自衛隊がおよそ30年ぶりに主力小銃を更新しました。
2020年に正式採用されたその銃は20式5.56mm小銃と命名され、順次89式小銃との巻き替え更新が進んでいます。
現役の自衛官の大半が使ったことのない銃ですが、すでに欠点について気になる方も多いと思います。
どんな製品でも「これが欠点だ!」と発言できるのは使用者のみであり、我々のような門外漢がどうこう言うことではないと思います。
社会に出たことも無い中学生が日本社会の闇を切った気になっているのと同じ恥ずかしさがあります。
まあ国を守る基礎となる主力小銃の出来栄えが気になるのは分からなくもないですが。
とはいえ、それなりの発言力のある自衛官ではない方が20式の欠点はあーだこーだと発信していますので、「想定20式小銃の欠点」について考えてみます。
ただ先に言ってしまうと、欠点ではなく「言いがかり」だと感じます。
粗を探しているようにしか思えません。
「ぼくのかんがえたさいきょうのしょうじゅう」の妄想はお呼びではありません。
折り畳みストックではない
現在発表されている20式小銃は固定銃床式のみです。
それは欠点なのでしょうか。
全自衛官が折り曲げ銃床式の銃を携行する必要はありません。
部品点数が増えるためコストも上がりますし、可動部が増えることにより強度の低下を招きます。
空挺や車両搭乗員のようなスペースに制限のある隊員向けの特殊仕様と言ってもいいでしょう。
確かにコンパクトにできるのは悪くはありませんが、コストと強度の問題を抱えてまで歓迎されるほどのメリットではないと考えます。
槓桿(コッキングハンドル)が排莢に連動して動く
ベルギーのFN社製のSCARも同じ問題を抱えていました。
ボルトのハンドルが射撃時に激しく前後するため、手や物に当たって怪我や破損の可能性があります。
そのため現行のSCARはボルトの前後運動とハンドルが連動しないように改良されています。
この問題は確かに良い要素ではないものの、SCARとは事情が異なります。
SCARは20式よりも多く生産され、海外や民間市場にも販売先があるのですから改良によるコストをかけるメリットはあるでしょう。
反面、20式は販売先が極めて限定されており、販売可能な絶対数も限られています。
そもそも、ボルトが動くのであれば、それを前提にした扱い方をすればいいだけの話です。
排莢とボルトハンドルが連動する銃なんて別に珍しくもないのですから。
切替軸(セレクター)の回る角度が異なる
20式の切替軸は安全装置から単発にするのに45°回転させる必要があります。
しかし単発から連発までは約160°とより長い距離を回転させなければなりません。
確かに慣れていない人が使うと戸惑うかもしれません。
しかし使用者は小銃を商売道具にしている自衛官です。
特に小銃射撃に習熟すべき職種の隊員は毎日のように扱いの訓練をします。
銃を使うのに違和感がなくなってこそのプロです。
もしこの問題を欠点だと言い張る自衛官がいるなら、練習不足で慣れていないことの言い訳に等しいと思います。
64式のような奇抜な切替軸も自衛官は使いこなしていましたしね。
被筒(ハンドガード)が短い
最近の主流というかトレンドとして、銃身をほぼ覆いつくすような長いハンドガードがあります。
これは銃身の保護、構え方の柔軟性、アクセサリー類の取り付けやすさ等のメリットがあります。
20式は銃身長も短めですが、ハンドガードもより短いです。
確かに上述のメリットは得られにくいです。
しかし、20式の設計思想的には理に適っていると考えます。
20式は離島防衛任務に最適化が図られており、海水に浸かった際の排水性と防錆性を意識しています。
主力小銃は各国の軍の考え方が反映されており、例えば米軍に採用されているからと言って欠点がない銃というわけではないのです。
ハンドガードは短ければそれだけ早く水が抜けます。
また短い銃身は森林部での行動の妨げになりにくいというメリットもあります。
CQBに適しているのも言わずもがなですね。
それに、自衛隊の一般部隊がそんなにゴテゴテとアクセサリーを乗せるでしょうか。
そもそも20式のレールが短いって何を根拠に言っているのでしょうかね。
まさか相対的な観点だけでしょうか。
URGIとか長さを売りにしている製品と比べたら短いでしょうよ。
でも89式よりはずっと拡張性に優れていますよね。
まとめ
軍用の主力小銃というのは最上級品である必要はありません。
求められているのは「必要十分な性能」と「予算に合致する価格」であり、ワンオフの特注品レベルの一品は必要ないのです。
その「必要十分な性能」を備えた銃に不満があるのであれば、まずは知恵と工夫で乗り越えるべきです。
その点、20式小銃は離島防衛を主眼に置いており、排水性と防錆性に優れ、ある程度の拡張性を持ち、現代における軍用ライフルの諸要件を満たしています。
国産にこだわることも、技術継承や調達の安定性の面を考えれば決して悪いことばかりではありません。
欠点などは使っているうちに露見するもので、見えている地雷なんてめったにありません。
配備されたばかりの銃に欠点など、言いがかりも甚だしい。
つまり20式小銃の欠点を論じるべきなのは実際に使用している自衛官のみであり、よそから口出しすることではないのです。
そもそも論として、どんなに優れた製品が生まれても何かしらの改善点は存在するものです。
しかも「改善点」というのは厄介な概念でして、必要十分な性能やコストを持っているのに、個人的な好みが反映されていたり、思い込みによって「欠点」に変わってしまうことがあるのです。
上質を求めればきりがなく、その過程で発生するコストが「欠点を無くした製品のもたらすメリット」を上回ってしまえば意味はないのです。
どんな物事にも「良いところ」と「悪いところ」があり、それを天秤にかけて判断すべきと考えています。
悪いところだけ見ても際限のない欠点しか見えないし、良いところだけ見ると本当の欠点に気付けませんから。
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