとします。
自分に自信がつき、堂々とした振る舞いになるのは実は護身術として有効な要素ではあるのですが、、、
たとえば夜道を帰宅途中に突然路地から人が出てきたとします。
数メートル離れた先でその人は立ちどまってこちらを向いているようです。
ポケットに手を入れていて、人相は見えません。
不安に思い別の道を行くのですが、相手はついてきます。
そしてあなたの肩に手を置きました。
さて、習った技を華麗に披露して相手を転がし、逃げることができるでしょうか。
恐らく、殆どの人はその時点では何もできませんし
こちらから技をかけてていい場面では無いのです。
なぜなら、肩をつかんだ相手の素性が分からないからです。
不審者なのかもしれないですし、もしかしたら何か用のある人なのかもしれない。
そもそも正体の分からない人に、いきなり技を繰り出しますか?
護身術というのは常に受け身の概念であり、応じ技の集まりです。
つまり、何かをされるまでこちらからできることは殆どないのです。
護身術は相手が敵であることが明確な段階からを想定した訓練をします。
相手が敵かどうか明確であればまだいいのですが、
相手が敵かどうかは危害を加えられるまで分からないのが通常です。
2. 相手に技を受ける気が無い
格闘技や武道であっても、試合相手と練習相手は全く違う動きをします。
そして、その相手が不審者であるならば、さらにその差は顕著になります。
練習で出来るようになるというのは、あくまで練習という限られた環境における習得を意味します。
そもそも、格闘技術の習得とはどのような流れになるかを考えてみましょう。
- 技術が無い状態から、まずは技の原理と動きを教わる。
- 技を受けてくれる相手に対して、身体が覚えるまで技の練習する。
- 他の動きを取り入れながら、実戦を意識した動きを練習する。
- 自分に忖度してくれない相手と試合をする。
- こちらの都合が効かない相手との戦い方を試合を重ねて学ぶ。
- 実戦経験を積むことで、ある程度の状況に即応できる練度になる。
護身術をメインにした道場や講座では、せいぜい3の段階までしか学べません。
その状況で、もし不審者に対して止むを得ず実力行使をする必要に迫られたとき、
習った技が上手く決まるでしょうか?
練習相手は技に対して受け身を取ったり、必要ない力を抜いて技の効果を最大化してくれます。
しかし、実際に不審者と対峙した場合には、
掴まれた手首を捻る前に顔面を殴ってくるでしょう。
人気のない道を歩いていれば車に引きずり込んで拉致も出来ます。
いきなり刃物で切りかかってくるかもしれません。
どのタイミングで習った護身術を使えるのでしょうか。
そもそも、凶器を振り回しながら向かってくる相手に有効な護身術はありません。
対処するとしたら、逮捕術等に精通した人が警棒やサスマタなどを使って複数人で相対する必要がありますし、
そういったプロであっても、可能ならなら銃で撃つべきです。
机上の空論の域をでない訓練で身に着けた技術というのは実戦では通用しないことが常です。
護身グッズについて
上述のように、格闘技をベースにした護身術というのは使いどころが難しく、また習得には並々ならない時間と努力が必要です。
だからと言って何も手を打たないでいられるほど世界は優しくありません。
そこで役立つと考えられるのが護身グッズです。
しかし護身グッズというのはある種のロマンでもあり、
実用的でない物も含まれていることが珍しくありません。
たとえば、スタンガンや警棒も護身グッズとして売られていることがあります。
いうまでもなく、この手の製品は武器であり凶器です。
つまり、護身グッズとマイルドに表現しているだけで、
それ自体が持つ特性は相手を傷つけるための武器であるということに他なりません。
よって護身のためというのは武器を持ち歩く正当な理由にならず、携帯しているだけでお巡りさんの厄介事を増やしてしまいます。
そもそも、その武器、使えますか?
警棒やスタンガンを携帯していたからと言って、武器を用いた近接格闘をできるのでしょうか。
ほかには唐辛子スプレーなどの催涙スプレーがあり、非致死性のため安全に使えると思いますよね。
しかし、襲われたときにカバンから取り出し、相手の目をめがけて噴射するなんて芸当は簡単には出来ません。
襲われる前に噴射しようものなら、こちらが加害者になります。
つまり、使うまでは無害であり、なおかつ使ったときは必要最小限の威力を発揮することが、護身グッズが求められます。
具体的には以下の条件を満たすものでしょうか。
特徴1. 小型軽量である
どんなに優れた道具でも、装備しなければ意味が無いぞ状態となります。
大きくてかさばったり、重たくて持ち運びに不便だと、いざという時に手元になく効果を発揮できません。
理想を言えばポケットに入るくらい、最大でも手提げかばんに入るくらいが限界でしょうか。
それを常に持ち歩けるか、というのが前提条件ですね。
特徴2. 操作が簡単である
護身グッズを使用する場面というのは、危害を加えられた状態であり緊急の状況です。
緊急事態というのは人間から冷静さを奪い、複雑な思考や動作の妨げとなります。
もし安全確実に悪者を制圧できる道具があったとしても、その手順が複雑な手順を踏まなければ出来ないようでは、宝の持ち腐れとなってしまいます。
できれば片手かつワンタッチで使用できるものが望ましい条件です。
お手軽かつ強力と言われる唐辛子スプレーでさえも、以下の5段階を踏みます。
- 取り出す。
- 蓋をあける。
- 噴射方向を確認する。
- ボタン(引き金)部分に指を当てる。
- 狙って噴射する。
もし狙いを外そうものなら、何度もプッシュし続けなければなりません。
さらに、操作を誤って自分や他の人に向けて噴射してしまえば要らぬ被害を拡大させるばかりです。
よって、出来るだけシンプルかつ安全に使用できる必要があります。
特徴3. 安全であること
護身グッズはあくまで正当防衛、緊急避難に際してやむを得ず使用されることを前提としています。
これがどういうことかというと、
緊急時以外の使用はおろか、携帯することすらも違法となる可能性が高いということです。
刃物や銃については銃刀法で規制され、その他は軽犯罪法(危険物所持)の取り締まり対象になります。
防犯の為や護身のためというのは正当な理由になりません。
刃物であれば料理人、銃であれば猟師など、これから業務で使用することを証明できない限り携帯するのは違法です。
スタンガンや警棒は一般人であれば携帯することが正当な理由などないでしょう。
唐辛子スプレーも携帯していれば軽犯罪法違反となる可能性が高いです。
基本的に、日本の法律では自分の身を護るための道具(=相手を傷つける道具)を持ち歩くことは認められていません。
つまり、安全性が極めて高いものでないと普段から持ち歩くことは非常に難しいのです。
※ちなみに、所持自体は違法ではないので、自宅に保管している程度であれば問題ありません
おすすめは懐中電灯(フラッシュライト)とその理由
ここまで長々と話してようやくですが、
題名にもなっているおすすめの護身グッズの話に入ります。
みなさんご存知、懐中電灯(フラッシュライト)。
LEDの普及により、10年ほど前から小型かつ大光量の懐中電灯が市場に出回っています。
それ以前から、軍や警察などの治安組織界隈では、大光量フラッシュライトの有効性が認識されており、
視界確保の他に非致死性兵器として利用されてきました。
人間の目というのは、暗闇になれる(暗順応)のに時間が掛かり、およそ40-60分程度で瞳孔が拡大されます。
しかし、逆に夜目が潰される(明順応)のは ほぼ瞬間的であり、例えば暗順応している状態で強い光を直視すると、短時間ですが視界のほぼすべてを失います。
夜目は失い、視界の大半は焼付いた光で満たされ、視力は0の状態です。
さらに、まぶしい時に人間は手を挙げ顔をかばう習性があり、さらに隙が生まれます。
軍や警察は敵を拘束したり射殺したりするのに、その隙を活用しています。
これをそのまま防犯、護身に活用しようという考えです。
おすすめの理由① 視界が確保できる
もはや説明不要ですが、夜道を歩くときに懐中電灯をつけると
足元や前方の視界が確保され、危険物に気付きやすくなります。
そもそも見えていないものに対応するのは不可能であり、
安全確保=視界確保といってもいいほどに前提になる条件です。
周囲を照らしながら人が潜めそうな暗がりを照らして歩くのも防犯の面から有効です。
そして、夜道を歩く際に懐中電灯を使用するのは明らかに正当な理由であり、問題になることもありません。
おすすめの理由② 安全かつ効果的
懐中電灯は光を発する道具であり、そこに危険な使い方というものはありません。
使用方法も極めてシンプルで、スイッチを押すだけです。
武器になる他の道具に比べて誤った使い方をした時のリスクがありません。
鞄やポケットに無造作に突っ込んでも問題ありませんし、細心の注意を払って使用するものでもありません。
せいぜい意図せぬところでスイッチが入って電池を消耗するくらいです。
さらに、道を照らす以外にも人が潜めそうな暗がりを照らすこともできます。
もし明らかに不審者が現れた場合は、顔に向けて照射すれば大きな隙を作り出すことができますし、最悪ライトでぶんなぐることもできます。
万が一、普通の人を照らしてしまったとしても、まぶしい思いをさせるだけなので大きな問題にはなりません。その時は謝罪しましょう。
人を襲おうとする者は不意打ちを好みますので、ライトで照らされることは大きな抑止力になります。
これは不審者対策に挨拶をしましょうという教えと同じです。
それに、周囲に対して自分の存在を知らせることができるので、もしもの場合は気付いてもらえる可能性も高まります。
おすすめの理由③ 携帯する正当な理由がある
暗い夜道を歩くのに懐中電灯を使用するのは正当な理由になります。
自身の視界確保の為であり、光を発するので他の歩行者や車に存在をアピールできます。
それだけでも自分の身を護ることに繋がり、むしろ夜で歩く際は使用するべきであると言えます。
携帯時の注意点
上記にて、懐中電灯を持ち歩くことは正当な理由になりやすいと書きましたが、
実は携帯が違法になるケースがあります。
それは、隠し持っていた場合です。
軽犯罪法第1条3号(侵入具携帯の罪)では、住居への侵入に使える器具を隠して携帯することを禁止しています。
最近では2017年9月に懐中電灯を隠し持っていたという容疑で逮捕された人もいます。
しかし、単純に隠し持っていた(ポケットやカバンに入れていた)だけで成立することはまずないと思っていいです。
実際にはその人の挙動など全体の状況を鑑みて判断されます。
つまり、使いながら歩いているくらいなら何の問題にもなりませんし、普通に過ごしていればカバンにライトが入っていること自体が問題になることは無いでしょう。
なので過剰に警戒する必要はありませんが、参考に覚えておいた方がいい情報かと思います。
おすすめのライトとホルスター
私が実際に使用してきた中でおすすめの製品です。
【ライト】GENTOS USB充電式ライト
私はライトを複数本所持しているのですが、この製品は頻繁に使用しています。
450・220・50ルーメンと3段階に光度を変更できるライトで、
最大の450ルーメンで100メートル程度まで問題なく照らすことができます。
真ん中の220ルーメンも一般の懐中電灯としては非常に明るい部類です。
通常使いでは220か50ルーメンで何の問題もありません。
本製品の最大の特徴は、本体にマイクロUSB端子があり充電が可能という点です。
この手のライトは大光量であるがゆえに、電池の持ちはお世辞にも良いとは言えません。
最大の450ルーメンでは数時間程度の連続使用で電池が切れるでしょう。
しかし、充電可能であることで電池を買い替えることもなく継続して使用できます。
とはいえ、電力消費が大きいと言っても、
私は会社の帰り道(20分程度)で使用しており、1週間以上は充電が持ちます。
土日に充電して月曜に持っていくというルーチンで何の問題もありません。
【ホルスター】NITEIZE ライトホルスターストレッチ
正直なところ、ライトはある程度明るければ何でもいいのですが、
このホルスターは持ち歩きや使用時に非常に重宝しています。
このホルスターは伸縮性のある布でライトを抑え保持するタイプで、
ある程度の直径であればライトを選びません。
出し入れも簡単で、程よい圧迫感でスムーズにできます。
ベルトに着けるアタッチメントがあり、私はリュックの肩ひもに着けています。
会社帰りなどは肩から足元を照らす形で使用しています。
この製品で最もお勧めのポイントなのですが、
ベルト装着用のアタッチメントを基点に、8段階の回転が可能です。
この機能のおかげで、腰のベルトに装着したときに、ライトを前方に向けて照らすことができます。
手ぶらで前方を照らすことができ、
犬の散歩や買い物帰りなどで手がふさがるときに非常に便利です。
このホルスターに関しては今までに3つ購入しているくらい気に入っています。
※壊れやすいわけではなく、1つは8年ほど使い伸縮性が弱くなったため買い替え、今は会社用のリュックに1つと外出用に1つ使用しています。
まとめ
長々とお話ししましたが、初めにお伝えした通り、
最良の護身は護身術や護身グッズが役に立つ状況に陥らないように気を付けた生活をすることです。
しかし、長い人生の中で何が起こるかは分かりません。
危険なことには関わらないのだからと対策を怠るのは油断が過ぎると思います。
こちらにその気が無くても、周りの状況次第では危険な目に遭うこともあるでしょう。
そういったときに、効果的でない対策をしていたがために、避けれらるはずの被害を受けてしまわないように対策していきましょう。
メディアの発達で犯罪が目立つようになったために、危険な世界になったと勘違いしやすいですが、年々凶悪犯罪は減っています。
なので、過剰に怖がる必要はありませんが、犯罪が無くなったわけではありません。
いつどこで巻き込まれるか分からない災害と同様に、適切な備えをすることが大切だと考えます。
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