発注業務において切っても切り離せない法律である【下請法】
正式名称は下請代金支払遅延等防止法となり、取引において立場の低くなりやすい下請事業者を保護するための法律です。
管轄する組織は公正取引委員会と中小企業庁であり、毎年書面での検査を行っているほか、下請事業者からの申し入れに応じて、随時立ち入り検査を実施しています。
下請事業者を保護する、という目的の為、基本的には疑わしい点があれば親事業者が違反しているのではないかという前提で監査を行います。
そして毎年、知ってから知らずか、下請法違反をしていることを摘発され、罰金や改善指導、一般社会への公表と言う形で罰則を与えられる企業が多くあるのです。
この記事では、下請法にて規定されている「親事業者の4つの義務」と「11の禁止事項」について解説します。
法律あるあるですが、冗長な言い回しが多いため非常に読みにくいです。
分かりやすくするために、各項目の一番最後に「簡単に言うとこういうことだよ」というセンテンスを記載しています。
それ以外の部分は、やはりどうしても読みにくい文章となってしまうことはご了承ください。
Twitter:@tanshilog
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- 下請法の概要
- 親事業者の4つの義務
- 親事業者の11の禁止事項
- 1 受領拒否の禁止(同法 第4条第1項第1号)
- 2 下請代金の支払い遅延の禁止(同法 第4条第1項第2号)
- 3 下請代金の減額の禁止(同法 第4条第1項第4号)
- 4 返品の禁止(同法 第4条第1項第3号)
- 5 買いたたきの禁止(同法 第4条第1項第5号)
- 6 購入・利用強制の禁止(同法 第4条第1項第6号)
- 8 報復措置の禁止(同法 第4条第1項第7号)
- 8 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(同法 第4条第2項第1号)
- 9 割引困難な手形の交付の禁止(同法 第4条第2項第2号)
- 10 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(同法 第4条第2項第3号)
- 11 不当な給付内容の変更および不当なやり直しの禁止(同法 第4条第2項第4号)
- まとめ
下請法の概要
下請代金支払遅延等防止法という名前の通り、第一の目的は親事業者に対して立場の低くなりやすい下請事業者の利益を保護するための法律です。
違反により親事業者が利益を得るかどうかでは無く、下請事業者が不利益を被るかが問題となります。
下請法に違反しようとする意図が無くても、また違反行為であるという認識が無くても、違反は違反。
下請事業者との合意の有無にかかわらず、違反行為は違反として扱われる性質上、下請事業者と交わした合意を示す議事録等も、親事業者の圧力もしくは取引上の優位性を持って半強制したと判断される可能性があるため、絶対の防壁にはなりません。
つまり、知らずにとはいえ、違反行為をした時点でアウトとなります。
本法の違反行為の調査、発覚、処置については以下の流れ。
適用される取引
1 製造委託契約(加工品製作等)
2 修理委託契約(工具や設備等の修理)
3 情報成果物の作成委託契約(社内システム作成・図面作成等)
4 役務の提供委託契約(設備の組付・清掃等の作業)
適用される事業者
親事業者の資本金:3億円以上/下請事業者の資本金:3億円以下
もしくは
親事業者の資本金:1千万円~3億円以下/下請事業者の資本金:1千万円以下
親事業者の4つの義務
1 書面の交付義務(同法 第3条)
【概要】
取引内容(下記の必要記載事項)を記載した注文書等の書面(条項から3条書面と呼称される)を作成し、下請事業者に交付する義務。
【目的】
口頭発注では、発注内容・支払条件が不明確でトラブルになりやすく、トラブルの際には下請事業者が不利益をこうむることが多く、こういったトラブルを未然に防止するため。
【書面交付について】
書面の交付は発注の都度行うのが原則であるが、継続的に取引が行われ、かつ基本的事項が一定している場合には、これらをあらかじめ書面で通知することで、個々の発注書面への記載が不要になる。
その場合は3条書面に「支払方法等は現行の(指定の書面)による」などを付記する必要がある。
【必要記載事項】
① 親事業者及び下請事業者の名称
② 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、または役務提供委託をした日
③ 下請事業者の給付の内容
④ 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務がて供される期日、または期間)
⑤ 下請事業者の給付を受領する場所
⑥ 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は、検査を完了する期日
⑦ 下請代金の額(算定方法による記載も可 時間単価○円×実績時間等)
⑧ 支払代金の支払期日
⑨ 手形を交付する場合は、手形の金額(支払利率でも可)及び手形の満期
⑩ 一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付または支払可能額、親事業者が支払代金債権相当額または下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
⑪ 電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額および電子記録債権の満期日
⑫ 原材料等を有償支給する場合は、品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日および決済方法
簡単にまとめると
必要事項を全て記載した書面を発行し、誰が見ても内容が分かるように契約を結びなさい。
それ以外の口頭などでの発注は認められない。
2 支払期日を定める義務(同法 第2条の2)
【概要】
親事業者は下請事業者との合意の下に、下請事業者からの給付の内容について検査するかどうかを問わず、物品を受領した日(役務の提供をした日)から起算して60日以内かつ出来る限り短い期間内で下請代金の支払期日を定める義務。
【目的】
親事業者が下請代金の支払い日を不当に遅く設定する恐れがあり、下請事業者の利益を保護するため。
【支払期日の考え方】
支払期日を定めなかった場合は、物品等を受領した日が支払期日である。
また、当事者間で合意して支払期日を60日以上に設定した場合でも、それは無効となり、受領した日から起算して60日経過した日の前日が支払期日となる。
簡単にまとめると
支払期日をモノを受け取ってから60日以内内に、
それもなるべく早い日程で定めなさい。
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3 書類の作成・保存義務(同法 第5条)
【概要】
親事業者は、下請事業者に本法の適用対象となる取引を委託した場合は、給付の内容、下請代金の額など、下記の具体的必要記載事項について記載した書類(条項から5条書類と呼称)を作成し、2年間保管する義務。
【目的】
下請取引におけるトラブルの未然防止、および行政機関の検査の迅速さ、正確さを確保するため。
【3条書面との違い】
3条書面の記載事項に対して、5条書面は取引の経緯を記載するものであることから、求められる内容が異なる(3条書面+α)。
【必要記載事項】
① 下請事業者の名称
② 製造委託、修理委託、情報成果物製作委託または役務提供委託をした日
③ 下請事業者の給付の内容
④ 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は、役務が提供される期日・期間)
⑤ 下請事業者から受領した給付の内容及び給付を受領した日(役務提供委託の場合は、役務が提供された日・期間)
⑥ 下請事業者の給付の内容について検査をした場合は、検査を完了した日、検査の結果および検査に合格しなかった給付の取り扱い
⑦ 下請事業者の給付の内容について、変更またはやり直しをさせた場合は、内容及び理由
⑧下請代金の額
⑨下請代金の支払期日
⑩下請代金の額に変更があった場合は、増減額および理由
⑪支払った下請代金の額、支払った費及び支払い手段
⑫下請代金の支払いにつき手形を交付した場合は、手形の金額、手形を交付した日および手形の満期
⑬一括決済方式で支払うこととした場合は、金融機関から貸付または支払を受けることが出来ることとした額及び期間の始期並びに親事業者が下請代金債権相当額または下請代金債務相当額を金融機関へ支払った日
⑭電子記録債権で支払うこととした場合は、電子記録債権の額、下請事業者が下請代金のしゃらいを受けることが出来ることとした期間の始期および電子記録債権の満期日
⑮原材料等を有償支給した場合は、その品名、数量、対価、引渡しの日、決裁をした日および決済方法
⑯下請代金の一部を支払または原材料等の対価を控除した場合は、その後の下請代金の残額
⑰遅延利息を支払った場合は、遅延利息の額及び遅延利息を支払った日
簡単にまとめると
誰と、いつ、どんな契約を結び、どのように完了したのか、客観的に分かる書面を発行し保管しなさい。
4 遅延利息の支払い義務(同法 第4条の2)
【概要】
下請代金を支払期日までに支払わなかった場合、物品等を受領した日から起算して60日経過した日から実際に支払いをする日までの期間について、日数に応じて当該未払い金に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務。
【目的】
下請取引の性格上、親事業者と下請事業者の間で自主的に遅延利息を約定するのは難しく、規定を定めることで下請事業者の利益を保護するため。
【下請代金の支払い遅延は違法行為】
根本的に、支払遅延は本法に違反する行為であるため、遅延利息を支払えば下請代金の支払いを遅らせて良いというわけではない。 資金的体力が十分でない下請事業者にとって、支払遅延は死活問題に直結する。
簡単にまとめると
代金の支払いを遅らせてはいけません。
もし万が一遅らせてしまったのなら利息を払いなさい。
利息を払えば遅らせても良いというわけではないので勘違いしないように。
親事業者の11の禁止事項
1 受領拒否の禁止(同法 第4条第1項第1号)
【概要】
親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について、下請事業者が納入してきた場合に、下請事業者に非が無いのに受領を拒否してはいけない。
【目的】
下請取引において委託される物品等は、親事業者の仕様等に基づいた特殊仕様のものが多く、受領を拒否されると他者への転売が不可能であり、下請事業者の利益が著しく損なわれるので、これを防止するため。
【受領の考え方】
下請業者が納入したものを検査の有無にかかわらず受け取るという行為と定義される。 親事業者の支配下に事実上置かれれば受領となるし、下請事業者の工場等へ親事業者の検査員が出張して検査を開始すれば受領となる。
【受領拒否に該当する行為】
基本的には下請事業者が納入する給付の目的物の受取を拒むことを言うが、下記行為も受領拒否に含まれる。
- 発注の取り消し(契約の解除)をして、受領しないこと。
- 納期を延長して受領しないこと。
- 発注後に恣意的な検査基準の編子をし、従来であれば合格とされたものを不合格とすること。
- 取引の過程において、注文内容について下請事業者が親事業者に確認し、親事業者の了承の通りに作成したにもかかわらず、注文と異なるとすること。
【下請事業者の攻めに帰すべき理由について】
以下の場合に限定される。
- 注文と異なる物または給付に貸し等がある物が納入された場合。
- 指定した納期までに納入されなかったため、そのものが不要になった場合(ただし指定納期に無理が無い場合に限る)。
【指定納期前に下請事業者から納品された場合】
親事業者に、納期前の納品を受け取る義務は無く、受取を拒んでも受領拒否とはならない。
とはいえ、下請事業者の要請に応じて物品を受け取ることが望ましく、その場合は「仮受領」する旨を伝え、納期まで物品を保管することで3条書面に記載された支払期日に代金を支払えば良い。
仮受領とせずに受領した場合は、指定納期前であっても支払期日までの起算日がその日となる。
【違反事例】
① 自社の生産計画を変更したことを理由に、製造委託をした部品の受領を一部拒否した。
下請事業者に責は一切ないため、違反行為である。
② 自社の売れ行き不振による在庫過多により、指定納期に納品しようとした物品を一旦受け取らず、1-2か月後に再納品させることで在庫調整をしていた。
親事業者の都合により一方的に納期を延長して受領しないため、違反行為である。
③ 緊急で必要になった製品の製作を2社に発注し、それぞれの下請事業者は割高な材料で特急製作を実施したものの、片方の納期が間に合ったため、他方の製品は不要として注文を取り消した。
親事業者の都合により一方的に発注を取消して受領を拒否したため、違反行為である。
④ 製作依頼した製品が、エンドユーザーからの仕様変更により不要となったため、受領を拒否した。
仕様変更に伴う要不要の問題は、親事業者とエンドユーザーの問題の為、下請事業者の給付は受領しなければ、違反行為である。
簡単にまとめると
頼んだものは受け取りなさい。そして代金を支払いなさい。
あなたが欲しくなかろうがエンドユーザーが欲しくなかろうが関係ありません。
2 下請代金の支払い遅延の禁止(同法 第4条第1項第2号)
【概要】
親事業者は物品等を受領した日(役務提供委託の場合は役務が提供された日)から起算して60日以内に定めた支払期日を超えて下請代金の支払いを遅延してはいけない。
あくまで受領した日が起算の為、検査や検収に関わらず支払期日を超えてはいけない。
【目的】
支払遅延により、下請事業者の資金繰りに影響を与え、経営の安定を損なうので、これを防止するため。
【支払遅延に該当する行為】
- 親事業者と下請事業者との間で支払期日が給付の受領日から60日以内に定められている場合、その定められた期日までに支払われない時。
- 当事者間で、支払期日が給付から60日を超えてい定められている場合は、受領日から60日目までに支払われない時(そもそも、本法に定める範囲を超えて支払期日が設定されているため、この場合は「第2条の2」違反である)。
- 当事者間で特定の支払期日が定められていない場合は、その給付の受領日に支払われない時。
【遅延利息】
「第4条の2遅延利息の支払い義務)」にあるように、支払遅延の場合は親事業者は下請事業者に対して、受領後60日を経過した日から支払いをする日までの期間について、年率14.6%の遅延利息を支払う義務がある。
【支払制度】
下請代金を毎月の特定日に支払うとされている場合の具体的支払制度には、納品締切制度と検収締切制度の2通りがある。
特に検収締切制度、締めを月末、支払日を翌月末としている場合、「受領後60日以内」の縛りは、「受領後2ヶ月以内(31日の月、30日の月を問わない)」として運用される。
この場合は、月末の締め切り後1ヶ月(30日以内)に支払わなければならないことになる。
また、検査完了後に検収とする際は、検査の完了が翌月にずれ込むことにより検収月が1ヶ月ずれてしまい、受領後60日を超えてしまうことがあるので、注意が必要である。
【やり直しをさせた場合の支払期日の起算日】
納品物に下請事業者の責めに帰すべき理由があり、下請代金の支払い前にやり直しをさせた場合は、やり直し後の受領日が支払期日の起算日となる。
【情報成果物作成委託における受領日の考え方と支払期日の起算日】
情報成果物作成委託における成果物は外形的に完成度が判断できないため、下記の特例的対応が認められている(製造委託、修理委託の場合は認められていない)。
情報成果物の作成過程において、状況の確認や今後の作業指示を行うために注文品を一時的に親事業者の支配下に置く場合がある。 この時、①注文品が委託内容の水準に達しているかどうかが明らかでなく、②あらかじめ当事者間で親事業者の支配下に置いた注文品の内容が一定の水準に達していると確認した時点で受領とすることを合意している場合は、その時点を受領日とし、親事業者の支配下に置いた時点を直ちに受領日とはしない。 ただし、3条書面に記載した納期に、親事業者の支配下にあれば、内容の確認が終了しているかどうかにかかわらず、当該納期日を受領日とする。
【役務提供委託における支払期日の起算日】
原則として下請事業者が提供する役務が提供された日が起算日となる。
ただし、役務の提供に日数を要する場合は、当該役務が完了した日が起算日となる。 他にも、一定期間の役務提供の継続をし、それが次の期間に連続して提供される場合は次の要件を満たせば当該月の末日に当該役務が提供された物とする。
① 当事者間で協議の上、月単位で設定される締切対象期間の末日までに提供した役務に対して支払われることがあらかじめ合意され、その旨が3条書面に記載されている。
② 当該機関の下請代金の額(算定方法でも可)が3条書面に明記されている。
③ 下請事業者が連続して提供する役務が同種のものである。 この場合は、締切後の60日(2ヶ月)以内に支払うことが認められる。
なお、ここの役務が連続して提供される期間が1か月未満の場合は、当該機関の末日が起算日となる.
【金融機関の休業日について】
支払日が土曜日または日曜日に当たるなど、順延する期間が2日以内である場合に限って、当事者間で支払日を金融機関の翌営業日とすることをあらかじめ合意し書面化していれば、60日(2ヶ月)を超えて支払われても問題ないとされる。
なお、順延後の支払期日が受領の60日(2ヶ月)以内となる場合は、当事者間であらかじめその旨が合意・書面化されていれば、金融機関の休業日による順延期間が2日を超えても問題ない。
【違反事例】
① 下請事業者からの請求書に基づいて支払いをしているが、下請事業者からの請求書の提出が遅れたため、支払期日までに払わなかった。
下請事業者からの請求書の有る無しに関わらず期日までに支払う義務がある。
② 下請事業者から当月納入分を翌月納入分として扱ってほしいと依頼され、下請代金を翌月納入とみなして支払った。
本法は当事者間の合意に関わらず、あくまで受領した日から60日以内に定めた期日に支払う義務がある。
③ 当月に納品された成果物の検査に時間がかかり、検査完了が翌月になったため翌月検収として扱い、支払いが受領から60日経過以降に行われた。
あくまで受領日が起算日となるため違反。
簡単にまとめると
頼んだものを受け取ったなら、その日から60日以内のなるべく早い日程で代金を支払いなさい。
3 下請代金の減額の禁止(同法 第4条第1項第4号)
【概要】
親事業者は、発注時に決定した下請代金を「下請事業者の責に帰すべき理由」が無いにもかかわらず発注後に減額してはいけない。
【目的】
下請取引においては、下請事業者の立場が弱いため、一旦決定された代金を事後に減額するよう要請されやすいうえに、このような要求を拒否するのが難しく、下請事業者の利益が損なわれることを防止するため。
【減額の考え方】
減額の名目、方法、金額の大小にかかわらず、発注後のいつの時点で行われたとしても本法違反となる。
下請事業者との合意の有無にかかわらず、下請事業者の責任ではない理由で3条書面に記載された代金から減額されると本法違反となる。
【下請事業者の責に帰すべき理由】
具体的に次の場合に限定されている。
- 下請事業者の瑕疵、納期遅れによって、受領拒否・返品した場合に、その給付に係る代金の減額をするとき 。
- 下請事業者の瑕疵、納期遅れによって、受領拒否・返品できるのに、そうしないで親事業者自らが手直しをした場合に、手直しに要した費用を減額するとき。
- 瑕疵等の存在または納期遅れによる商品価値の低下が明らかな場合に、客観的に相当と認められる額を減じるとき。
【違反事例】
① 新たに発注する予定の内容について単価引き下げについての合意がされた際、すでに発注済みの同一内容にも新単価を適用する。
発注時に決定していた下請代金を下請事業者の責が無いにもかかわらず減額することとなるため違反。
② 下請代金の振込手数料を下請事業者に負担させる。
発注時に決定していた下請代金を下請事業者の責が無いにもかかわらず減額することとなるため違反。
③ 1円以上の単位の切り捨てて支払いを行う。
発注時に決定していた下請代金を下請事業者の責が無いにもかかわらず減額することとなるため違反。
簡単にまとめると
約束を守りなさい。つまりは、支払うと言った額は支払なさい。
4 返品の禁止(同法 第4条第1項第3号)
【概要】
親事業者は下請事業者から納入された物品等を受領した後に、その物品等に瑕疵があるなど明らかに下請事業者に責任がある場合において、受領後速やかに不良品を返品することは問題ないが、それ以外の場合に受領後に返品すると本法違反となる。
【目的】
受領拒否の禁止と同様の目的であり、納品された物品等を不当に返品されることは下請事業者の使役を損なうことになるので、これを防止する為。
【下請事業者の責に帰すべき理由】
具体的に次の場合に限定されている。
- 注文と異なる物品等が納入された場合。
- 汚損、既存等された物品等が納入された場合。
ただし、親事業者が発注後に恣意的に検査基準を変更し、従来の検査基準では合格とされた物品を不合格とした場合の返品は認められない。
【返品することのできる期間】
- 直ちに発見できる瑕疵の場合。 通常の検査で直ちに発見できる瑕疵の場合は、発見次第速やかに返品する必要がある。 親事業者が全数検査を実施する場合、受領後の検査に要する標準的な期間内で不合格品を返品することは認められるが、意図的に検査期間を延ばし、その後に返品することは認められない。
- 直ちに発見出来ない瑕疵の場合。 通常の検査で直ちに発見できない化して、ある程度期間が経過したのちに発見された瑕疵については、その瑕疵が下請事業者に責任がある物である場合、受領後6ヶ月以内の返品は問題ない。
6ヶ月を超えた後に返品するのは違反。 ただし、一般消費者に対して6ヶ月を超えて品質保証期間を定めている場合には、その保証期間に応じて最長1年以内であれば返品が出来る。
【違反事例】
① 受入検査を行わない場合に、不良品が発見されたときの返品。
検査を行っていない以上、下請事業者の責任であるか判断できないため違反。
② 商品の入れ替えや客先からのキャンセルにより不要になったものの返品。
下請事業者の責めに帰すべき理由が無いため違反。
③ 納入された商品の下請事業者による検査を書面で委託していないにもかかわらず、受領後に不良品があったとして返品。
検査を行っていない(ことになっている)以上、下請事業者の責任であるか判断できないため違反。
簡単にまとめると
頼んだものがキチンと納められたのなら受け取りなさい。
下請事業者に関係のない勝手な理由で返さない。
5 買いたたきの禁止(同法 第4条第1項第5号)
【概要】
親事業者は、発注に際して下請代金の額を決定する際に、発注した内容と同種または類似の給付の内容に対して、通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めてはいけない。
【目的】
親事業者が、その地位を利用して、通常支払われるべき対価に比べて著しく低い額を下請事業者に押し付けることは、下請事業者の利益を損なうので、これを防止するため。
【下請代金の減額との関係】
「買いたたき(本法)」が定める状況が、親事業者が下請事業者に発注する時点で生じるものであるのに対して、
「下請代金の減額」は一旦決定された発注金額を事後に減じることについて定めている。
【通常支払われる対価とは】
- 同種または類似の給付・役務の内容について、実際に取引されている価格のことをいう。市場価格の調査、同業他社との相見積によって判断される。
- 市場価格の把握が困難な場合は、同種または類似の内容に係る従来の取引価格をいう。
【買いたたきの考え方】
次のような要素を勘案して、「買いたたき」かどうかを総合的に判断される。
- 価格決定に当たり、下請事業者と十分な協議が行われたかというような、価格決定の方法。
- 当該取引において価格を判断する根拠となる要素(差別性)があるか。
- 「通常支払われる対価」と当該取引の対価の乖離状況。
- 当該給付に必要な原材料等の価格動向 。
【違反事例】
① 大量に発注することを前提にした単価による少量の発注。
通常支払われる対価に対して低い額を定める根拠が無いため違反。
② 一律一定率の単価引き下げ。
通常支払われる対価に対して低い額を定める根拠が無いため違反。
③ 親事業者の目標額等を基準として一方的に価格を定めた。
通常支払われる対価に対して低い額を定める根拠が無いため違反。
④ 短納期発注による買いたたき。
短納期発注を行う際に、休日手当や残業手当による下請事業者の費用増を考慮せずに著しく低い金額を定めたため違反。
簡単にまとめると
頼んだことに見合うだけの代金を支払う意識を持ちなさい。
親事業者の都合でワガママを言わない。
6 購入・利用強制の禁止(同法 第4条第1項第6号)
【概要】
親事業者は下請事業者に注文した給付内容の均一性を維持するためなどの正当な理由が無いのに、親事業者の指定する製品(自社製品を含む)・原材料等を強制的に下請事業者に購入させたり、サービス等を強制的に下請事業者に利用させて対価を支払わせてはいけない。
【目的】
正当な理由なく、親事業者が指定した物や役務を下請事業者に「強制して」購入・利用させて、親事業者が自社製品やサービスを下請事業者に押し付け販売することを防ぐため。
【購入・利用させる対象】
物に限らず、保険、リース、インターネット契約も対象となる。
当該製品は 自社製品に係らず、子会社や親事業者の取引先などの製品も含まれる。
【強制の考え方】
下請事業者が任意に購入等をする場合は問題にならないが、親事業者が任意だと思っていても、立場上、下請事業者がその依頼を拒否できない場合がありうるため、事実上、下請事業者に購入等を余儀なくさせているかどうかが判断基準となる。
【違反事例】
下請取引上で必要性のない理由で購入等を要請(あるいは要請と取られる行為)をすると、違反となる可能性が高い。
① 親事業者より、自社製品の販売先を紹介するよう下請事業者に要請し、ある下請事業者は販売先を紹介できずに自ら当該製品を購入した。
正当な理由が無いうえに、立場を利用した要請であり強制力が認められ違反。
② 親事業者が自社製品の売り上げを伸ばすために、下請事業者に当該製品の購入を要請し、購入させていた。
正当な理由が無いうえに、立場を利用した要請であり強制力が認められ違反。
簡単にまとめると
相手にメリットの無いことを強制しない。
自分のことばかり考えない。
8 報復措置の禁止(同法 第4条第1項第7号)
【概要】
親事業者は、下請事業者が親事業者の本法違反行為を公正取引委員会、または中小企業庁に知らせたことを理由として、その下請事業者に対して取引数量を減じたり、取引を停止したり、その他不利益な取り扱いをしてはいけない。
【目的】
下請事業者が親事業者の報復を恐れずに公正取引委員会や中小企業庁に対して、親事業者の本法違反行為を申告できるようにするため。
簡単にまとめると
自分が悪いことをしたのだから逆恨みをしてはいけない。
8 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(同法 第4条第2項第1号)
【概要】
親事業者は、下請事業者の給付に必要な製品・原材料等を有償で支給している場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由が無いにもかかわらず、この有償支給原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、当該原材料等の対価を下請事業者に支払わせたり下請代金から控除(相殺)したりすることにより、下請事業者の利益を不当に害してはいけない。
【もう少し噛み砕いで表現すると】
テキストの記載は非常に冗長で理解しにくいので噛み砕いて説明すると、 材料を有償支給して何かを作ってもらう取引ならば、それを使った注文品が納品されて下請代金を支払う前に、有償支給分の代金を払わせてはいけない、ということ。
【目的】
有償支給材の対価を早期決済することは、下請事業者が下請代金を受け取る前に出費を強要することになり、支払遅延と同様に資金繰りが苦しくなるので、これを防止するため。
【下請事業者の責めに帰すべき理由】
他と異なり、限定的な定義は無いが、次のような場合が考えられる。
- 下請事業者が支給された原材料等を毀損、損失したため、親事業者に納入すべき製品の製造が不可能になった場合。
- 支給された原材料等によって、不良品や注文外の物品を製造した場合。
- 支給された原材料等を他に転売した場合。
【控除の考え方】
控除とは、下請代金から支給原材料の対価の全部または一部を差し引く行為をいい、その結果、支払期日に下請代金を全く支払わないことも含む。
ちなみに、民法上の相殺が成立したかどうかとは関係が無いため、「相殺」という民法用語ではなく「控除」という一般的な用語が用いられている。
【違反事例】
① 下請事業者に有償支給した原材料を用いて加工品を製作する取引で、加工期間を考慮せずに当該物品が納品される前に当該原材料の対価を下請代金から控除した。
下請事業者の責めに帰すべき理由が無いため違反。
簡単にまとめると
頼んだことが完了していないのに、自分にとって都合の良い部分だけを勝手に進めない。
9 割引困難な手形の交付の禁止(同法 第4条第2項第2号)
【概要】
親事業者は、下請事業者に対して下請代金を手形で支払う場合、一般の金融機関で割り引く(現金化する)ことが困難な手形を交付してはいけない。
【目的】
下請代金を一般の金融機関において現金化することが困難な手形で支払われることによって、下請事業者の利益が不当に害されることを防止すため。
【一般の金融機関とは】
銀行、信用金庫、信用組合、商工組合中央金庫等の預貯金の受入と資金の融通を併せて業とする者をいい、貸金業者は含まれない。
【割引困難な手形とは】
一律に定義はされていないものの、一般的に、その業界の商慣行、親事業者と下請事業者との取引官憲、その時の金融情勢等を総合的に勘案して、ほぼ妥当と認められる手形期間(現在の運用ではs根に業は90日、その他の業種は120日)を超える手形と解される。
【違反事例】
①サイト(手形期間)が90日もしくは120日を超える手形を交付していた。
②あまり考えられないが、貸金業者でしか現金化できない手形を交付した。
簡単にまとめると
相手がなるべく現金化しやすいように手形を発行しなさい。
10 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(同法 第4条第2項第3号)
【概要】
親事業者は、下請事業者に対して、自己の為に金銭、役務その他の経済上の利益を提供させてはいけない。
【目的】
正当な理由が無いのに、下請事業者が親事業者の為に協賛金、従業員の派遣等の経済上の利益を提供させられることにより、下請事業者の利益が不当に害されることを防止するため。
【金銭、役務その他の経済上の利益とは】
協賛金、従業員の派遣等の名目の如何を問わず、下請代金の支払いとは独立して行われる金銭の提供、作業への労務の提供等を含む。
【下請事業者の利益を不当に害する】
下請事業者が、「経済上の利益」を提供することが、自社の販売促進につながるなど、提供しない場合に比べて直接の利益になると自ら判断した場合は「下請事業者の利益を不当に害する」とはならない。
しかし、「経済上の利益」を提供することが、下請事業者にとって直接の利益になることを親事業者が明確にしないで提供させる場合(虚偽の数字を提示する場合も含む)のは、「下請事業者の利益を不当に害する」ものとされる。
【違反事例】
① 親事業者が自社の催事に対する協賛金の提供を下請事業者に要請させ、提供させていた。
下請事業者の利益とならない資金提供のため違反。
② 運送業者に対して、委託した取引に含まれない貨物の積み下ろしを要請し、無償で役務提供をさせた。
下請事業者の利益とならない役務提供のため違反。
簡単にまとめると
ビジネスパートナーは奴隷ではない。
対価に見合う利益を提供しなさい。
11 不当な給付内容の変更および不当なやり直しの禁止(同法 第4条第2項第4号)
【概要】
親事業者は、下請事業者に責任が無いのに、発注の取消もしくは委託内容の変更を行い、または受領後にやり直しをさせて下請事業者の利益を害してはいけない。
【目的】
下請事業者に責任が無いのに、親事業者が下請事業者に対して、費用を負担せずに発注の取消や委託内容の変更を行い、またはやり直しをさせることは、下請事業者の当初の委託内容からすれば必要ない作業を行わせることとなり、それにより下請事業者の利益が損なわれるので、これを防止するため。
【給付内容の変更・やり直しの考え方】
「給付内容の変更」とは、給付の受領前に、3条書面に記載されている委託内容を変更し、当初の委託内容とは異なる作業を行わせる、または取り消しをすること。
「やり直し」とは、給付の受領後に、給付に関して追加的な作業を行わせること。
【不当な給付内容の変更・不当なやり直しに該当する場合】
次の場合には、親事業者が費用の全額を負担することなく、下請事業者の給付の内容が委託内容と異なること、または下請事業者の給付に瑕疵等があることを理由として、変更またはやり直しを要請することは認められない。
- ① 給付の受領前に、下請事業者から委託内容を明確にするよう求めがあったにもかかわらず、親事業者が正当な理由なく仕様を明確にせず、下請事業者に継続して作業を行わせ、その後、給付の内容が委託内容と異なるとする場合。
- 取引の過程において、委託内容について下請事業者が提案し確認を求めたところ、親事業者の了承が得られたので当該内容に基づき製造等を行ったにもかかわらず、給付の内容が委託内容と異なるとする場合。
- 恣意的に検査基準を厳しくし、委託内容と異なる、または瑕疵等があるとする場合。
- 通常の検査で瑕疵等のあること、または委託内容と異なることを直ちに発見できない下請事業者からの給付について、受領後一年を経過した場合。 ただし、親事業者が顧客(一般消費者に限らず)に対して、1年を超えた瑕疵担保期間を契約している場合に、親事業者と下請事業者がそれに応じた瑕疵担保期間をあらかじめ定めている場合は除かれる。
【下請事業者の責めに帰すべき理由】
親事業者が費用を全く負担することなく、下請事業者に対して「給付内容の変更」または「やり直し」をさせることが認められるのは次の場合に限られる。
- 下請事業者の要請により給付の内容を変更する場合。
- 給付を受領する前に下請事業者の給付の内容を確認したところ、3条書面に記載されている委託内容と異なること、または下請事業者に瑕疵等があることが合理的に判断され、給付の内容を変更させる場合。
- 給付の受領後、下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なること、または下請事業者に瑕疵等があるため、やり直しをさせる場合。
【情報成果物作成委託における「給付内容の変更」「やり直し」について】
情報成果物が委託内容を満たしているかは親事業者の価値判断等により評価される部分があり、事前に給付を充足させる条件を3条書面に明記することが不可能な場合がある。
このような場合、給付の前後に係らず、3条書面上は必ずしも明確ではないが給付の内容が委託の内容と異なる、または瑕疵があるとし、やり直しをさせたり追加の作業をさせることは、その経緯を踏まえて、費用について下請事業者と十分な協議をしたうえで合理的な負担割合を決定し、それを負担すれば本法違反とはならない。
【書面交付と取引記録の保存】
当初の委託内容と異なる作業の要請が、新たな製造委託等をしたと認められる場合は、3条書面を改めて交付する必要がある。
取引の過程で、3条書面に記載されている委託内容を変更、または明確化した場合は、親事業者は、これらの内容を記載した書面を下請事業者に交付し、本法第5条(書類の作成・保管の義務)に基づく書面として取り扱わなければならない。
【違反事例】
①エンドユーザーからの発注内容の変更を理由として、親事業者が下請事業者に対して発注内容を変更したが、変更に掛かる費用を全額負担しなかった。
下請事業者の責めによらない理由の為、発生費用は親事業者が全額負担しなければならないため違反。
簡単にまとめると
一度決まったことを勝手に取り消さない。追加で何かしてほしいなら代金を払いなさい。
まとめ
下請法というと親事業者にとっては取り締まられるだけの厄介な法律という認識があるかもしれませんが、元をたどれば立場の弱い下請事業者を保護=対等な取引を可能にすることを目的とした法律です。
つまり、普通の感覚で付き合っていれば、そう問題になることではないのです。
しかし、ビジネスにおいては営利団体たる企業は、利益を追求しなければいけません。
そうすると、法律を違反しようという意図がなくとも、知らないがために無意識に違反行為をしてしまう可能性があります。
下請法を違反すれば、行政処分などはもちろん、取引先との信頼関係も破綻する可能性があります。
信頼関係はお金では簡単には取り戻せません。
下請法について知識を深め、違反の内容な取引をするのは親だろうと下請だろうと関係なく、全ての事業者にとって有益です。
下請法を深く理解することで、下請事業者にとっては不当な不利益から守ってもらえますし、親事業者にとっては故意ではない無意識な法律違反を防ぐことができます。
下請法をメインで意識するのは購買や調達業務をしている方になるかと思いますが、
例えば営業や現地の作業者が口頭で仕事を依頼しても下請法違反は成立します。
取引にかかわるすべての人が、下請法についての知識を持つことが必要なのです。
そうでなければ、公正取引委員会や中小企業庁の人たちに取調べを受け、違反行為が認定されれば罰を受ける上に、取引先との信頼関係を失うことになるのです。
法律は、その人が知っているか知らないかを考慮してくれません。
該当の行動が違法か合法かのみを見ています。
知らなかったでは済まされない重大な事柄であることを深く認識しましょう。
Twitter:@tanshilog
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