スポンサーリンク

【下請法60日ルールをわかりやすく解説】 支払期日を定める義務を分かりやすく解説 【いつから?31日の月は?】

スポンサーリンク
下請法
スポンサーリンク

発注業務において切っても切り離せない法律である【下請法】


正式名称は下請代金支払遅延等防止法となり、取引において立場の低くなりやすい下請事業者を保護するための法律です。


管轄する組織公正取引委員会中小企業庁であり、毎年書面での検査を行っているほか、下請事業者からの申し入れに応じて、随時立ち入り検査を実施しています。


下請事業者を保護する、という目的の為、基本的には疑わしい点があれば親事業者が違反しているのではないかという前提で監査を行います。


そして毎年、知ってから知らずか、下請法違反をしていることを摘発され、罰金や改善指導、一般社会への公表と言う形で罰則を与えられる企業が多くあるのです。


本記事では、ありがたいことにツイッターを通してご質問頂きました、【60日ルール】について解説いたします。



Twitter:@tanshilog


関連記事


スポンサーリンク

支払期日を定める義務とは

【下請代金支払遅延等防止法第2条の2】に定められる親事業者の4つの義務の内の一つで、

親事業者は下請事業者との合意の下に、下請事業者からの給付の内容について検査するかどうかを問わず、

物品を受領した日(役務の提供をした日)から起算して

60日以内かつ出来る限り短い期間内で下請代金の支払期日を定める義務のことを言います。


簡単に言えば、注文したものを受け取ってから60日以内のなるべく早いタイミングで代金を支払いなさいよ、という義務です。

は商売上、特別なことでもなければ何の問題もないことではあるものの、この60日以内という考え方がやや難しいところがあります。


意図せぬ違反をしてしまわないように、ここでしっかりと理解していきましょう。



ちなみに、たとえ当事者間で合意していたとしても、支払期日を60日以降に定めた場合は、その取り決めを無効とし、受領日起算の60日経過した日の前日(つまり60日目)が支払期日となります。

なお、支払期日を定めなかった場合は、物品や役務を受領したその日が支払期日となります。


「60日」の考え方

基本的な考え方

注文した給付物を受領した日が起算日となります。

たとえば、2022/5/23に給付物を受領した場合は、60日目の2022/7/21までが支払期日になります。

受領日が含まれた計算となりますので、翌日を1日目として数えないように注意してください。


いつから60日以内?

「受領日から60日以内」と、文字にすると簡単そうに見えますが、そもそも受領日については誤解されやすいです。

大抵の場合、注文したものが正規のモノか、要求した仕様通りのモノかを検品し、合格して初めて納品完了とする会社様が多いかと思います。


しかし、下請法においては下請事業者が給付物を納入し、親事業者が受け取った時点で「受領した」と定義されます


検品後に検収処理を行うとしても、検収日が起算日となるわけではないことをご注意ください。


たとえ給付物に加工不良等があったとしても、納品された日が受領日としてカウントされます。


もちろん、不良品の返品や再製作依頼、キャンセルについては認められていますが、不良があると確定し返品等の処理をするまでは受領日(起算日)として有効となりますので、検品は速やかに行う必要があります。

あくまでも給付物を受け取ってから60日以内というのを念頭に置いてください。

なお、下請事業者の非によって不良品等が納品され、そのやり直しをさせた場合は、やり直し後の受領日が起算日となります。



起算日の誤認により起こりうる違反

上記のように、下請法における受領日と、親事業者が認識している受領日に乖離がある場合、以下のような違反が起こり得ます。

  1. 4/1に下請事業者より給付物(大量の加工品一式)を受領した。
  2. 給付物の検品に1ヶ月かかり、翌月の5/1に合格とし検収処理を行った。
  3. 5月に納品したものと判断し、契約書に基づいて、翌月(6月)末払いで支払処理を行った。
  4. 後日の監査の際に、納入日から60日を超えた(3か月後の)支払いとなったため違反となった。


これは極端な遅延ですが、構成要素としてはよくある違反事例です。

さらに、下請事業者がこの違法性を認識しておらず、公正取引委員会や中小企業庁へ告発しなかった場合でも、年次の監査の際に発見されれば違反として取り上げられます。

当事者間の合意や違法性の認識に限らず、一般的な犯罪と同様に、構成要件を満たしていれば違反(犯罪)行為として処罰されますので、非常に注意が必要です。


「60日ルール」例外的扱いのケース

【例外】情報成果物作成委託における受領日の考え方

情報成果物に関しては、外形的に完成度が判断できません。

そのため【親事業者の支配下に置かれた時点を必ずしも受領日とはしない】という特例が認められています。


通常は、親事業者が受け取った(支配下に置いた)時点で受領となります。

しかし、情報成果物に限っては、進捗確認や今後の作業指示の為に、一時的に親事業者が内容を確認するために支配下に置く必要があります。

そのため、以下の要素が満たされている場合においてのみ、親事業者の支配下にあっても受領日とはなりません。

  • 現状の成果物が要求仕様の水準に達しているかが明らかではない。
  • 当事者間で成果物が一定の水準に達していることを条件に受領とする旨を合意している。
  • 契約書(三条書面)に記載の納期より前の日程である。


【例外】役務提供委託における受領日の考え方

原則としては、役務が提供された日が受領日(起算日)となります。

しかし、作業の特性上、日付を跨ぐような役務の内容の場合は、当該役務が完了した日が起算日となります。

さらに例外的な状況として、一定期間の継続的な役務の提供があり、それが次の期間に連続して提供されるような内容の場合もあります。

たとえば、客先に常駐して清掃を請け負う清掃の役務提供が相当します。

この場合は、以下の条件を満たしている場合に限って、当該月の最終日に役務の提供がされた(起算日)として扱われます。

  • 当事者間で協議の上、月単位で設定される締切対象期間の末日までに提供した役務に対して支払われることがあらかじめ合意され、その旨が契約書(3条書面)に記載されている。
  • 当該期間の下請代金の額(算定方法でも可)が3条書面に明記されている。
  • 下請事業者が連続して提供する役務が同種のものである。


ちなみに、継続する期間が1ヶ月未満の場合は、当該月の最終提供日が起算日となります。



【例外】金融機関の休業日について

支払日が土曜日または日曜日に当たるなど、順延する期間が2日以内である場合に限って

当事者間で支払日を金融機関の翌営業日とすることをあらかじめ合意し書面化していれば、

60日(2ヶ月)を超えて支払われても問題ないと解釈されています。


なお、順延後の支払期日が受領の60日(2ヶ月)以内となる場合は、当事者間であらかじめその旨が合意・書面化されていれば、金融機関の休業日による順延期間が2日を超えても問題ありません。

つまり、60日を超え、さらに2日以上の順延となるような連休期間は、休業前に支払業務を行う必要があるということです。


【例外】月末締め翌月末払いについて

上述のように、60日以内の支払いというのは前提条件として立ちふさがっています。


しかし、実務上において、月末締め翌月末払いの支払制度を採用している会社が多いため、


運用上「60日以内」は「2ヶ月以内」として取り扱われています。


そのため、1ヶ月が31日ある月においても2ヶ月以内の支払いがされる限りは下請法違反とはなりません。

つまり、12月→1月のように、最長62日間となっても2ヶ月以内の支払いとなるため違反とはなりません。



まとめ

法律とは知っている者の味方であるとよく言われますが、下請法に関しては下請事業者の味方です。

裏を返せば、親事業者の味方になることはありません。


しかし、親事業者にとっては下請法を熟知していても得になることは一切ありませんが、意図せぬ違反を防ぐことができるという点では下請法を理解するのことは非常に重要です。


B to B の取引と言うのは、馴染みのない人にとっては思った以上に親事業者が有利です。

私は下請法で保護されていない(規制される側の)資本金区分の会社に勤めていますが、親会社と言うのは、まあ神様ですね。


納期を守らせるために言外に先行着手を強要し、その後の仕様変更に伴う変更で発生した損失に関しては、「伝票発行前のことだから知らない」の一点張りです。



もちろん、伝票受託前に動いた当社が悪いんですよ?

どんなに無茶な納期設定でも、先行して動かなければ間に合わせられない能力しかないウチが悪いのです。


さらに、さすがに発注後の減額はしないものの、いわゆる買い叩き行為もしますし、今後の取引継続をチラつかせて攻めてきます。

もちろん、それも悪いことではありません。

買い叩かれるのが気に入らないのであれば、当社は別のお客さんを取ればいいのです。

それが出来るのならばね。


その結果、親事業者が過去最高益を記録したところで「ありがとうね」の一言で済ませて金銭的な還元は一切せず、さらに実績以上の減額を求めてきます。


愚痴はさておき、当社のように下請法で規制されている規模の会社だと、同じノリで下請事業者と取引していると公正取引委員会にこっぴどく怒られます。


親会社とメインでやり取りしている営業さんは、特に下請法を考慮した行動がとりにくい傾向にあります。

お客さんが自分たちにするような接し方を下請事業者にしてしまうのです。


気持ちは分かりますが、調達的視点から見れば完全アウトです。


最初に書いた通り、下請法は下請事業者の味方です。

そして、企業倫理的にもそれを守るのが正しいのだと個人的にも思います。


そのためには正しい知識を持ち、日々の業務でもそれを常に念頭に置かなければなりません。


本記事が、皆さんの助けに少しでも慣れたのでしたら幸いです。


Twitter:@tanshilog


関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました