ご存知、日本は国防に関しては日本独自の概念である【専守防衛】を是としており、自衛隊という防衛組織を保有しています。
専守防衛とはあくまで危害を加える国やそれに準じる組織からの攻撃に対して、防衛のために必要最低限の防衛力を行使するという考え方で、現状の日本はどんな事情があれど他国を攻撃することは出来ません。
つまり、こちらからは決して喧嘩を吹っかけることは無いものの、喧嘩を売られた際には敵対者を追い払うことを目的としています。
この考えについては非常に素晴らしいものだと考えますが、実情に基づいては懸念されることが幾つかあります。
本記事では、日本の防衛戦略である【専守防衛】によって考えられる懸念、実際に戦争になった場合の終わらせ方について考察します。
Twitter:@tanshilog
日本の基本的防衛戦略
第二次世界大戦終結後、大日本帝国から日本国に変わり、連合国(アメリカ)の統治により、社会体制や考え方などが大きく変わりました。
米国から要求された日本国憲法の草案に合わせて、当初は軍を持たず、朝鮮戦争の影響から【警察予備隊】の創設を求められるにとどまっていました。
そこから発展した防衛組織が陸海空の自衛隊です。
自衛隊は敵基地攻撃能力を持たず、日本領内での戦闘行動に特化した専守防衛のための組織となります。
装備や訓練も国内での運用に特化しており、分かりやすい例としては、陸上自衛隊の迷彩パターンは日本の植生にてもっとも偽装効果が高くなるデザインです。
対して米軍は全領域対応型のマルチカムを採用しています。
日米安全保障条約
詳細は専門的なサイト等に譲るとして、簡単に言ってしまえば日米地位協定を基にした軍事同盟のことです。
日本の防衛戦略には、本条約を基にした米軍の軍事的支援が前提として組み込まれています。
懸念点
戦場が日本国内に限定される
基本的に国防というのは自国領域内の安全を守ることであり、国土や国民に被害を出してしまうのは避けるべきとの考えから、自国領域外で敵対勢力を食い止めることが一般的です。
しかし、日本の専守防衛のスタンスから、仮に戦争となった場合は日本国内で敵対勢力が軍事行為をしてから対処という、どうあがいても被害が発生するという対応になります。
当然、追い出すところから始めるため、国土にも国民にも甚大な被害が予想されます。
「武力攻撃を受けて初めて防衛力を行使する」というのは、例えるなら不審者が家の中に侵入し、家屋内を荒らしまわったり、家人を傷つけてから警察を呼ぶようなものです。
通常であれば家の前に不審者がいる時点で警察を呼ぶのが一般的です。
さらに、他国を刺激する(それらの国も自前の強力な軍隊を持っているにもかかわらず)という理由で軍備増強も行うのを渋るため、これも例えるなら泥棒を刺激するからと家のドアに鍵をかけず、カーテンも閉めないようなものでしょう。
米軍の支援ありきの戦略
日本とアメリカ合衆国は同盟国であり、軍事的にも非常に緊密に連携しています。
日米安全保障条約を基に、米軍は日本国内に部隊を駐留させています(在日米軍)。
彼らは日本を防衛する戦力ではあるのですが、日本国土や国民を守るためというよりは、仮想敵国の中国やロシアへの擁壁として日本に戦略的な優位性をがあり、それを守るためという意味合いが大きいと思われます。
つまり、「東京を守るためにワシントンへの攻撃を覚悟して防衛してくれるか」、というと、「それは状況による」としか言えないでしょう。
基本的には、自国の防衛は独力ですべきというのが世界的な常識です。そのために各国は自前で軍隊等を配備しているのです。
それは日本の軍備増強に反対気味の中国や韓国、ロシアも例外ではありません。みんな他国に侵攻出来る強力な軍隊を持っています。
一時期話題になった集団的自衛権についても、あくまで「同盟国へ行われている軍事交によって自国に被害が及ぶ」と判断した場合に行使されるものに過ぎません。
同盟国だからと言って無条件に軍事的な支援を行うわけではないのです。
恐らく、日本が戦争に巻き込まれれば米国が参戦してくれる可能性は高いでしょう。しかし、だからと言って手放しでおんぶにだっこというわけにはいきません。
何せ、その結果いかんによっては日本国民の血が流れることになるのですから。
戦争の終わらせ方について
戦争の始まりというのは様々な要因がありますが、終わり方は以下の2種類だけです。
- どちらかが勝利する(どちらかが敗北する)
- 攻め込んだ側が侵攻をやめる
どちらの場合も、かなりの被害が発生するのは間違いありません。
1.どちらかが勝利する(どちらかが敗北する)
1.の場合、たとえば日本が攻め込まれた場合は、相手国そのものを攻撃することは憲法上も自衛隊の保有する戦力上も不可能な為、勝利して終戦を迎えることは出来ません。
つまり、いつまでも防衛戦を続けるか、負けるか、の二択しか選択肢は無いのです。
第二次世界大戦終結後、日本は敗戦国になりましたが、ある程度民族的に尊重され、人道的に扱われた結果、ここまでの発展をすることが出来ました。
しかし、これから、いつかあるかもしれない戦争に負けてしまったとき、その国の軍隊がアメリカと同じように扱ってくれるとは限りません。
むしろ、そうでない国が敵になることが考えられます。
日本は先の戦争に負けても それほど 文化を否定されたり、人権をはく奪されたり、命を粗末に扱われないという歴史をもっているのでイメージしにくいかもしれません。
しかし、チェチェンやウイグル、アフリカ諸国の内戦地を少し調べれば、それがどれだけ稀有なケースか分かると思います。
2.攻め込んだ側が侵攻をやめる
2.の場合、日本独力で対応した場合は、攻め込んできた敵戦力を日本国内から排除し侵攻を防ぐことは出来ますが、日本領の外にいる敵に対しては手出しができません。
つまり、敵軍は必要に応じて撤退しやすい上に、自分の好きなタイミングで攻撃に転じることが出来るのです。日本にできることは迎撃のみです。
しかし、自衛隊が「日本を防衛するための最小限の実力」である以上、敵国軍を壊滅させる力はありませんし、それは自衛権の範囲を超えると(国内からは)解釈されるでしょう。
よって、撃退に際して侵攻戦力をよほど大規模に喪失させるか、諸外国が敵国に対して外交的・軍事的圧力を与えて武力行使をやめるのを待つしかありません。
要するに自力で解決することは出来ず、敵国に占領されるか、諸外国に助けてもらうまで最低限度の防衛戦を展開するしかないのです。
まとめ
善悪の判断というのは大義によって左右されるものであり、一概にこれが良い悪いと論じることは出来ません。
ただ、どんな時でも変わらないのは、結局のところ自分(自国)の安全は自ら守らねばならず、他国に依存している限りは対等な立場になれないということです。
日本の防衛戦略には米軍の強大な戦力が加えられていますが、裏を返せば米軍の支援無くしては成り立たない可能性があります。
自衛隊がどれだけ練度が高く、強力な装備を持っていたとしても、それを動かす仕組みが確立されていなければ、十分な働きが出来ずに多くの命が危険にされされるでしょう。
平和的な紛争解決が確立できれば、人類は一歩次のステージに進むことになるでしょう。
しかし、現状は残念ながらそうはなっていません。
銃を突き付けて言うことを聞かせるのは「平和的解決」ではありません。
たとえ一発も撃たずに誰も死ななかったとしても、相手の意見を殺しているのです。
しかし、今の世界ではこれが一番人命が奪われない一見平和的な解決なのかもしれません。
世界の仕組みが未だそうであるならば、平和的な紛争解決の方法を模索しながら、並行して直面しうる脅威に備えるべきでしょう。
自分が武装を解除し、戦争をしないことを表明したところで世界平和のために貢献など出来てはいないのです。
家の鍵を閉めるのを辞め、扉を開け放ち、貴重品を金庫に入れるのをやめれば泥棒はいなくなるのでしょうか。
中にはそう考えている人もいるようですが、残念ながらそんなに優しい世界ではないのでしょう。
この記事を書いた理由は、怖いからです。
私は、意味の分からない理由をでっち上げて、さも自分たちには大義があると国内外に大法螺を吹き、隣接する他国に侵攻する大国が未だにあることに恐怖を感じています。
2022年にもなって、世界を滅ぼせるだけの戦力を持った国ですら、このような暴挙を行うのです。
そして、北方領土問題を抱える日本が、侵攻の対象になる可能性はどうしたって排除できません。
私には2歳にもならない子供がいます。
この子が大きくなったとき、「昔はみんなで学校に通ったり友達と出かけたりできたし、好きに物を言えたんだよ」なんて昔話を攻撃に怯えながらすることになるのはごめんです。
今より悲惨な世界になっていなければいいと本気で思っています。
今だって完璧に平和で幸せな世界ではないですが、だからと言ってこれ以上悪くなってほしいなんて微塵も思いません。
いつまでも戦後ではいられません。
先の大戦から戦争のやり方も兵器の威力も変わりました。
国防についても世界から置いて行かれ、いざという時に取り返しのつかないことにならないよう祈っています。
Twitter:@tanshilog
コメント