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【増殖という悪夢】SCP-173のRevised Entryの解説・考察

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SCP
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Logo_SCP_Foundation.jpg
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SCP財団というネットミームを生み出した起源である


SCP-173:彫刻(オリジナル)


最初期に執筆された報告書なだけあり非常に簡素にまとまっています。


逆に言えば読者に想像の余地を多く残しているということで、複数の派生作品が作られました。


この記事では、派生作品の一つ


SCP-173Revised Entry


を解説します。


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概要

「Revised Entry」とは「改定された報告書」を意味し、文字通りSCP-173の報告書の改訂版を取り上げた作品です。


改定内容は「SCP-173が増殖を始めた」というインシデントに基づきます。


ある日、収容室を清掃する定期作業中に、SCP-173が二体に増殖し、作業に当たっていたDクラス職員が殺害される事件から物語は進みます。


解説

SCP-173のRevised Entryは主に報告書に対する付録の追記という形式を取ります。


詳細な日付は伏せられていますが、財団が有効な対策を立てられない速度で事態は進行していきます。


SCP-173 付録1

████年██月██日、SCP-173が二体に増殖、Dクラス二人が殺害される。複製の起こったプロセスは不明。二体のSCP-173はそれぞれSCP-173-1、SCP-173-2と命名され別々の隔離房に収容される。

引用元:SCP-173のRevised Entry

定期の清掃作業中に初めての増殖が発生。

監視役の二人のDクラスはそれぞれの個体を凝視しますが、瞬きのフォローができないため、死へのカウントダウンは着々と進んでいきます。


監視役のうち一人がくしゃみをしたことで目を閉じてしまい、当該Dクラスと清掃担当のDクラスが殺害されますが、その隙をついて一名のDクラスは脱出に成功します。


SCP-173 付録2

████年██月██日、再びSCP-173の複製事案が発生。SCP-173-1から-4は全て個別の隔離房で管理。オブジェクトクラスをKeterに格上げ。

引用元:SCP-173のRevised Entry

増殖は一定期間で起こるようで、2体になっていたSCP-173は4体に増えます。

増殖のメカニズムは不明で、止める手立てもないことから、収容不可を表す「Keter」にオブジェクトクラスが更新されました。


SCP-173 付録3

████年██月██日、封じ込め失敗事案が発生。SCP-173は単純な等比級数に従って増加し、少なくとも61体のSCP-173が所在不明になる。何故これほどの速度で複製が起こるのか、メカニズムは全くもって不明。

引用元:SCP-173のRevised Entry

等比級数的に増殖するということは、最初の増殖が2体だったことから公比が2ということでしょう。

つまり、1,2,4,8,16,32,64,128…と個体数が増えていくということです。


ビデオ記録参照の結果、SCP-173達はそれぞれ隔離房で管理されていたにもかかわらず、共同で脱走を企てていたことが判明する。財団が捕獲できたSCP-173の多くは、脱走計画において”しんがり”に配属された個体で、他のSCP-173を逃がすために財団のエージェントを足止めしていたものだった。このことからSCP-173にコピーの数に影響される一種の群知能が存在すると結論付けられた。これに伴い、SCP-173コピー群の封じ込めプロトコルを改定。

引用元:SCP-173のRevised Entry

既にかなりの数に増殖したSCP-173ですが、財団はまだそれぞれを隔離して収容できるだけの対応力を持っていました。


しかし、脱走に当たっては隔離されていたにもかかわらず全ての個体が同時に収容を突破、財団の再収用チームに対して足止めを行う「しんがり」の役を担う個体の出現により、61対ものSCP-173が野に放たれることになりました。


ここで分かるのは、増殖したSCP-173は意識を共有しており、「収容を突破する」という目的を達成するために、各個体が最適な働きを自発的に行う知能を持つということです。


もしかしたら蜂や蟻のような真社会性を持っているのかもしれません。

個としての意識はなく、種族として一つの集合意識を持つ生態の可能性があります。


ちなみに、仮に財団が収容しているSCP-173の増殖を止める手段を見つけたとしても、次の増殖で財団の制御下にないSCP-173は122体に増加します。その次は244体です。絶望的です。


特別収容プロトコル・改訂版その1:

全てのSCP-173コピー群は形状に合わせた金属製の容器に収容され、SCP-███を使って財団の廃棄された月面施設に移送される。すべての個体に追跡用の首輪を装着し、月から脱走しないよう監視すること。

引用元:SCP-173のRevised Entry

ここで財団はSCP-173の特別収容プロトコルを改定します。

財団が保有するSCPオブジェクトの力を使って、捕獲したSCP-173を月面に存在する財団施設に転送します。


言うまでもないことですが、月に送ったからと言って事態は解決しません。

せいぜい月面が増殖したSCP-173で埋め尽くされるのみです。

当面、地球上では被害は出ないかもしれませんが。


SCP-173 付録4

SCP-173は財団の管理下から脱走。北アメリカ地域でおよそ50万人の一般市民が過去48時間の間にSCP-173の犠牲になった。映像で確認できるSCP-173の個体数は今や10万体に達している。主要テレビ局は捕獲されたSCP-173の映像を放送し、当座の死を避ける対応策を紹介している。

引用元:SCP-173のRevised Entry

いよいよ財団の収容能力が限界を迎えました。

SCP-173の増殖は止まることはなく、収容を逃れた個体数は10万にも及びます。

次の増殖では20万です。


一般市民にも多くの被害が発生し、たった二日間で50万人がSCP-173により殺害されました。

ちなみに50万人と言えば、日本でもっとも人口の少ない鳥取県の人口と相当します。

48時間で鳥取県が消滅したのと同義です。


さらに次の増殖でSCP-173の数は倍になるので、単純計算で犠牲者の数もそれに比例することでしょう。


財団は情報の隠滅を断念し、メディアを通じてSCP-173の動きを止めるために有効な方法を展開しています。

SCP-173がどれほど増えようと、誰かに見られている以上は動けないという特性は変わりません。


生存者が立てこもって集団で目を凝らすことで、SCP-173の進行を一時的に止めることは可能です。

しかし、SCP-173の増殖は止まりません。


やがては増えた彫刻像が自身を押し出すことで、生存者の喉元に手をかけることができるでしょう。


担当はDr. Phillips Mathews クレフ ギアーズ コンドラキ現在 ブライト博士が脱走したSCP-173の封じ込めに当っている。

引用元:SCP-173のRevised Entry

SCPに多少詳しい人であれば、ここに名を連ねる博士たちの逸話も知っているはずです。

一癖も二癖もあり「おいおいこの博士がSCPオブジェクトだろ」と突っ込みたくなるような異常な能力を持った財団の猛者たちです。


それが悉く取り消し線をひかれ、現在の担当は悪名高いブライト博士になっています。

つまり、取り消し線を引かれた博士は死亡したということです。


SCP-173 付録5

SCP-173は過去24時間の間に、4つの財団施設をほぼ同時に包囲し、破壊した。全ての個体はオリジナルと同等の攻撃能力を持ち、数千体で押し寄せてコンクリートの防壁や鋼鉄製の扉を引き千切る。この脅威に対抗する手段は未だに模索中である。

引用元:SCP-173のRevised Entry

SCP-173は未知の方法で複数の財団施設の位置を探り当て、同時に攻撃することで財団に組織的な反撃を許すことなく破壊しました。


SCP-173は一個体でもSCP-682(不死身の爬虫類)に重傷を与えられるほどの破壊力を持ちますが、それが数千体も集まれば通常の防壁は意味を成さないでしょう。

まさしく数の暴力です。


ブライト博士の個人記録

日付: ████年██月██日

私は先週だけで三十七回も奴らに殺されたよ。どんな体に入っていてもどういうわけか奴らは私を嗅ぎつけてくるらしい。O5はこの事案をXKクラスとして対処するつもりらしいが、連中がやらなくてもロシアが同じようなことをするだろう。

引用元:SCP-173のRevised Entry

上述の通り、収容に当たった多くの博士は死亡しましたが、現在の担当者であるブライト博士も襲撃を退けられているわけではありません。


ご存じの方も多いでしょうが、ブライト博士はSCP-963(不死の首飾り)によって疑似的な不死身体質を獲得しています。

このオブジェクトの力によって、他者にブライト博士の意識と記憶を上書きすることができるのです。

つまり、生きた身体の供給元(残機)さえ確保できればブライト博士が死に絶えることはありません。


そんな博士は、一週間で37回もSCP-173に殺害されています。

財団施設を察知するのと同様に、不明な手段を用いて脅威となりうる人物を特定し優先して殺害しているようです。


O5はXKクラス世界終焉シナリオとして考えているようですが、このままではロシアによる大量破壊兵器の使用等で、人類の崩壊は始まるだろうと推測しています。


O5連中はこの施設からの立ち退きを要求している。つまり私達に死ねと言っているらしい。建前じゃ生き残った一般市民を避難させるためなんて言ってるが、どうせ自分たちの身が惜しいだけだろう。何せもう北アメリカには200人も生存者はいないんだからな。

引用元:SCP-173のRevised Entry

財団が活動を続けている以上、その施設がSCP-173の攻撃対象となることは状況的に明らかです。

SCP-173は大群であらゆる建造物を破壊できるといっても、財団施設は一般的な施設よりもセキュリティ能力が高いのは間違いないでしょう。

そのため、O5は一般の生存者を保護するためという建前で財団研究員を立ち退かせ、施設をSCP-173からの攻撃対象から外すことでO5の避難場所にしようとしているとブライト博士は邪推しています。


少なくともブライト博士の把握できる情報では、北アメリカの生存者は200人を切っているので、今更施設を開放したとしても避難者が来るとは思えません。


数少ない良いニュースは、あのクソッタレどもが150匹も集まってSCP-682をズタズタに引き裂いちまったことぐらいだ。せいせいするよ。

引用元:SCP-173のRevised Entry

SCP-682(不死身の爬虫類)の終了実験では、様々なSCPオブジェクトとのクロステストが行われました。


その中の一つに、「Revised Entry」前、つまり増殖しないSCP-173との実験記録が存在します。


SCP-682はSCP-173の特性を知っており、瞬きすることなく12時間も凝視したため、財団によって両目を狙撃されSCP-173の攻撃を誘発させました。


SCP-682が眼球を再生させるまでの僅かな隙に、SCP-173はSCP-682に複数の重傷を与えました。


結果的にSCP-682が透明の装甲組織に覆われた眼球を生成したことで実験は中止になったのですが、もしSCP-173の体格がより大きければ、SCP-682を終了できたのではと推測されていました。


それに一つの答えを提示したのがこの記述です。


圧倒的な数の暴力で、あらゆる攻撃に無類の耐性を見せたSCP-682をズタボロに引き裂いたというのです。


パッと見はSCP-682が殺されたように見えますが、明確に描写されていないため生死は不明です。


ちなみにSCP-096(シャイガイ)とのクロステストでは、SCP-682は体積の80%を喪失しましたが、その後見事に復活しています。


個人的にはこの時点ではSCP-682は死んでいないのではないかと思っています。

とはいえ、無数のSCP-173に包囲されており、復活と攻撃を交互に受け続けているのでしょうが。


特別収容プロトコル・改訂版その2:

南北アメリカ地域を新たにゾーンX1と指定し、あらゆる渡航を禁止。 ████年██月██日に行われた核攻撃の後、確認されるSCP-173の個体数は減少した。財団の全資源を周辺海域の監視にあて、ゾーンX1の封じ込めを完全なものにする。アメリカ海軍の協力を受け、休み無しの巡回パトロールとソナー調査を実施。脱走が確認されれば即座に捕獲し、SCP-███によって月面の収容施設に送られる。

引用元:SCP-173のRevised Entry

さらに特別収容プロトコルが改定されます。


財団はアメリカ大陸の奪還を断念し、核兵器による広範囲の破壊を行いました。


その結果、全滅とはいかないまでも、SCP-173の個体数の減少に成功しました。


この時点でアメリカ大陸全域をSCP-173の収容エリアに指定し、財団保有の部隊はもちろん、米海軍と共同してSCP-173が脱走しないように監視をしています。


脱走が確認されれば、捕獲の上で前述の月面基地への移送を実施するという方法で対処しています。


ここで分かるのは、SCP-173は少なくとも核兵器により破壊が可能ということです。


SCPオブジェクトの多くは破壊耐性を持ちますが、SCP-173がそうであるのかは分かりませんでした。


基本的には石像であるため人間が素手で破壊するのは不可能でしょう。


一定の攻撃力があればSCP-173を破壊することができるのは朗報ですが、そういった大量破壊兵器は生存者も巻き込んでしまいます。


SCP-173 付録6

SCP-173がイギリスのウェールズ地方████で確認され、核による殲滅が行われる。生存者なし。

引用元:SCP-173のRevised Entry

Revised Entryの最後の記載です。


とうとうアメリカの外にSCP-173が進出してしまいました。


財団及び米海軍が監視しているとはいえ、例えば海底を少数のSCP-173が歩行して移動したら流石に探知は不可能でしょう。


収容を突破した少数のSCP-173は、突破先で十分な数に増殖してから襲撃をすればいいのですから、なにも大規模な収容突破を目指す必要はないのです。


SCP-173の出現を確認した財団は、出現エリアを核攻撃し、住民もろともSCP-173を破壊しました。

ここでは「核による殲滅」と記載がありますので、文字通り(住民ごと)SCP-173を全滅させられたのでしょう。


住民の避難を優先して手をこまねいていれば、SCP-173のさらなる増殖を許し、結果としてイギリス全土、ひいては世界中がSCP-173によって破壊されることは明白です。


そのため、この核攻撃は苦渋の選択ではありますが、最善の手法であったと言えます。

ただし、これも対症療法に過ぎず、根本的な解決には至っていません。


この記載がRevised Entryの最後ですが、この先どうなるのかは分かりません。

このインシデントが最新の記録である可能性もありますが、その後改定する間もない勢いで人類はSCP-173によって滅ぼされた可能性もあります。


考察

以上が「SCP-173のRevised Entry」の内容解説です。

ここからは個人的な考察をしていきます。


この後人類は滅んだのか

「SCP-173のRevised Entry」での人類が再興するのは非常に困難だと考えられます。


第一に、敵対しているSCP-173の数が厄介です。

現時点で相当数の個体が存在し、それらが等比級数的に増殖します。


半面、人類は減り続け、文明の維持も困難です。

財団職員の多くが死亡し、SCP-173に対処できる人員は不足しています。


いくら「直視していれば動かない」と分かっていても、多くの生存者はSCP-173の破壊作戦があったとしても積極的に参加しないでしょう。


SCP-173は一体でも潜入できれば、そこから数を増やして破壊工作をすることができます。

地球上のインフラを破壊しつくすのはもちろん、ハイテク機器の根幹を担う人工衛星の破壊すら可能でしょう。


月面の財団施設に移送されたSCP-173は破壊されているわけではありません。

月面で収容を突破できれば、自由に動き回ることが可能です。

例えば地球の周りを周回している人工衛星に向かってジャンプすれば、自らを質量兵器として使うことができます。


どうやらSCP-173は個体としての自己保存の欲求は少ないようですし、目的のためならば捨て身の攻撃も可能でしょう。


もっと言えば、月面のSCP-173が集まれば、大気圏の突入に耐えられるだけの大きさと質量を獲得し、地表に対して直接落下して攻撃することも可能かもしれません。


「SCP-173のRevised Entry」のように事態が進行しきってしまった世界をそのまま維持するのは非常に困難だと考えます。


人類が滅亡するまでの時間的猶予が定められているため、SCP-173の再収容に有効打が打てないと思われます。


やり直しは可能か?

SCP世界における「やり直し」と言えばSCP-2000(機械仕掛けの神)が思い浮かぶでしょう。


地球が人類の生存に適した状態で残っている限りは、時間と労力、資材を徹底的に投入して人類の文明を作り直すという脳筋オブジェクトです。


私は「SCP-173のRevised Entry」で人類が滅んだとしてもSCP-2000で再建することが可能だと思っています。


まず、SCP-173は「増殖」しているのであって「発生」しているわけではありません。

極論を言えば、すべての個体を破壊することで無力化することが可能です。


そして、SCP-173個体は物理的な方法で破壊できます。


SCP-2000は無期限に100,000人/日のペースでヒトを生産できる設備を備えます。


生産されたヒトは記憶処理を応用した洗脳教育が可能なので、SCP-173排除に命を懸けられる戦闘要員の準備も可能です。


彼らを攻撃要員として投入することでSCP-173を制圧することが可能です。


生産したヒトは人権もクソもない運用も可能なためSCP-173の封じ込めも容易ですし、時間に追われているわけでもないので、人類側は十分な準備が可能です。


一度滅んでしまった以上、SCP-173の再収容に当たっては時間的な制限は一切ありません。


仮に生産したヒトが全滅しても、翌日には100,000人が新たに生まれます。


時間と労力、資源を無尽蔵に投入できる世界終焉後の人類はSCP-173に勝てると考えています。


人手が必要なら生産すればいい

兵器が必要なら生産すればいい。

時間が必要なら好きなだけ時間をかければいい


SCP-2000による世界の再興は、人類側にとって制限が極めて少ないというのが最大のアドバンテージです。


「SCP-173のRevised Entry」は所詮は凶暴な彫刻が増えるだけの現象

現実改変も行わなければ世界の自然法則を塗り替えるわけでもありません。


せいぜい人間が死ぬだけで地球にはほとんど影響はありません。

月にいるSCP-173も核兵器で殲滅が可能です。

月面が少々削れたとしても大した問題ではありません。もともとそうだったという歴史を作ればいいだけですから。


「SCP-173のRevised Entry」の世界はSCP-2000が最も得意とするタイプの世界終焉シナリオが起きていると言えます。

…まあ、SCP-2000が正常に機能していないという大問題が前提にありますけれども。


まとめ

SCP-173は現在のSCP財団というシェアワールドを生み出すきっかけになった偉大な存在です。


173の番号は特別な意味を持ち、日本をはじめとした各国では様々な傑作が生みだされています。


オリジナルのSCP-173は今なお深く愛されており、様々な記事に登場しますし、今回紹介した「SCP-173のRevised Entry」のように、SCP-173そのものを掘り下げた記事も多く存在します。


どこの誰が「いわゆるSCP-173」を最初に投稿したのか分かりませんが、その彼か彼女のおかげでここまで楽しめるコンテンツが生まれたのですから、感謝しかありませんね。


そして、自身の作品をSCP財団のコンテンツに使用を許諾(非営利に限る)していただいた加藤泉様にも最大限の感謝を示して、本記事を終えたいと思います。


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